第五十話 肉食系の女子たち

《sideアルファ》


 とうとうマクシム様は悲願を達成されました。

 過去の記憶? マクシム様が私とリシにだけ話してくださった秘密であり、トラウマを乗り越えられたのです。


 これでもう、マクシム様の憂いもなくなることでしょう。


 そんなことよりも私にとっての問題は、マクシム様が最近の暑さによって開放的になられておられることでしょう。

 マクシム様は普段から無防備なところをたびたび見受けられるのです。


 この間など、教室で他の雌どもが見ているというのに、暑いということでローブを脱がれて薄着になられるのですよ。

 もう、私とリシで必死に壁になって隠そうとしましたが、マクシム様は気にも止めていないご様子で自らの素肌を晒してしまうのです。


 男性の制服がどうして聖人のようなローブなのか、マクシム様はわかっておられません。あれは素肌を晒さないように、多くの女性達の情欲を押さえ込むための服なのです。

 

 それなのにワイルドにローブを脱ぎ捨て、透けているワイシャツだけになってしまうなど言語道断です。

 両サイドから壁を作り、アロマ様が後方から壁になっていいただき、三人体制でお守りしました。


 正面のマスターダリルからはマクシム様のお姿はハッキリと見えていることでしょうがさすがは年長者です。こちらを見ないようにしてくださいました。


 淑女の鏡ですね。


 ですが、あの無遠慮な王女は、甚だいかんともしがたいです。


 マクシム様に選ばれなかったというのに、チラチラとマクシム様のお姿を盗み見ようとするのですから。

 あなたは選ばれなかった人間なのですよ! ムッツリスケベめが!


 花婿であるその貧弱で、気持ち悪い生き物でも眺めていればいいのです。


「マクシム様、本日はどのようなご予定ですか?」

「ああ、魔物の森に行ってオーガ娘の生態調査をしようとおもうんだ」

「かしこまりました。それでは魔物の森まで護衛いたします」

「いや、今回は私一人で行こうと思う。そうした方がオーガ娘も出てきてくれるとおもうのだ」

「かしこまりました」


 ふう、年頃になられたからでしょうか?

 マクシム様はなんでも一人でしたがる傾向にあります。

 私たち授業を受けている間に空き時間で図書室に行って、イージスなる先輩に求婚されたそうです。

 空き時間にお会いしに行ったら、小柄で暴力的な胸部を持った女性が、ほわほわとした雰囲気でマクシム様を籠絡したのです。


 私は一瞬殺意を覚えましたが………。


「やぁ、君はマクシム君の最愛の人だね」


 とても良い方でした。

 それからは仲良くなって、一緒にマクシム様をお支えする同士として仲間になりました。


 魔物の森には、リシとアロマ様が気配を消してマクシム様の護衛をしております。

 

 マクシム様は一人になると、どこからともなく女性を連れて来たり、求婚をされて来られます。

 私としては、女性達の見定めと管理こそが私の役目だと思い始めております。


 サファイア様、ベラ様がいない以上。

 私が最もマクシム様との付き合いが古く、マクシム様にとって心許せる存在であらねばならぬのです。


「えっ! モンスター娘」


 マクシム様は魔物の森から、オーガ娘を連れて帰ってきました。

 どうやら決闘をして負けたそうです。


「我はアルジ様の物じゃ。だが、貴様らに負けたわけではない」


 これは同じ女として序列を付けねばいけないようですね。


「良いでしょう。マクシム様、女性同士で話せなければいけないことがあるようです」

「ああ、学園にも慣れてもらわねばならぬ。色々と教えてやってくれ」

「かしこまりました。あなたお名前は?」

「アカネだ!」

「アカネさん。私はアルファと申します。ついてきてください」

「はっ! お前に従う道理はない」

「アカネ、アルファは色々と教えてくれるからついていってきなさい」

「アルジ様が言うなら」


 私はモンスター娘と共に闘技場に向かいました。

 途中でアロマ様にマクシム様も護衛を頼み、リシも呼びます。


「それでは、まずは序列を決めることから始めましょう。あなたは亜人としてお力を大切にされているのですよね?」

「そうだ! オーガは弱い者には従わぬ!」

「よろしい! シンプルでいいですね。それではどこからでもかかってきなさい。あなたが勝てば、今後あなたに命令はしません。ですが、私が勝てば従っていただきます」

「面白い」


 私はアカネさんに人間の強さと序列の大切さをお話し(身体に)わかっていただきました。

 これでも、幼少の頃からマクシム様をベラさんと二人で守ってきたのです。


 オーガ如きに負ける私ではありません。

 リシも辛うじて勝つことができました。


「あっ、姉御! これからよろしくお願いします」


 地面に膝をついて怯えるような視線で私を見上げるアカネさんは最初よりも随分と可愛くなられました。

 グラマラスな体型は私にはないものなので羨ましいです。


 イージス先輩もアカネさんも胸部に狂気を持っておられるので、マクシム様はそのような女性が好みなのでしょうか?


 サファイア様ほどではないが、私もそれほど大きくありません。

 育乳を始めてみましょうか?


「アカネが随分と大人しくなった。さすがはアルファだな。ありがとう」


 そういって抱擁とキスをしてくださるマクシム様は、女性の心を弄ぶ悪い男です。

 

 ですが、悪いマクシム様が私は大好きです。

 一生お仕えしたいです。

 

 これからもあなたのために、私は最強であり続けます。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

あとがき


どうも作者のイコです。


この話で、一応二章が終わりです。

次ぎは三章で少しだけ学園の時を進めて、学園でのイベントをしていきたいと思います。

どうぞこれからもよろしくお願いします。

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