第五十七話
反抗的な瞳を向けてくるダビデ・ダイに私は深々と息を吐く。
「どうやら状況を理解していないようだ。私はお願いしているのではない。命令しているんだ」
「はぁ?! そんな理不尽なことが許されると思っているのかよ!」
「別に許されようなどとは思っていないさ。ただ、私が見ていて目障りだと感じたから、私の好きなように君たちを作り変える。もちろん、好きに反抗していただいて構わない」
「はっ! 舐めるなよ! 俺様は特別な人間なんだ!」
三人は反抗する意志を見せて、それぞれの魔法を発動させて、体の強化も行なっていく。鍛錬はあまりしていないようだが、まぁ使えているだけでも十分に優秀だと言える。
「どこからでもかかって来るといい」
ミーニャたち三人は後へ下がるように指示を出して、私は全身に雷を纏って対峙する。ナルシスとどれくらい差があるのか楽しみだ。
「死ねや!」
「ブヒッ!」
「ウホッ!」
三人が正面と左右から仕掛けてくるが、私はあまりに遅いために一撃ずつ殴り飛ばしていく。
「ハァ〜その程度なのか?」
「舐めるなよ! 建物の中だから、加減をしてやっただけだ。俺様の炎で建物ごとお前を焼いてやるよ!」
全身に炎を纏ったダビデだが、建物を焼くほどの火力があるようには見えない。
「今度こそ死ねっ!」
「語彙力すら乏しいな」
私は雷で炎を包み込んで、圧縮させて消滅させる。
「はっ?!」
「もう力はわかった。お前たちがどれだけ足掻こうと意味はないようだ」
闘技場で争う必要もない。
私は、ダビデの前に素早く移動して、蹴り飛ばす。
顎が砕ける音が響いた。
「がはっ!」
「獣人や女性は奴隷ではない。貴様らのオモチャでもない。むしろ、お前たちこそが女性にとっての愛玩動物にされているんだ。それに気づけ。礼節と知力ある行動を取れる男になって欲しいと私は思っているんだ。ただ、女性に優しくしろと言っているのではない。バカな愛玩動物として生きるのではなく。しっかりと自分で考え、相手を尊重してカッコ良い男として、女性に惚れられる男になれ」
意味がわからないと言った顔をするダビデの顎を回復で治してやる。
「なっ! なんなんだお前は?!」
「私か? 私はマクシム・ブラックウッドだ。女性について勉強しており、男性としての価値が子供を産む以外に示すために行動しているんだ」
「そんな面倒なことをして何になる?!」
「別に、何にもならない。だが、バカな男を見ると虫唾が走るだけだ。貴様は、女性たちの思惑通りにブクブクと太って、差し出された餌に飛びつくただの獣だ」
「なんだと! 誰が獣だ!」
「そうやって考えなしに言葉を発している時点で獣だって、言っているんだ。だから教えてやる。お前たちが誰に従わなければいけないのか」
私はダビデの腕をへし折った。
「ぎゃあああああ!!!!」
「さて、シカとウマだった。貴様らはどうだ?」
青い顔をしてこちらを見る太ったデブ二人。
「おっ、おでは」
「ダビデ様に言われた通りにやっただけ」
「そうやって、自分たちで考えないのが罪だと知れ」
私は二人に雷を落として、全身を痺れさせる。
「あばばばっバババッバ」
「ぎゃああああああ」
倒れる二人を尻目に、ダビデの腕を回復する。
「おい、いつまで騒いでいる? もう治っているぞ」
「ハァハァハァハァ、なっ、なんなんだ。もう、痛いのは嫌だ。わっ、わかった。お前の言う通りにする!」
「全く理解していないようだな。そんな上部だけの言葉などなんの意味もない」
「やめ! ぎゃああああ!!!」
私は今度は足を踏みつけた。
綺麗に折れる音が聞こえて、私は視線を二人に戻して回復させる。
「もっもう嫌だ。すっ、すいません。許してください」
「痛いの嫌。ダビデじゃない。マクシム様に従います」
「ふむ。ならば、貴様らに問おう。女性とはなんだ?」
「えっえっえっ? ご飯をくれる人」
「あのあの、いい匂いがする」
「ハァ、お前たちは体だけでなく頭も動物なんだな。やり直しだ」
三度目になるダビデに視線を向ける。
「ぐっうううう」
「もう治した。お前に問おう。女性とはなんだ? よく考えろよ」
「……たっ、対等な人間です。今まで調子に乗っていました」
「うむ。少しは頭を働かせることができるようになったようだ。ならば、次の問いだ。貴様は今後、女性に対してどのような態度を取る?」
「……えっ、偉そうな態度を控えて、ちゃんと話をします」
「ほう、それは今後一生続けられそうか?」
「えっ? 一生?」
私は屈んで足の痛みを抑えるダビデの視線に合わせる。
どのように見えていることだろうか? 恐怖の対象だろうか?
「お前の所業は、私だけでなく多くの女性が見ている。お前がダラければ、お前を甘やかす者も出てくることだろう。それに甘えて醜く愛玩動物に堕ちれば、お前に次はない」
「ひっ!」
「常に考えよ。男は愛玩動物ではない。王国がそのようにしていようと、そんな風になるようなら、お前の価値はないと思え」
私は指を弾いて、雷がダビデの意識を飛ばす。
「最後に私は正義ではない。悪だ。努々覚えておけよ」
まだ、思考できない二人へ視線を向ける。
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