第四十五話 魔法実技研修 終
プリン君に肩を借りて救護テントを出ると、巨大な二頭の魔物が並べられていた。一体は地龍と呼ばれるアースドラゴン。もう一体は空龍と呼ばれるワイバーン。
大きさはどちらも同じであり、この森の主的なアースドラゴンと、森に獲物を探しにきたワイバーンといったところだ。
どちらも狩りの獲物としては、申し分なく価値が高い。
「大きさは私が上だな。アロマ」
「捕まえるのが難しいのは私の方」
どうやらアルファとリシは、アロマと協力したようだ。
三対三のチーム戦で、森に現れるボス級を並べた二チーム。
判定はマスターグリルに委ねられた。
「それぞれ送る相手を宣言してください」
「我は、我の花婿であるナルシスに送ろう!」
ナルシスが誇らしげにイザベラ様に近づいて礼をする。
「ありがとうございます。イザベラ様」
周りの者たちも拍手を送って祝福を伝えた。
「私は、マクシムに送る」
私はプリン君と共にアロマたちの前に来て、一礼をした。
「ありがとう。アロマ、すごく立派なワイバーンだな」
「頑張った!」
アルファやリシもボロボロになっている。
本当に頑張って戦闘をしてくれたのだろう。
それだけで、十分な成果だ。
「それでは結果をお伝えします。今年の魔法実技研修に本来一位などを決める決まりはありません。ですが、生徒たちがそれを望んおり、今年一番を決めて欲しいというのであれば、仕方ありませんね」
マスターダリルは、集まった生徒たちを見渡して、私に視線を止めた。
「えっ?」
「今年の優勝者は、マクシム・ブラックウッド君です!」
「「「「「「「えっえええええええええええ!!!!!!!!」」」」」」」
生徒たちからも疑問と驚きの声が上がる。
「マスターグリル、説明を求める。マクシムが優勝とはどういうことだ?」
「アロガントさん。簡単なことです。あなた方は三人で協力してアースドラゴンを倒しました。同じくアロマさんも、アルファさん、リシさんと協力してワイバーンを三人で倒しました。これらは三等分の手柄として考えます」
「まぁそうだな」
「それに対して、マクシム君は、魔物の森で上位に入るビッグベアーをたった一人で倒したのです」
「なっ!」
マスターダリルの説明に、私がプリン君に肩を借りて傷だらけで立っている姿に今頃気づいたようだ。
王女様は驚いた顔を見せ、アロマたちも私が満身創痍な姿に驚く。魔力が枯渇して、回復魔法もかけられないのでみっともない姿を晒してしまった。
「マクシム、凄い」
「マクシム様! そんな危険なことを!」
「私がいない間に!」
アロマ、アルファ、リシが駆け寄ってきて、私を心配したり、怒ったりと騒がしくなる。
「一人分の成果として、今年の優勝者はマクシム・ブラックウッド君に盛大な拍手を!」
一年次魔法実技研修を受けた者たち拍手を送られる。
ただ、一人。
ナルシス・アクラツだけどは、私を見て感情のない顔を向けている。
悔しそうな顔や、怒った顔をするかと思ったが、その顔は感情が読み取れなかった。
「さて、皆さん。魔物との戦いは危険なことばかりです。ですが、魔物が世界中に蔓延っている以上は、我々は戦いを止めることはできません。女性は、美しく、賢く、強くあらねばならないのです」
「「「はい!!!」」」
マスターダリルの言葉に返事をした生徒たち。
「それでは以上で解散とします。今年は怪我人も少なく皆さんの優秀さが見れて私は嬉しく思います。これから多く励んで、より高みを目指してください」
解散を告げられて、私はアロマに王子様抱っこをされた。
「アロマ?」
「歩けないなら、私が抱き上げて連れて帰る」
「重いだろ?」
「大丈夫。それぐらいは鍛えてある」
気恥ずかしくはあるが、今回の優勝者として健闘を讃えられた。
ふと、イザベラ様を見ればこちらを見ていたような気がしたが、その視線はナルシスへ向けられていた。どうやら気のせいだったようだ。
「プリン坊ちゃま、我々も帰りましょう」
「うむ。そうだな」
いつの間にか戻ってきていたのか、白衣さんはワイルドウルフという中級の魔物を一人で狩ってきたのをプリン君に送っていた。
私がいなければ、白衣さんが優勝していたかもしれないな。悪いことをしたかもしれない。
「マクシム様、あまり危険なことをしてはいけません」
「そうです。我々が離れている間になんて持っての他です」
アロマを挟むようにアルファとリシに怒られる。
二人から、アロマに抱っこを交代するように要求がなされていたが、アロマはガンとして私を渡す気がないようだ。
私は安定して抱かれながら揺れていることに心地よさを感じ、魔法実技研修が終わったことで完全に緊張の糸が切れてしまったようだ。
そのまま意識を失って眠ってしまった。
次に目が覚めた時には夜になっていて、自分の部屋で眠っていた。
ふと、窓の外を眺めて魔物の森に視線を向けると、大きな木の天辺に月の光に照らされた人影が見えたような気がした。
「あの、オーガ少女は森に住んでいるのかな?」
言葉を話せた彼女は、もしかしたら亜人の一種なのかもしれない。
私は亜人についても勉強不足なところがあるので、亜人について勉強が必要だと思うようになった。
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