第6話 †妖刀との邂逅†

——クイン・ステッレの古城——



地獄の城内ランニングを始めてから早3年。

俺は六対の翼を…いや、何でもない。

6歳になり、小さすぎた肉体の違和感も段々と薄らいで来ている。


「アンタも随分とデカくなったわね〜」

「何、世界が縮んだだけの事だ」

「陛下みたいなスケールの発言…とことん親子ね〜♪ それとさ」

「ん?」


俺を引き剥がしてリリィは真顔で続ける。


「いい加減おっぱい離れしよ?」

「……」

「聞いてるー??」


リリィから魔力補給するとすこぶる魂の波長が良いからな…おっと、君たちには魂の波長は聞こえないのだったな…くくく、†すまない†

 と朝飯・・を済ませていると母上が存在しないドアを蹴破って部屋に訪れた。


「朝餉の最中悪いがついて来い」

「母上! おはよう」

「おはよう、ヴァル。では行くぞ」

「サキュバスのおっぱいを朝ごはんだと思ってるの、世界でアンタだけよ?」

「ンフフ、それ程でもある!」

「褒めてない」


俺はサイヤ人の王子よろしくなポーズをリリィに送り、足早に移動する母上を追う。

 影の中を移動する母上に当初は戸惑ったが、今ではすっかり慣れて追いつける様になった。かつて俺が飛び降りたビル程度の高さの城壁に繰り出し、右往左往しながら穴だらけの城の外と中を縫って母上より先にプロムナードについた。もっとも、デカ過ぎて広めのダンスホール程度の代物だが…ククク、このシュヴァルツ・フェイトグランデ=ステッレに相応しき舞台だ!


「…迷子かー、小僧?」

「何だ貴様は!? 魔邪冥府ハーデスの斥候か?」


ボロい甚兵衛と汚れた陣羽織を纏った髭面のサムライ…か? 明らかに怪しい男がプロムナードの真ん中でデカい瓢箪で酒か何かを煽っている。


「はーで…あんだって?」

「白々しい! しかし、この祝福の子シュヴァルツ・フェイトグランデ=ステッレには貴様の真なる姿が見えるぞ! 《真実を穿つ瞳ジャッジメント》!」


俺の†真紅の魔眼†が輝き、サムライのあらゆる情報が流れ込んでくる。


「アサエモン・ヒョウドウ…52歳…ニンゲン……職業不定! やはり魔邪冥府の手の者か!!」

「違うぞ、ヴァル。これは余の昔の知り合いじゃ」

「ご無沙汰でー、大将! 相変わらず締まったイイ身体してんね〜」

「こ、こんな何の役にも立たなそうなセクハラ酔っ払い親父が母上の!?」

「あぁ、ある一点・・だけの」


そう告げると、母上の影からいかにも名刀といった風情の日本刀が生えて来た。


「『妖刀のアサエモン』…それが此奴の綽名じゃ」

「あぁ、小僧に刀の稽古つけてやりゃいいんすね〜…刀なんて何十年振りだっけ…」


本当に大丈夫なのか…このおっさん?


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