第二十三話 領地の現状
盗賊を連れてブラックウッド領に辿り着いた。
我々はすぐに屋敷へ辿り着いた。そして、祖母がいる執務室へと入る。
「マクシム! よく来たね。お前の母から連絡は受けているよ」
「お婆様、お久しぶりです」
「おい、マクシム。アタシのことはマヤ様と呼びな」
「変わりませんね。マヤ様。お久しぶりです」
お婆様は確かに歳を感じさせないほど元気で、美しい姿をされている。
「ふふ、マクシムは随分と雰囲気が変わったね」
「そうですか?」
「ああ、まるで歴戦を戦い抜いた戦士のような顔をしている。マクシム、何があった?」
「何も。ただ」
「ただ?」
「自分の大切な物を見定めただけです」
過去から戻ったことを伝えるわけにはいかない。
だが、命を落としたことで、歴戦の戦士と並べるなど誇り高いな。
「ふぅ、そうかい。領主代行をしたいということだが、どうするつもりだい?」
「まずは、ここ五年の収支報告書を調べようと思います。その後は領地内の視察をしてから判断しようと思っています」
「まともじゃないか? それならこれを使いな」
そう言って渡されたのは収支報告書だった。
「マヤ様?」
「アタシはこういうことは苦手でね。なんとかしようとは思ったんだが上手くいかなくてね。マクシムができるというならアタシも協力するよ」
「ありがとうございます。それではその時はよろしくお願いします」
私はマヤ様から受け取った収支報告書を確認する作業をアルファに手伝ってもらって確認をしていく。
領内で絶対に必要な経費。
使途不明金。
領民からの税。
領民へ貸付金。
他貴族への借金。
様々なチェックするポイントを伝えて、アルファにも確認をしてもらった。
私たちが作業をしている間に、マヤ様によって獣人の三人娘が鍛えられていた。
確認作業は一週間にも及んだ。
確認するだけでなく、問題点を浮き彫りにして手をつけなればいけない問題を表面化させた。
さらに、どうしても確認しなければいけない問題がいくつかあることも理解して、アルファとそれをまとめる時間が一週間もかかってしまった。
「マクシム様にこのような特技があったなど知りませんでした」
「花婿修行の間にね。それに花婿は女王に変わって財政管理や人材管理も勉強するんだ。国や土地を守るための知識が必要だからね」
「そうだったのですね」
「ブラックウッド家は余計な支出が多いのに対して、入ってくる収入が少ない。だから、そこから改善しなくてはいけないけど。本当に余計な支出なのかも確認が必要だ。明日からしばらくはブラックウッド領内の視察に出ようと思う」
ここまで私を護衛してきてくれた者たちと共に視察に向かうつもりだが、案内をしてくれる人材も欲しい。
「マヤ様に相談されてみてはいかがですか?」
「そうだね」
収支報告書の査定を終えた。
私はマヤ様に報告するために共に夕食を取った。
「なるほどね。無駄遣いが多くて稼ぎが少ないと。そして、何に使っているのかわからないお金が多いわけだ」
「そうです」
「さて、ブラックウッド家が騎士の家系であることはわかっているね」
「はい」
「騎士は、弱気者を助ける義務がある。それは金銭面でも同じだ。困った者たちがいれば我々は救いの手を惜しまない」
「それは素晴らしい考えだと思います」
騎士の誇りと言えることだ。
だが、それ故に財政を圧迫している。
「難民、孤児、盗賊、冒険者、魔物、それらをどうにかするためにも金がいる。それは無駄遣いとは言えないよ」
そう、ブラックウッド家が最も財政を圧迫している物は、人だ。
だが、だからこそ私には考えがある。
「もちろんです。マヤ様や母上が誇りに思う騎士として、弱者を守ることは大切です。ですが、弱者たちに弱者のままでいてもらう必要はありません」
「どういう意味だい?」
「それを確認するために私は視察に行きたいと思います。領内の案内を出来る者をお貸しいただけないでしょうか?」
じっと私の顔を見るマヤ様。
その瞳には威圧が込められており、覚悟を問われていることがわかる。
だからこそ、目を逸らすことなくじっと見続ける。
「ふふ、いい覚悟じゃないかい。マクシム。あんた前より遥かにいい男になったね」
「そうですか?」
「ああ、本当に良い男だ。前のあんたは一途で、それも悪くはないが。多くの女に愛される男はもっといい。たくさんの女を支えられる男になりな」
マヤ様の言葉を肝に銘じていようと思える。
「リシ!」
「はっ!」
マヤ様に呼ばれて現れたのは長身の凛々しい女性だった。
私の周りにはいないタイプなので少し緊張するな。
「アタシの孫だ。イケメンだろ?」
リシと呼ばれた凛々しい女性が私に視線を向ける。
その瞬間、凛々しくクールだった顔が真っ赤に爆発した。
「くくく、リシは恥ずかしがり屋でな。いつもは澄ました顔をして見えるが、ムッツリなのだ。だが、ブラックウッドに生まれ育った者だ。領地のことをよくわかっておる。リシ、マクシムの案内役をしてやってくれ」
「はっ!」
顔を背けて視線を外したリシは、澄ました顔をしていた。
「リシ、私はマクシムだ。よろしく頼む」
澄ました顔に戻ったので大丈夫かと思って握手を求めて右手を差し出す。しかし、リシは私の姿を見て顔を赤くしただけでなく、鼻血を出して昏倒した。
「ガハハハ、面白いであろう。リシは男に慣れておらぬ。そのような態度だが、戦闘の腕はベラにも負けぬ。歳もマクシムと同じだ。仲良くしてやってくれ」
昏倒したリシを抱き上げて休息させる。
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あとがき
どうも作者のイコです。
この度、とても素敵なレビューを書いて頂きました(๑>◡<๑)
嬉しい!!! レビューが200を超えました(๑>◡<๑)
読者様も増えてくれて感謝しております。
楽しんでもらえるように頑張りますので、どうぞお付き合いください(๑>◡<๑)
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