第2話
「死にたい」
一人でじっとしていると、昔あった嫌な事ばかりを思い出し、将来の事を考えて不安が大きくなる。
「死にたい」
そう思う度にカッターナイフで腕や胸に赤い線を引く。そうすると、ほんの少しだけ、少しの間だけ、心が痛くなくなったような気がした。
「死にたい」
そう何度も口にしている癖に、死なない。身体の傷が増えていくだけ。みんなが言う通り、ただ構って欲しいだけなのかもしれない。
「死にたい」
自分と歳の近い人がテレビに出たり賞を獲ったりしているのを見かけるようになった。きっと彼らは才能があって、たくさんの努力を重ねたのだろう。自分が情けなくなった。
「死にたい」
夢というのは生きる希望になるらしい。私にはそんな物は無い。やりたい事なんて無い。できる事も無い。生きる気力も、死ぬ勇気も無い。
「死にたい」
怒られるのが怖い。人と接するのが怖い。怒られてまで働きたくない。そうまでして欲しい物もやりたい事も無い。そんな事では生きていけない事は分かっている。死んだ方が増し。でも死ぬのは怖い。生きているのが辛い。死にたくない。生きていたくもない。
「死にたい」
病気や事故などで亡くなった人を見て、羨ましく思う。ここに誰よりも死んだ方が良い人間がいるのに。
「死にたい」
きっかけが欲しかった。臆病者である私の背中を押してくれる何かが欲しかった。
「死にたい」
社会のゴミのような存在になって暫く経った頃、夜中に唸っていると、兄に煩いと怒鳴られた。
何かが無くなったような気がした。
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