side ー 護衛騎士 

《sideリシ》


 私はブラックウッド領で生まれ、マヤ様の元で騎士としての勉強を行なってきた。王都に住んでいるブラックウッド騎士団にも負けるつもりはない。

 強さも、規律も、ブラックウッド領にいる騎士の方が強い。


 そんな私にマヤ様から、お孫様であるマクシム様がブラックウッド領へ帰ってくるから、護衛を頼みたいと申し出があった。

 マクシム様にはお会いしたことはないが、男性と面識がない私で務まるのか不安だったがお受けさせていただいた。

 ブラックウッド領内には千名ほどの男性がいるが、主となる中央区ですら五百名いるのだが、二万近くの女性に対して五百名はかなり少ない。

 しかも年配の男性が多くいるので、私も緊張しないでいられるが、若い男性とはどのような者なのだろうか?


 そう思いながら、マヤ様に呼ばれて部屋の中に入ると男性の後姿が見えました。


「アタシの孫だ。イケメンだろ?」


 振り返ったマクシム様のあまりにもカッコいい顔に全身が沸騰したのではないかと言うほどの衝撃を受けました。

 と、都会の男性は皆マクシム様ほどかっこいいのでしょうか? これはヤバい。鼻血が出そうになるのを必死に抑えながら、なんとか澄ました顔を続けます。


「リシ、マクシムの案内役をしてやってくれ」

「はっ!」


 マクシム様を見ないように顔を背けて、なんとか返事をしました。


「リシ、私はマクシムだ。よろしく頼む」


 不意にマクシム様が私の手を握って握手を求めた。

 私は我慢ができなくなり、鼻血を出して倒れてしまう。

 倒れた私をマクシム様が運んでくれたそうだ。

 かっこよくて、お優しい、あの方をお守りするのが私の役目だ。


 それからの日々は驚きの連続で、マクシム様は男性なのにご自身で領内の視察を行い。商人のグレースに妻にする代わりに投資を引き出し、領内の改革を進めていった。


 これまで田舎で古き良き領だったブラックウッドは、人々が管理され、食糧の安定と商売を根底に、衣食住が発展を遂げていった。


 領民全員に仕事が与えられることで賃金が行き届き。


 衣類は王都の流行りが取り入れられると、稼いだお金を服に使う者が現れ。

 食事は食堂や酒屋が多く立ち並び。

 住居だけでなく、道路の整備などが行われて住みやすくなった。


 全てはマクシム様の指示の元で行われ、マクシム様の素晴らしさが実感させられる。だが、ふとしたときにマクシム様は危ういことをされる方だと気づいてしまう。


 商人からお金を引き出すために、自分の身を捧げて妻にしてしまう。

 わざわざ自ら現地に赴いて女性たちの前にその姿を晒してしまう。

 北の地に住まう女性たちは、マクシム様を見て目の色を変えていた。


 そして、極め付けは発展も大分佳境に入った頃。


 他領からの無法者たちが出稼ぎに来ていた。

 そんな南の地に視察に行くと言うのだ。

 それこそ魔物の前に丸腰でその身を差し出すようなものだ。


 心配していたことが現実になった。


 路地裏で群がる他領の冒険者たち。

 そいつらは男に絡んでいた。

 私たちは数名で男性を助け出して厳重注意を言い渡して解散させた。

 しかし、戻ってみるとマクシム様のお姿がない。


「マクシム様は?!」


 他にも護衛をしていた者たちがいたと思ったが、そいつらもマクシム様の姿を見失っていた。私は血の気が引く思いがして駆けずり回った。

 もしも、マクシム様に何かあれば、私は私が許せない。死んでも償えない。


 そんな私の心配を気に求めないマクシム様の雷魔法が暗くなった天を明るくする。それは町外れから光りを放った。

 騎士たちを連れて、向かって見れば、他領から来た冒険者たちが、マクシム様の魔法によって倒されていた。


「マクシム様!」


 逃げ出してくる冒険者たちを捕まえてマクシム様の元へと連行する。


「リシ、よくやってくれた」

「危険なことはおやめください!!!」


 私は我慢の限界に来て、怒鳴りつけていた。

 

「まっ、マクシム様に何かあったらどうするのですか!」


 怒りが溜まり涙を浮かべてしまう。


「すまない。リシ、君の責任問題になるところだったね」

「そう言うことではありません!!! 私のことなどどうでもいいのです。マクシム様は御身を軽んじるところがあります!!! それはマクシム様を大切に思っている者たちを悲しませるのです!」


 どうしてこの方は自分を大切にしてくれないのか? どうして私の気持ちをわかってくれないのですか? あなたは素晴らしすぎるのです。


「すまない。リシがそこまで私のことを考えてくれているとは思っていなかった」

「わっ、私はマクシム様がいなくなって不安で」


 もう涙を止めることができなかった。


「本当にすまない、リシ。これからは気をつける」

「はい! よろしくお願いします。そうしていただけなければマクシム様をお守りすることができません」

「ああ、約束しよう。だから、私を守ってくれ」

「一生お守りします」


 私は誓います。

 あなたがどんな道に進もうとあなたをお守りします。


 あなたが誰かを殺せと言うなら、私は喜んでマクシム様の敵を殺します。

 

 だから、ご自分を大切にしてください。

 

 私はあなたの剣となりましょう。


 マクシム様は、領民の差別化を明確な物とした。

 これまであった不満を明確な物として、それが嫌ならば領内に入ってくるなと厳命なされた。

 

 さらに、他領との間に領境を作り、通行する者の身分を明確にさせることを命令して、厳しく取り締まりを行うことにした。

 その役目を私が担うことになり、マクシム様のために、一人一人の通行を管理する役目持つ者には誇りを持ってもらうように心がけている。


 中には身分を偽る者や犯罪者なども含まれていたことに気づくことができて、ブラックウッド領の安全を守ることにも繋がっている。


 私はあの方についていくのだ。マクシム様こそが私の騎士道に相応しい主だ。

 あなた方に望んでもらえるなら、この身全てを捧げよう。

 

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