第7話 †愚者の輪舞†
——クイン・ステッレの古城——
「小僧、剣を握った事は?」
「京都で授かった†
毎朝5時に起きて†
「アサエモンよ…我が剣舞に刮目せよ!」
「こ、これは…」
「たぁああああ! ふッッッ…! せやあああ!!」
—回る様にただ剣に振り回されているシュヴァルツ少年の技は、一歩も動いていないアサエモンにさえ当たる事は無かった—
「す、すげぇや…」
「フフフ…分かったか? 寸止めしておいて良かったよ…お前に怪我を負わせれば母上が悲しまれる…†」
背後のアサエモンの声音は震え、狼狽えているのが容易に理解出来た。やはり、妖刀などと綽名されている者だけあって見る目は確かな様だ。
「こんなに剣に向かねえ奴は…俺はぁ、50年程と大将に比べりゃスズメの涙程しちゃ生きてねぇが…初めてみたよ、小僧」
「ッッッッッ!?」
「…やめとくか?」
膝に大地が引き寄せられ、俺は四つん這いのポーズを取らざるを得なかった。アサエモンの本気で心配している言葉が、重力が重過ぎるのだ。
「…フフフ」
「…あんだって?」
「ハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」
「どうした急に!?」
「そうか…そういう事か!」
俺はこの世界に生まれ堕ち、持ちうる力…それだけを失ったと思っていた。しかし、力だけではない様だ、失ったのは。
「智慧以外の全てを失おうとも…ククク、ハッハッハッハっ…フゥゥウ↑ッッハァッハッハッハ!!!」
—勿論、彼には智慧すらもなかったが—
「怖いねぇ、最近の子供って…」
「さあ、アサエモン! 俺に貴様の全てを授ける事をと・く・べ・つ・に!! この神と吸血鬼の子、シュヴァルツ・フェイトグランデ=ステッレが許す!」
俺は即座に剣を天へと掲げた。《
「失ったのなら再び手にする…それだけの事!」
「フッ、生意気でテンションの狂った小僧だ。気に入ったぜ」
そう口角を上げたアサエモンは何故か剣を石造の床に音もなく突き立てて此方に来た。母上が創っただけある、流石の斬れ味だ。
「まず剣…というより刀は左手を下に右手を上に握るんだ、こう」
「ん、なるほど…」
「んで、小指と薬指で握るって奴を意識しておけ」
「…慣れんな、まだ」
「へっ、握ってなきゃ寝れねぇまで馴染ませてやるよ」
剣舞の全てをも失った俺は、存外教え方の上手いサムライのおっさんに1から剣のイロハを教わり始めた。
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