第8話 †魔神の闇光†

——クイン・ステッレの古城——



「アンタも漸くおっぱい離れ出来て〜、お姉さん嬉しいぞっ⭐︎ 」

「あ、そう」

「…でもさ、ずっと吸われてびんかん♡になった乳首が寂しいな〜なんて⭐︎」

「あっそ」

「…もうちょっと男の甲斐性って奴を見せつけてもいいじゃ〜ん?」

「早く始めろ」


 6歳児に何を求めているのか…この常識の無い淫乱サキュバスを見ていると、心底普通から逸脱していなくて良かったと実感する。

 眼鏡に胸元の空いた白シャツ・黒のタイトスカートを履いたTHE女教師の格好をしたリリィは下品な笑みで続ける。


めて欲しいの〜?? じゃーあ〜、ヴァル君がじょーずにおねだり♡出来たら…してあげよっかな…♡」

「…」


俺は刀を抜いてリリィの喉元に構えた。


「先生、俺の堪忍袋が†限界超越エクスプロージョン†する前に、はやく」

「もー、つれないなー。じゃ、魔神パパの本棚から内緒で持ってきた魔導禁書グリモワールを開いて下さーい」


俺は明らかに人間の皮が使われてる分厚い古文書を開いた。急激に身体の力が抜けていく。


『魔力が残り70%になりました』


「…この本、開けただけで魔力をかなり吸われたが本当に大丈夫なんだろうな?」

「多分大丈夫じゃない〜? なんか使ったニンゲンは全員死んだらしいけどー、アンタはもうニンゲンやめてますって感じだし?」

「それは確かにそうだが…」

「じゃあ、7ページ目の『魔力は星々の軌跡と重なっている』のところを〜、ヴァル君。読んでみて」


2人しかいない金書庫に俺の声が静かに響く。


「『其々エーテル…魔力は対応する天体と連動しており、天体自体の大きさ・遠さ・混沌さなどによって行使する際の…』」


——アサエモンから剣術を指南されていない時間…というよりおっさんが呑んで寝こけている時分は、こうしてリリィから魔法に関する座学や実践を学んでいる。

 時折は母上自らが俺の剣術の指南をして下さるのだが、普通に死にそうなので最近はやんわり断っている。世界最強の吸血鬼の名は伊達ではないと痛感したし、母上の剣を知って以降はおっさんとの稽古にも身が入る様になった。

 …いつか母上を楽しませられるように早く剣の腕も磨いておかなくてはな…。


「『…畢竟、魔法はその時その場所によって大小作用が前後する事が常であり、最善手を選び抜く事が最も肝要である』…なるほど、占星術に近しい要素があるのか」

「ZZZ…」

「…やれやれ」


俺が僅か1分程度音読している間に、リリィは寝息を立てて隣で突っ伏していた。母上の髪に負けず劣らずの白いコートを脱いでアホ淫魔に羽織らせておく。


「さて、おっさんが起きてくるまでは†自習†と洒落込もうか」


その後は魔道禁書に魔力を吸われながら魔法に関する知識を増やしていった。

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