side ー 聖男 7
《sideナルシス・アクラツ》
目障りだ。目障りだ。目障りだ。
マクシム・ブラックウッド。
あいつがいるから僕の存在がかき消される。
あいつはなんなんだ? どうして僕の邪魔ばかりしてくる? クソ真面目で堅物なだけの奴なら簡単に騙せるのに、あいつは堅物だが、女を優先的に考えてくるので、女どももあいつの肩を持つ。
あ〜うざい。
どうしてやろうか? あいつが悔しがることはなんだ? 僕とあいつは魔法の授業を受けている。男は魔法や剣術など女に劣っていると思われているが、そうじゃない。魔法を使って体を強化すれば、女にも負けない。
それに、僕は前世の記憶を持っているから、魔法の原理を理解している。
マクシムよりも、一歩も、二歩も進んでいるんだ。
それに貞操逆転世界の女どもは、常に男に飢えているはずなのに、僕に対してだけは花婿だから手を出せないと言ってくる。
クソが。
マクシムを排除して、僕だけになれば、女どもも僕に縋り付いてくるはずだ。
他に目ぼしい見た目をした男はいない。
学園内で男を探しても、三十名にも満たないのだ。
その中で見た目は僕が一番いい。
それは間違いない。
次に、マクシムだが、こいつは背が高くて筋肉質なところが顔以外で僕と肩を並べている。
騎士の家系であるブラックウッド家の出身だからか、子供の頃から鍛えられて脳筋になっていることだろう。
確かに女のことを一番に考えて人気があることはわかるが、それだけで世の中が上手くいくほど楽な人生なんてないってことを教えてやるよ。
「ナルシス。どうか? したのか?」
「いえ、イザベラ様。私は色々と勘違いをしていたようです。本当に申し訳ありませんでした」
手始めに僕は王女様との修復改善を図った。
今までの僕は、花婿候補になればモテると思っていたので、それがダメだったことは二週間で学ぶことができた。
なら、確実に王女とその周りだけでも落としていく。
王女を観察してわかった。
この女は典型的な王女様タイプで、プライドが高くて、かまってちゃんだ。
自分を一番に考えていないと興味をなくして、次の相手を探し始める。
しかも自分を優先的にしてくれるだけではダメで、自尊心を満たしてくれるタイプじゃなければならない。
「何を勘違いしていたというのだ?」
例えばマクシムみたいになんでもできてしまう男は、王女の自尊心を満たすことはできない。なぜなら、マクシムのような男は王女を必要としないからだ。
マクシムは自立心が強くて、必要とされたいかまってちゃん王女は一緒にいても放っておかれることだろう。
「私は、王女様なしでは生きていけません」
「ほう」
「王女様に相応しい男になろうと、必死に駆けずり回っておりました。ですが、王女様以上の方はおらず。王女様と共に学び、教えを乞う事こそが最短の道だと理解しました」
「つまり、今までの行動は私のためだったと?」
「はい。自分なりに多くの経験を積んだ方が、王女様をより幸せにできると考えていたのです。どうやら僕の立場や人柄では難しいようです。憧れのマクシム・ブラックウッド様のように、多くの女性を侍らせた方が王女様に相応しくなれると思ったのですが、私では誰からも相手にされませんでした」
相手にされていないわけじゃない。
だが、ここではマクシムの印象を落とすことと、自分には王女だけだということを印象付けたい。
「マクシムが憧れか……、あのような者を真似る必要はない」
僕は知っている。王女がマクシムを視線で追いかけていることを。
「そうですね。僕ではマクシム様になれないこと理解しました。これからは心を入れ替え花婿候補として、王女様に様々な手解きを頂きたいと思います」
憔悴した様子を演出して、僕にはあなただけだと印象付ける。
アーデルハイドにも認めてもらった僕の演技は王女のような小娘を騙すぐらい簡単なことだ。
「ふん、花婿候補なのだ。私も指導することは当然だ」
「ありがとうございます」
とりあえずは、王女の花婿として誠実であることを見せることを始める。
まだ、学園は始まって二週間だ。
ガツガツしていてもいいことなど何もないことは理解した。
それに宰相候補のナタリーは、才女で頭はいいが男好きなムッツリすけべタイプ。気にしないようにしながらも、僕の体に何度も視線を向けてきていた。見られていることに気づいていないとでも思ったのだろうか?
護衛のサラサは寡黙で何を考えているのかわからないが、たまに見せる可愛い物が好きなことはわかった。
王女の周りには、他の女たちよりもレベルが高い女が多く集まってくる。
ならば、その女たちを僕の虜にしていけばいい。
相手の好みを見定めて、相手の弱点をついていく。
こんな近くにいれば、女性の好みを理解することは難しいことじゃない。
まずは、この三人を落とす。
だが、マクシムを排除するためには、この女たちだけじゃ足りない。
まずは、ゆっくりと攻略を始めて落としていってやる。
「王女様のことをたくさん教えてくださいね」
「ああ、一つずつ精進するがいい」
王女様にも、何か思うところがあったのか? 今日は珍しく話しかけてくれて優しい一面があった。
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