第五十二話 女王陛下からの相談

《sideミーニャ》


 私はやっとマクシム様の下へ馳せ参じることができました。

 マクシム様が学園に入学されてからの一年間は地獄のような日々でした。

 我々をマクシム様の護衛として認めてもらうために、ブラックウッド家の人々に強さを認めてもらい。勉強をして、精神を鍛え、とうとう護衛としての許可が降りたのです。


「いいですか、ミーニャ、ウルル、ポリン」

「「「はっ」」」


 お館様であるブラックウッド様は私たち三人に思いを伝えてくださいました。


「マクシムは無防備な子です。多くの女性たちに好かれながらも、それを自覚することなく優しさをふりまいてしまう子です」


 お館様の言葉に、私たちは大きく頷いた。

 私たちのような孤児に対しても、お優しくしてくださいました。


「ですから、あなたたちの手で悪い虫がつかないようにしっかりと監視してあげてくださいね」

「「「はっ!!!」」」


 三人はお館様の言葉に頷きました。


 そして、今目の前に私は考えなければいけない相手と対面しております。


「みっ、ミーニャ! 私はどうすればいいのにゃ!」

「ガリア様、落ち着いてください!」

「落ち着いていられないにゃ! マクシム様に好きじゃないって言ってしまったにゃ!」


 私の祖国である獣人王国からやってこられた女王陛下だそうです。

 幼い頃にお母さんを亡くしたので、私としては祖国のイメージはないのですが、頼ってこられた獣人王国の方を無碍にすることもできなくて話を聞いております。


 ガリア様は、マクシム様に一目惚れしたそうなのですが、今まで男性と接する機会が少なくどう接していいのかわからないそうです。


「王族なのに、男性と接する機会が少ないのですか?」

「獣人は、強い者が女王になるのにゃ! 強いことを証明するために、経験を積むことからはじめるのにゃ!」

「そうなんですね。それで男性と接することがなくて?」

「そうなのにゃ! だからどうすればいいのかわからないのにゃ!」


 男性に免疫がない女王様に私はどうやってアドバイスをすれば良いのか悩んでしまいます。

 私も昔は自分が抑えられなくて、とんでもないことをマクシム様にしてしまいました。マクシム様はとてもお優しいので、受け入れてくださると思うのですが、ガリア様自身の気持ちが追いついていないようです。


「ガリア様は、どうしたのですか?」

「そっ、それはツガイになりたいにゃ」

「ツガイ! それは……、マクシム様を獣人王国に連れていくってことですか?」

「そうなってほしいにゃ」

「それはダメです!」

「なっ! なんなのにゃ!」


 私は立ち上がって否定しました。

 女王様が驚いて毛を逆立てました。


「マクシム様は王国の宝です! 獣人王国になんてあげられません!」

「なっ、なんでミーニャにそんなことを言われないといけないにゃ!」

「わっ! 私はマクシム様を愛しているからです! 可愛がっていただいたこともあります!」

「なっ!」

「それに、マクシム様にはたくさんの奥様がおられるのです。ガリア様だけを特別扱いはできません」


 私は言ってやりました。


「ミーニャ!」


 言った後に、私は相手が女王陛下であることを思い出しました。


「あっ!」

「……」


 私の前でガリア様が睨みつけて立ち上がられました。


「お姉様と呼ばせてください!」

「えっ?」


 いきなり頭を下げられました。


「マクシム様に可愛がられるとか羨ましすぐるのにゃ! 私も甘えたいにゃ! ゴロゴロ撫でられたいのにゃ! ミーニャはズルいのにゃ!」


 今度はお腹をむけてジタバタとワガママをいう子供のようになりました。


「えっと、つまりは独り占めしたいわけではなく。マクシム様に可愛がられたいということでいいんですか?」

「そうにゃ! 普通にマクシム様とお話をして可愛がってほしいにゃ!」


 私は深々とため息を吐きました。


「わかりました。それではガリア様の特訓をしましょう。まずは男性に慣れていただき、最終的にマクシム様に愛していただきます。もちろん、独り占めや獣人王国へ連れて帰るなどという戯言は無しですよ!」

「わかったのにゃ! ミーニャお姉様に任せるにゃ!」

「その、ミーニャお姉様はやめてください。年齢はガリア様の方が上です。それに女王陛下で立場も上の方に言われるのはなんだか嫌です」

「わっ、わかったにゃ!」

 

 仕方なく、私はマクシム様にガリア様に愛していただくお手伝いをすることになりました。


 ウルルとポリンにも手伝ってもらいましょう。


 マクシム様に振り向いてもらう。

 獣人乙女団結成です。


「まずは、マクシム様の前に出てても緊張しないようにしましょう。これは特別に私たちが専用で使っている物ですが差し上げます」

「なんなのにゃ?」


 私は昨日仕入れたばかりのシャツを渡しました。


「マクシム様脱ぎたてシャツです」

「なっ!」

「ちゃんとメイドのアルファ様に許可をいただいたものです! 盗んだわけではありませんからね!」

「クンクンクン!!!」

「あ〜もう聞いていませんね。気持ちはわかりますけどね」


 マクシム様の匂いは獣人にとってマタタビと変わりませんからね。

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