転生して最強の吸血鬼に育てられた俺、†シュヴァルツ・フェイトグランデ†は片翼の天使と最強のエクソシストになりました。

溶くアメンドウ

序章

第1話 †親ガチャ大失敗†

俺は死んだ…

45階建ての高層ビルの屋上から飛んでな?


 いや何、本来は我が†黄昏を翔ける銀翼エンジェル・スフィア†を以て華麗に地上へと舞い降りる未来だったのだが…轢かれたカエルの様にペチャンコになった、何故だ??


 あぁ、俺か? 俺は神の子(モジャモジャの3日後に復活する方ではない)…シュヴァルツ・フェイトグランデ— 通り名は佐藤悠太、中学2年生という設定だった—いずれ世界の遍くを祝福で包む†一輪の天使†だ。


 しかし死して魔邪冥府ハーデスへと堕ちていないのは不可思議だ。悪鬼羅刹の跋扈する永遠の地獄で、俺という存在が尊すぎた罪を贖うものだと思っていたのだが。


(暖かく、そして暗い…妙に落ち着く場所だ…†新たなる棺メメント・モリ†と言ったところかな、フッ…)


と微睡んでいると突然途轍もない圧力によって、俺は†新たなる棺†から追放されてしまった。寒く、空気も渇いている。魂の苦悶を叫ばずにはいられない!



——霧深き森——



「おぎゃあぁ! おぎゃあぁ」


 何故だか俺の喉からは赤子の様な慟哭だけが響いて止まない。この年になって無様極まりないが、何故かこれしか声が出ないのだ。と、不意に首元を柔らかく温かい両手が包んだ。ただ小刻みに震えているだけでそれ以上何かしようというつもりはないらしい。この俺の存在に平伏したのk…


「うぅ…私の赤ちゃん…あはぁあぁ…っ…殺すなんて…出来ない…」


日本語でない言語の様だが、内容は理解できる。†万世に響く鎮魂歌ジ・アムネシア†による加護が故だろう。


『《万世に響く鎮魂歌》を取得しました』

(コイツ、直接脳内に…!)


と謎のアナウンスが脳裏で残響するも、俺に手を掛けている女のものではない。というよりも、『私の赤ちゃん』『殺すなんて』の2単語だけが連綿と反芻される。つまるところアレだ、母親が産まれたばかりの赤子を手に掛けようという場面らしい。


(で、その赤子というのが俺ってわけ)


……なんじゃこりゃあ!? な、何故神の子にして破滅の龍の加護を授かったこの俺が頭髪の薄い弱々しい生命に!? 


「…この森の奥にはね、かの有名な吸血鬼『クイン・ステッレ』の根城があって夜な夜な人間の血を吸って殺してしまうんですって…でも、吸血鬼に殺された人間は永遠に吸血鬼の中で生きられるんだって…」


俺を大事そうに抱きかかえた女は暫く歩いた後、木の根の窪みらしい場所に俺を隠した。


「ごめんね…」

(え…)


女はポツリと呟いて、足早に何処かへと向かっていってしまった。俺を置き去りにして…

もしかしなくてもこれは—


(——親ガチャ大失敗、という奴だ)




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