第2話 †濡れ羽鴉の報せ†
——霧深き森・木の根の窪み——
「お…え…ああぁ〜」
寒い、腹が減った、眠い。段々と俺の天に与えられたIQ70億の知能が低下していくのが分かる。何とか助けを呼ぼうと声を振り絞っているのだが…
「と…う…あぅあ〜」
情けないベビーボイスが垂れ流されるだけである。叫んで助けを呼ぶ考えは余り利口とは言えないらしい。が、母親に捨てられてから4時間弱…我が新たな肉体の体力はそろそろ活動限界を迎える。
(こんな時、†
『《濡れ羽鴉の報せ》を取得しました』
『魔力が枯渇しました』
脳裏に2つのアナウンスが流れる。此方の状況も知らずに呑気なもの…なんだと?
(†濡れ羽鴉の報せ†を取得した!? 元からこのフェイトグランデに備わっている筈だぞ? まさか…!)
—ビルから飛び降りて死んだ通り、彼にそんな能力は備わってはいなかった—
(新たな肉体となった事で、全ての能力を喪失したのか…! フハハハ、良かろう!!)
失ったとはいえ、魔力とやらを消費すれば我が力の数々は再び戻るようだ。魔力を消費すると、途轍もない疲労感と虚脱感が全身を襲うところだけが解せないが…兎に角! これで窮地は脱した!!
「あぅ…だだ〜(来れ…我が眷属達よ!)」
丸々とした手を空へ掲げると、眷属…である筈のカラスが1匹だけ俺の身体の上へと降りて来た。あれ、1匹だけ? と思ったが足の感触が3本ある…八咫烏か!! これはでかした。
「変なところで呼ばれた気がして何事かと思って来てみれば…なんだ、ヒトの幼体か」
「あうあ〜! (眷属よ、我を助けよ!!)」
「んん〜? お前、喋れる年頃でもないのに自我がはっきりしてる上に僕が3本足のカラスと分かっていて命令しているな? まったく、畏れ知らずな奴だ」
呼び出しておいて何だが、カラスって鳥はこんな流暢に言語を操れた覚えはない。一体何者だ…?
(まさか、
「全く以て意味が分からない事を考えているようだな。やはり面白い…素直に恩を売っておいてやろう」
そう告げると神官の化身たるカラスは森の奥へと飛び立っていってしまった。 …え? 重たい瞼を持ち上げて、ボヤけた暗い視界の中に黒い鳥がいないか確かめる。やはりいない。
(恩を売るとは一体ッッッ!!)
—1時間後—
腹が鳴る、小さな身体が凍えて震える、今宵の夜風はべらぼうに冷たい。
(眠い…寝ては…ねむ……ん?)
カラスの鳴き声と共に2本の足…が見える。裸足だ、俺と同い年くらい…いや赤子だったな今は……
「——只の捨て子ではないか」
その少女の目は、夜闇で赫く輝いた。
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