第二十七話 初めての相手
半年間の私は忙しい日々の連続だった。
グレースが優秀だったことで、かなり助けられたこともある。
さらにグレースの側近であるエフィー。
そしてアルファ、ベラ、リシの力を借りて、彼女たちをトップに添えた五つの部署の作成を行なった。
1、財政 グレース
2、整備 ベラ
3、教育 アルファ
4、軍備 リシ
5、生産 エフィー
財政は、その名の通りブラックウッド家の資金繰りに関することになる。
幸い田舎の土地は、多くの田畑があり、人材もいることで食糧事情に困ることがなく、他領へ売ることで資金調達の確保ができた。
必要だったのは流通ルートだけで、管理して収集したことでグレースが販売ルートの開拓をしてくれた。
生産を担当するエフィーは、北と南の代表者を決めた。
北は、米と麦をメインで作る環境整備をヤチヨにしてもらい。
その補佐として三つの村の村長についてもらった。
南は気候も良く、野菜や果物、畜産に海産物など、北よりも人口が多く取れる食材も多いため、南の代表者はアルシェと呼ばれる日焼けした肌に豪快な女性がついた。彼女は他の者たちの推薦もあり、南の世話役をしているそうだ。
村は十を越え、小さいが街と言える規模の集合体ができていた。
そのため十一人の村長を幹部として、領民の管理をしてもらうことにした。
北は作るのに時間がかかるため、南が主な事業になっている。
グレースが販売することで、当面の資金は最低限確保できた。
贅沢をしなければ、冬を三度超えてもブラックウッド家は揺るがない。
そこで流通ルートを確保するための道路整備に力を入れることにして、現場監督をベラに任せた。
主な仕事は建築業務を行なっている物たちの護衛だ。
さらに、騎士たちの訓練も含まれるため、リシと協力して魔物討伐までを範囲としている。
魔物の素材は、販売可能なため、グレースが販売経路の確保をしてブラックウッドの資金源にさせてもらった。
倒した者の褒賞にも考えたが、集団で行うことで危険度を下げていることもあり、収入を領内で分け与える約束を騎士に取り付けた。
娯楽として、酒の提供をすることでガス抜きなどもベラに頼んだ。
アルファが管理する教育は一番難しい部分になる。
ブラックウッド領内に住む者は必要最低限の読み書きや計算すら出来るものが少なかった。それは騎士たちの中にも存在していて、識字率をあげることを目下の目標に、初等部と大人部を分けて教育をしている。
子供達はすぐに文字や計算を覚え、グレースの元で商人の下働きができるようになった。大人たちは子供ほどの成果は出なかった。
原因としては、仕事をしている疲れと、文字や計算の必要性がなかったからだ。
そこで娯楽の一種として、本を提供した。
それを読みたいと思ってもらえるように女性の興味のあることを描いた。
これもかつての知識ではあるが、難しい本ではなく。
絵が上手い者にわかりやすい絵を描いてもらって、
騎士の英雄譚
男性との恋愛話
食料不足に対する農業の必要性
読んで欲しい内容を、絵本にしてまとめて読んでもらうことを始めた。
これによって大人の女性たちにも受け入れられた。
それを読みたいと文字を覚える者が増えた。
特に人気だったのは、男性との恋愛絵本で、自ら執筆するものまで現れた。
販売は禁止して、アルファに申告してもらっているので普及させるかの判断はこちらで行わせてもらっている。
物凄く文才がある一人の少女を見つけた。
「君の話は人を惹きつける。こちらの書いて欲しい要望をまとめてくれるなら、君の書きたい物を支持したい。どうかな?」
「おっ! 本物の男の方!!!」
ボクが交渉に現れると卒倒してしまったが、彼女の名前はアーサ。
ブラックウッド家始まって以来の専属作家として雇用した。
彼女が描く絵本は、他領でも人気が出て高値で売れている。
忙しい日々が過ぎ去るのはあっという間で、グレースから嬉しい報告を受けた。
「ブラックウッド家の借金を全て完済できました」
半年間で、野菜、魚、肉、酒、魔物の素材。
そして、アーサが描いた男性との恋愛絵本が売れに売れた。
支出の減少を抑え、借金返済に当て、全て自給自足で賄うことで最速で完済が行えた。私がブラックウッド領に来て八ヶ月が過ぎた頃の出来事だった。
「マクシム様」
幹部や協力者を集めたパーティーをささやかながら行なった晩に、私は一人で自室のベランダで涼んでいた。
「アルファか、どうかしたかい?」
「いえ、ここまでの功績をマクシム様が八ヶ月ほどで作り上げてしまったことにただただ感服しております」
「私だけの力ではないさ。アルファやグレース、ベラやリシがいてくれたおかげだ。獣人の三人娘も随分と活躍しているみたいだね」
「はい。リシさんの元で魔物討伐に駆り出されて、レベルが上がり。獣人特有の身体能力も相まってかなりの成長を遂げた様子です」
アルファも後輩の成長を喜ぶように笑っていた。
もうすぐ一年がたち、グレースを正式に妻と迎えることになる。
そして、私は学園に行くことになるだろう。
学園は三年に渡り通わなければならない。
その前に、グレースには子種を提供してあげたい。
だけど、私はかつての自分を最後まで信じてくれた者にこの身の最初を捧げたい。
「アルファ」
「はい。マクシム様。どうかされました?」
「私の初めてをもらってはくれないか?」
「は? どういう意味でしょうか?」
「私に抱かれてほしい。そして、私を受け入れてくれないだろうか?」
「なっ! わっ、私は妻では!!!」
「アルファが良ければ正妻として、妻になって欲しいが」
「いけません。私は貴族ではありません。……ですから、マクシム様が望んでくださるのであれば、妾として」
アルファが受け入れてくれたことがとても嬉しい。
彼女は月明かりに照らされて真っ赤な顔をしていた。
「ありがとう。私の初めてをもらってくれるかい?」
「よっ、喜んで。私などでよろしいのですか?」
「ああ、これから多くの者に私は抱かれるかもしれない。だが、その最初はアルファがいいんだ」
「光栄です」
そう言ってくれたアルファの唇にキスをした。
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