第三十一話 隣の領地 問題 後編
雷を放った私の周囲を守護虫のフロスティーが黄金の糸で守護するように結界を張る。
「それが切り札かしら? 私がそれを知らないと思っているのかしら? 魔法キャンセル部隊!」
アング子爵が命令すると、冒険者をしている魔法使いたちが、フロスティーが作り出した糸を消滅させた。
「言うことを聞いていれば、正夫にしてあげたのに。メチャクチャにされた後に可愛がってあげるわ」
ディスペルと呼ばれる魔法解除魔法によって、消えていく糸。
それを見た冒険者たちが迫りくる。
「すまないが、時間を稼いでくれるかい?」
「マクシム様、任せておきな。今日はお荷物もいないからね」
ベラは今まで見たこともない獰猛な笑みを浮かべる。
前回の護衛の際は、私と獣人娘たちを守りながらの戦いだった。
騎士隊長として、護衛を一番に優先することで力を発揮できなかった。
だけど、今回は本来の力を発揮できる。
逆にリシとアルファは私を守る陣形で、私もグレースを守りながら戦況を見定める。
「二人ともしっかりと、マクシム様を守りな!」
「「はい!!」」
ベラが冒険者が密集している地点に突撃して暴れ回る。
「ベラは凄いね」
訓練の時でも、ベラには未だに勝てていない。
リシやアルファもベラの戦いを見ながら、迫る冒険者たちを退けてくれている。だが、冒険者の中にも数名強い者達がいてアルファとリシを抑え込む。
「へへへ、邪魔な奴らを退かしたぜ」
ブラックウッド領に入って犯罪をしていた冒険者リーダーが私の前に立つ。
「君か」
「今度こそ捕まえてメチャクチャにしてやるよ。魔法が使えない状態で、男が私に勝てると思うなよ」
鼻息荒く斧を構える冒険者リーダーが前に立つ。
「マクシム様。わっ、私が」
「はっ! そんな細い体で何ができるんだ?」
グレースが震えながらも私を守るために前に出ようとする。
それを馬鹿にしたように笑う冒険者リーダー。
やっぱりグレースは良い女性だね。戦闘は得意じゃないのに気丈に振るう姿も美しいと思う。
「グレース、ありがとう。だけど、大丈夫だよ」
「えっ?」
「あん?」
「確かに力は女性の方が強いかもしれない。だけど、男性も男性なりに戦い方があるんだ」
重い剣を振り回すと、どうしても体力や腕力がすぐにダメになってしまう。
だから、私は私に合う武器を選択することにした。
「あん? なんだいその細い剣は、すぐにでも折れてしまうんじゃないか?」
「ご心配ありがとう。ちょっと特別性の武器でね。すぐに折れることはないので心配いらないよ」
「はいはい。男がいくら武器を持ってもたいしたことはないんだよ! そんな細い剣なんてへし折ってやるよ!」
斧を振り上げた冒険者リーダーの攻撃を私は受け流す。
魔物の素材で作られた剣はしなやかで丈夫なので、斧の一撃で折れることはない。
「なっ!」
「えっ!」
「脇がガラ空きだ」
「ぐっ!」
受け流されたことでバランスを崩して、冒険者リーダーの脇に剣を突き刺す。
「チッ! こんなのかすり傷だよ! オラっ! スマッシュ!」
振り回される斧の一撃は鋭い。
スキルを使ったことがわかり、私は避けることに必死になる。
「くくく、なんだい? 必死に逃げて。どうやらスキルは持っていないようだね」
スキルは、戦闘のプロ達が経験を積むことで得られると聞いている。
あまり戦闘経験のない私はスキルを持っていない。
今回の問題がなければレベル上げをしてもいいと思っていたが、なかなか時間が取れなかった。
「私のレベルは25だ! どうだい? 怖いだろ?」
「はぁ、レベルが25で、この程度か?」
成長してある程度一般的な生活を送っていれば、成人した人は大体レベル5だと言われている。正式には教会や冒険者ギルドに行けば測定してくれるそうだが、私は興味がなかった。
「バカにしてんじゃないよ! スマッシュ! 釘打ち! 全力斬り!」
持っているスキルを連発するが、私としては防御と避けることに専念していればそれほど脅威にはならない。
斧を振り回してくれているので、他の冒険者が近づけない状態になってくれているので私としてはちょうどいい。
「ハァハァハァ、ちょこまかと逃げてばかりで! 殺してやる」
当たらないのにどうやって殺すのかと思えば、今度はグレースへ視線を向ける。
「お前が逃げるなら、この女を殺すよ」
グレースに向かって走り出す。
だが、僕の視線にはベラが魔法使い達を倒してくれた光景が映る。
「フロスティー」
金の糸が発せられて、残っていた冒険者達に糸が繋がる。
「なっ! アバババっババババババッバば!!!!」
冒険者達が、フロスティーの雷によって電気ショックを受けて倒れていく。
「なっ!」
アング子爵が目の前に起きている光景に驚きを見せる。
50名の冒険者達が、たった四人の人間に敗北した。
顎を外さんばりの大きな口を開いて、扇子で隠すことも忘れている。
そして、時間を稼げばいいだけだったのが、倒してしまった。
だけど、丁度良いタイミングで来てくれたようだ。
ブラックウッド領の方から騎馬たちがやってくる。
「なんの騒ぎですかこれは!」
騎乗したまま、母上が怒声をあげる。
ブラックウッド侯爵の出現によって、アング子爵はますます顔色を失った。
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あとがき
どうも作者のイコです。
残り一話で第一章 領地開拓編 完結です。
次は王都に戻り、学園編をお送りしようと思います。
10万字達成( ^∀^)
異世界ランキング76位
総合ランキング170位
になることができました。
読者の皆様の応援あってのことです。
本当にありがとうございます!
レビュー、コメント、いいね、本当にありがとうございます。
これからも楽しく書いていければ良いと思っておりますので、どうぞよろしくお願いします(๑>◡<๑)
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