サイド ー 王国 1

《sideアロマ》


 マクシムがいなくなった、王国の学園はどこか寂しさと物悲しさを感じさせる。私の全てはマクシムのため。マクシムがいるから幸せだった。


「おい、アロマ。聞いているのか?」

「何?」

「お前はなぁ〜」


 頭を抱えるイザベラ様。


 私はマクシムがいなくなったから、イザベラ様の近衛騎士隊長の座に戻った。


「お前はそれでいい。護衛としての任務はサラサよりも、安定して行ってくれるからな」


 イザベラ様は深々と溜息を吐いて、諦めるような言葉を発する。

 今は、会議中でイザベラ様を筆頭にした第一王位継承権の重鎮たちが集まっている。


「ナタリー、近況の説明を頼む」

「はっ! まずは、第二王女様に賛同しているのは、小貴族ばかりです。最大の派閥は伯爵家のものですが、それもナルシス・アクラツ様への反発と考えられます」

「どうして奴への反発なんだ?」

「それが、ナルシス様へ最初に婚姻を申し込んだ三人娘を抱える伯爵家の方なのですが、ナルシス様は思わせぶりな態度を取りながらも、数年後に断っております。その後は多くの貴族たちから我が家にと申し出を受けていたようですが、花婿候補になることを表明してナルシス様を想っていた女性が多くいるようです。その女性たちが、今回の第二王女様を神輿に反発しているようです」


 頭を抱えるイザベラ様。

 ナルシス……、イザベラ様の花婿候補。

 マクシムには劣るけど、色々と話題が絶えない。


 マクシムがいなくなってからは、また好き勝手するようになった。

 従者の二人を連れて、学園内を歩き回っている。

 一年生の時のように女性へ声をかけることはなく。

 ただ、学園の中を歩き回っているだけではあるが、十分に女子たちへのアピールは強くなっている。


 一番目立っていたマクシムがいなくなり、一年生で偉そうにしていたダイ伯爵家も最近は大人しくしている。


 ナルシスの見た目は他の男子よりもいいから、話をしなくても十分に目立っている。それに一年の時に誰からかまわず女子に話すわけじゃないから余裕が見えるようになってきた。


「頭が痛い話だ。このようなタイミングで」

「はい。我々は学園にいる間は外部の者たちとは連絡が、どうしても遅れてしまいます。あと一年半は学園から動けません」

「うむ」

「今更ではありますが、ナルシス様ではなく、マクシム様に花婿を指名されては?」


 サラサの言葉に私は反応してしまう。

 イザベラ様にマクシムを取られると、私はお嫁さんになれない。


「それは無理だろうな。すでにマクシム側から私の元を離れて、私は単なる傍観者だ。ナルシスを手放すことも考えても良いが、代わりになる花婿がおらぬ。女王になる条件の一つは、最高の花婿を得ていることも含まれている。私は男にそれほどこだわりはないが、他国に見られた時にみっともない見た目ではな」

「その他国のなのですが、帝国に動きがあるようです。魔人教国、精霊小国家群、竜人王国にそれぞれ不穏な動きありと連絡が来ていたようです」

「ああ、その話は聞いた。各国がどうして、このようなタイミングで動き出しのたか知らんが、これからは隣国である獣人王国、及び帝国との結びつきは強くして行かなければならないだろうな」


 頭を抱えるイザベラ様に、私は疑問に思った。


 第二王女様、それに各国は何を目的に動かしたのだろう? 


 今世界で一番枯渇しているものとは何なのか?


「ふぅ、とうとう世界が動き出したというわけだな」

「はい。王国は現在1/100ですが、他の国はより男性が枯渇を始めました」

「獣人王国では1/500だった。魔人教国は百名を切ったそうだ。竜人に至っては、三名とも言われている」


 男性が減っているからこそ、交渉する行為が起きているということ? 


「今後は多くの国が王国に訪れるだろう。準備が必要だというのに内戦などと何を考えているのか?」

「今だからでしょうね」


 最後の席に座っていた女性が言葉を発する。


「サラ・イージス先輩。何か?」

「私はずっとマクシム君を観察していて、確信したんだけどね。彼は男性を産むためのカギになるんじゃないかって思っているんだ」

「男性を産むカギ?」

「ああ、彼の子はまだ誕生していないが、実はもうすぐ一人目の子が生まれようとしている。ブラックウッド領のグレース嬢に妊娠が発覚したらしくてね。もしも、男の子が生まれた場合。私の仮説は証明される。マクシム君の子種は男性を産むための可能性が強い。これは私が長年図書館で研究してきた答えだ」


 マクシムの子供? 羨ましい。

 私も赤ちゃん欲しい。

 マクシムに似た男の子が生まれたら嬉しい。


「今は、獣人王国で女王とだったな。もしかしたら、他国もそれに気づいて?」

「その可能性はあると思います。予言や占いができるものが入れば、多少は未来を予測できるから」

「なるほどな」


 イザベラ様は、深々と椅子へ座り直して窓の外へと視界を向けた。


「動乱が起きるのかもしれないな。マクシムを求めて」


 マクシムが遠い人になる?

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