第四十一話 魔法実技研修 1

 学園に通う者のほとんどが受けている魔法の授業。

 マスターグリルの授業は人気で、一年生の入学時には大きなイベントも開かれる。


「学園に入った者たちは、すでに魔法の基礎知識を学んできた者たちだと認識しております。入学時の試験で通ったと言うことがそれを証明しておりますので。ただ、学園と言う場所は優劣をつけなければいけません。そのための試験です。皆様には多くの結果を残して頂きたいと思います」


 マスターグリルが大きな講堂で、魔法実技実習を発表する。

 魔法実技実習は、学園が王国に協力してもらって、魔物が出現する森を狩場として生徒たちに魔物狩りをさせるのだ。


 魔物は、倒して魔石を取り出すことで倒したとカウントされる。

 魔石は、王国の魔導具を使うためのエネルギーとして使われている。

 また、強力な魔物の皮や爪などは武器や防具として加工ができるため、採取すれば得点を稼ぐことができる。 


 数名のチームを組んで魔物の討伐に向かうのだ。


 女性ばかりの世の中では、女性が強くならなくては生きてはいけない。

 騎士として肉体を鍛えるのか、それとも魔法を学び能力を上げるのか、それは個人の自由である。


 だが、弱い女性を好む男性はいないと言われ。それは女性の庇護の下に男性が守られるからだ。


 学園に通う女性たちは、男性から選ばれるために、美しく、賢く、強くなろうと努力する。


「皆さんも知っていると思いますが、強さもまた美しさの一つです。弱い女性に男性を守ることはできません。そこで己のレベルを研鑽によって上げて頂き、強い女性になって頂きます。魔法とはイメージ。そして、経験です」


 マスターダリルの言葉に女性たちは意気込んだ顔で楽しそうに笑っている。


 前回の私はイザベラ様の横にいて、アロマやサラサの働きもあり、トップの獲物を献上していただいた。

 しかし、今世ではナルシスが花婿なので、ナルシスが一番の獲物を献上してもらえるだろう。


 魔法実技試験には一つのジンクスがあり。


 試験内容は魔物の討伐になり、最も強力な魔物を討伐した者が男性に送れば、送った女性は元気な子だからに恵まれると言う。

 男性は特定の女性と結ばれて過ごすことは稀なので、元気な子供を授かれると言う伝承として伝えられている。


「マクシム」

「どうしたら、アロマ?」

「絶対に私が一番になる」

「えっ? アロマはイザベラ様に協力しなくちゃダメだろ?」

「ううん。今年はしない。私はマクシムに捧げたい」

「捧げたいって! そんなことしていいのか?」


 近衛騎士として、アロマは同じ学園ではトップの身体能力を持つはずだ。

 イザベラ様の戦力が落ちることになるのではないか?


「いい! イザベラ様には許可を取ってある」

「そっ、そうか。だけど無理はするなよ」

「大丈夫。私は一位になる!」


 意気込みが伝わってくる。

 

「マクシム様! 私も負けません」

「リシ?」


 意外にも普段は控え目なリシもやる気に満ちている。


「あっ、ああ。リシも無理をするなよ」

「マクシム様、大丈夫です。私もリシに協力してアロマ様には負けません」

「アルファ?」


 アルファとリシがアロマに向かってガンを飛ばしている。

 アロマは余裕な顔をしているが、どうしてライバル視しているのわからない。

 皆が無事であればいいが。


「イザベラ様! どうかボクに凄い獲物を送ってくださいね!」

「もちろんだ。お前は王国の父になるのだからな。サラサ、協力を頼むぞ」

「はっ!」

「私も協力するわ。私はあげる相手もいないから」


 王女様たちもこういうイベントは楽しそうだな。

 一年生だけで競われる狩りのイベントだが、魔物は危険な生き物なので全員が無事に帰ってきてくれることを祈らずにいられない。


「個人で挑んでも、チームを組んでも構いません。ですが、決して死ぬことは許しません。マスターたちが見守ってはいますが、無理をしないように!」

「「「はい!!!」」」


 授業の最後に告げられた魔法実技試験の実施は、一週間後に行われる。


 一週間の間に鍛錬するもよし、魔物の情報を知るために勉強するもよし。

 武器や魔法を新たに新調したり、習得するのもありなのだ。


 女性たちに取っては、自分をアピールするための場であり、人気のある男性は色々な大変な時期になる。


 かつての私は花婿としてイザベラ様やアロマたちから受け取るだけだったが、ナルシスなどは多くの女性たちから獲物を贈られていたと思う。


 それでも一番の獲物をイザベラ様たちが捕らえてきたので私が一番になることができた。ただ、ジンクスを覆すように私は一人も子供を作ることなく処刑されてしまったので伝統を壊してしまった。


 できれば、今回は伝統が叶うようにしたい。

 

「それでは皆さん一週間後に魔物の森でお会いしましょう」


 マスターグリルが一瞬だけ私を見てウィンクして行った。

 どういう意味があったのだろうか?


 ただ、マスターグリルの授業はわかりやすくて一番前の席に座っているので、たまたま目が合っただけなのだろうか?


「マクシム。私は剣を新調してくるからここで」

「あっ、ああ」

「マクシム様。私も行ってまいります」


 リシとアロマが競うように外へと飛び出していく。

 私はアルファと共にプリン君たちを帰ることにした。

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