第六十三話 目の前は

 穏やかで、のんびりとした獣人王国の日々は平和で私はどこかで油断していたと思う。

 気がついた私は、過去に彼らの本能を見誤ったことを、ふと思い出す。


 幼い子供たちですら、獣人は普人よりも本能に忠実で理性を発情期と呼ばれる理性を崩壊させる現象を持っている。


 そう、私は長く獣人王国にいたことで、忘れてしまっていた。


「うんん」


 荒い息遣い。


 空気は湿度が多く蒸している。


 女性特有の匂いと、獣のような野生味溢れる匂いが混じり合い部屋中に充満している。


「まっ、マクシム様、どっどうかお許しください」


 いつも理性的で、理知的な対応をとってくれるアミさん。

 だが、今は服を脱ぎ捨て、背中から尻尾にかけて綺麗にはえる体毛が見えている。


 他にも大勢の獣人たちが、男性たちに群がり私は状況を理解させられる。


 これはミーニャたちと経験したから、すぐに理解できた。


「発情期というわけですね」

「ごっ、ご存知でしたか?」

「まぁ、一応」

「それではお許しいただけますか?」


 引き締まっている腰に小ぶりな胸元を惜しげもなく披露する。

 

「申し訳ないが、それは断る」

「えっ?!」

「フロスティー!」


 蛹になって私の髪の中に入っている小さな魔導具を呼びました。

 大量の糸を吐き出したフロスティーは私を繭の中へと包み込んでくれました。


「あっああああ!!!!!」


 糸を剥がそうとしているアミさんの声が聞こえてきますが、フロスティーの繭は分厚く濃くなっていき私の姿を見えなくしてしまいます。


 そして、私はその場を離れるように繭ごとゴロゴロと動き出しました。

 私を逃さないように獣人女性たちが、繭にのしかかってくる。

 だが、ここは容赦するわけには行かないので、雷を発して触れた者を吹き飛ばした。


「なっ!」


 アミさんや他の獣人たちが驚いた声を出す。

 どうやら私に抵抗する力があるとは思っていなかったようです。


 獣人たちは理性を失って男性を蹂躙している。

 女性の怖さが窺い知れて、獣人族の男性が減少する理由がわかるような気がする。


「フロスティー。今の獣人たちは繁殖期に入って発情状態に入ってしまった。この国にいる危険性を思えば、私が望む結末を迎えることはできないだろう」


 私は大勢の獣人に蹂躙される男性たちを全て助けることはできないと判断して、雷を発生させながら外へと飛び出した。


 アルファやリシと合流できれば、いいがどこに逃げれば助かるのかわからない。


「追いかけろ!」


 アミさんの声が聞こえてきたが、私はとまることなくフロスティーが作ってくれた繭を転がすように走って速度を上げていく。


「あっ、あの!」


 そんな私が走る進行方向にシールの姿が見える。


「シール?」

「こちらへ!」


 私はシールが用意してくれた穴へと飛び込んだ。

 そこは滑り台のように下まで一気に降っていく通路になっていた。 

 繭の中に入っていたので、速度が上がって誰も追いつけないようになった。

 私の後を大きな葉っぱに乗ったシールが追いかけてきた。


 通路を降り切ると、アルファとリシ、ミーニャたち五人が待っていた。


「救出が遅くなってしまい申し訳ありません。準備に手間取っておりました」


 アルファは顔を青くして心から謝罪を口にしてくれた。

 他の者たちも頭を下げて、悲しそうな顔をする。


「大丈夫だ。私は何もされていない。トラウマになるようなことはない。ただ、このままでは獣人王国の発情期に巻き込まれてしまう。どうするのだ?」

「あっ、あの! 私の国へ向かいませんか?」

「シールの国? 精霊の国ってことかい?」

「あっ、精霊というよりもエルフしかおりませんが」


 今はガリアさんに会うことも叶わないだろう。

 あったとしても現状を全て止められるとも思わない。

 

「わかった。案内をお願いできるか?」

「はい!」

「みんなもそれでいいな?」

「致し方ありません。現状の獣人王国は危険です」

「申し訳ありません。私の叔母が」

「ミーニャたちは大丈夫なのか?」

「私たちは、昔の過ちを反省して、アルファ様やベラ様に厳しく躾をしていただきました」


 ミーニャの言葉にウルルとポリンがブルブルと震えている。


 色々とあるんだろうな。


「とっ、とにかくシール。よろしく頼む」


 外に出ると夜に変わっていた。


 魔物たちが活性化して、聖なる樹に襲撃をかけてくるので、足止めになってくれるだろう。


 私たちはシールに連れられて獣人王国を出て、精霊の国を目指すことになった。元々獣人王国との交流がある精霊の国はより深い森の中へと入っていく。


 暗い森の中は、獣人の三人組とシールがいなければ、全く先が見えない。

 私は念の為に繭の中に包まれたまま森を進み。

 繭に魔物が触れれば、感知ができて防御と攻撃のバランスがとりやすい。


 フロスティーの新しい力に守られてたどり着いた場所は、国というよりも森の中にできた村だった。


「ここが?」

「はい。ようこそおいでくださいました。エルフの村。エルドラへ」


 そう言ってシールが声を発すると松明の光が私たちを包み込んで、四方八方から弓を向けられる。


「何者だ!」


 どうやら突然の来訪だったことで、エルフたちを驚かせてしまったようだ。


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あとがき


どうも作者のイコです。


ちょっと考えていることがあります。


現在、R15歳で投稿している今作品ですが、

R18に書き換えて、小説家になろう。

ノクターンノベルズに出そうかと検討しております。

《第1回 ダッシュエックス文庫 オトナの小説大賞》というコンテストです。


そのため書き換えなども考えて、毎日投稿から、週2投稿へ減らそうと思っております。


読者の皆様には楽しんでもらえているので、極力は投稿したいのですが。

R18バージョンで、この話を書いてみたいという自分なりの新しい挑戦をしようかと思っています。


もしも、R18で見てみたいという方がいれば、ノクターンに登録して応援などしてくれると嬉しいです。

書き換えて、投稿ができましたら、ご報告をさせていただきます。


今後もよろしくお願いします。

いつも読んでいただきありがとうございます(๑>◡<๑)

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