第十六話 触れ合い

 私は彼女たちの要望を聞かなければこの部屋から出られないと判断して、まずはウルルを抱き上げて、膝の上に乗せてあげた。


「ウミュ!」


 ウサギ耳をピンと立てて喜びを表現するウルルの耳から頭にかけてをゆっくりと撫でてあげる。

 フワフワな毛並みが気持ちいい。

 撫ている間に、寝てしまったのでウルルをそのままベッドに運んであげる。


「次は私なのです!」


 そう言ってポリンが飛びついてきた。

 まだまだ小さい体をしているポリンなので抱き止めてあげると、ぺろぺろと私の顔を舐め始めた。

 小さな女の子に顔を舐められるというのは変な感じではあるが、彼女は犬の習性として、好きな人を舐めたいそうだ。


 我慢していると次第に疲れてきたのか、勢いが弱くなり、ベタベタな顔を我慢しながら、私はポリンを抱きしめてゆっくりと胸の上で頭を撫でてやる。

 すると、ウルルに続いてポリンも眠ってしまった。


 夕食も済んで、お風呂に入り、彼女たちにとっては寝る時間が迫っている。


 そのため、先ほどまで気絶をして眠っていた私とは違って、彼女たちは睡魔に負けてしまったようだ。


「最後は私ですね」

「ミーニャ。すまないが、流石にポリンに顔を舐められた状態で添い寝は辛い」

「うっ!」


 ミーニャが悲しそうな顔をする。


「待て、別にしないとは言っていない。だから、一緒に私の部屋に行こう」

「えっ?!」

「何もしないと約束してくれるね?」

「もちろんです!」


 寝てしまった二人に布団をかけてやり、電気を消して部屋を出る。

 私はミーニャを連れて、自室へと戻った。

 ミーニャにベッドに入っているように言って、私はお風呂に入り、戻ってくる際にアルファに会った。


「マクシム様! どこにいかれてしたのですか? お部屋におられませんでしたので、探していたのです」

「あ〜ちょっと、獣人の子達に話しかけられてね。話をしていたんだ」

「孤児たちに?」

「コラ、彼女たちは我がブラックウッド家の配下になったんだ。孤児などと言ってはいけない」

「申し訳ありません。それで? どんな話をされていたのですか?」

「それが獣人には発情期があるらしくてね」


 私は彼女たちに聞いた話をアルファに聞かせて、アルファは首を縦に振った。


「確かに獣人に発情期がある話は聞いたことがあります。子供から女性へと切り替わる時に獣人の子達も苦労しているのですね」

「それで相談を受けたので、彼女たちの望みを一部だけ叶えてあげることにしたんだ」

「マクシム様は本当にお優しいですね。この前はサファイア様と一緒に寝られていて。私とお話をして。今度は獣人の子供たちですか?」


 アルファはヤレヤレと首を横に振り、困った顔をしていた。


「それもまた、マクシム様なのでしょうね。それで? 本日はどの子をお部屋に?」

「うっ、ミーニャという猫獣人の子だ」

「あ〜、一番可愛い子ですね。やっぱり幼い子が好きなのかしら? でも、年は変わらないわね」

「どうかしたか?」

「いえ、流石に獣人の子と二人で寝かすわけにはいきませんので、本日は私が寝ずの番につきます」

「えっ! そんなの悪いよ。大丈夫、ミーニャは約束してくれたから」

「ダメです。彼女たちも、約束をしたはいいですが、体の我慢ができなくて、襲ってしまうことも考えられます。それこそ見目麗しいマクシム様が横で寝ているのですよ。発情期中であれば尚更危険です」


 アルファの意見も尤もだ。


 だけど、アルファに寝ずの番をさせるのは、申し訳ない。


「なら、アルファも一緒に寝るかい? 私のベッドは三人が寝ても十分な広さがあるから……てっ、ダメだったかな?」


 アルファを見れば物凄い顔をして固まっていた。


「その手が!」

「ダメかな?」

「準備をしてまいります。どうぞ、先にお部屋の方へ」

「えっ? ああ」


 そう言って私の隣の部屋にある、アルファの自室へ飛び込んでいった。

 

 私は呆然としながら、部屋の中に入るとミーニャがベッドに座って待っていた。


「あれ? 寝ているのかと思ったよ。みんなは眠そうだったから」

「あっ、あの。ベッドがマクシム様の匂いで」

「臭かったかい? すまない、でも添い寝するのに私のベッド以外は」

「臭くありません! むしろいい匂いすぎて!」


 良い匂いなのかな? 発情中だから、男性の匂いに敏感になっているのかもしれないな。連れてきたのは軽率だっただろうか?


「お待たせしました!」


 そう言ってノックの後にすぐに扉が開いて、スケスケのネグリジェを着たアルファが現れる。

 同い年なので、それほどグラマラスではないが、将来は凹凸のハッキリとした女性になるアルファは今でも十分に綺麗だ。


「ああ、そうだった」


 ミーニャの対応ですっかり忘れていたが、これで問題は解決するかもしれない。


「えっえっえっ?」


 戸惑うミーニャ。

 堂々とした態度で部屋に入ってくるアルファ。


「実はね。私の専属メイドであるアルファに相談して、二人きりで添い寝をするのはダメだって言われたから、アルファにも一緒に寝てもらうんだ」

「それがいいと思います!」


 意外にもミーニャの方が賛同をしてくれた。

 どうやら、自分の理性に自信が持てていなかったようだ。


「そう、ならよかった。それじゃ寝ようか?」


 サファイアとヴィに続いて、アルファとミーニャに挟まれて眠ることになる。

 アルファは同い年なだけあり、女性らしい柔らかさがあり、ミーニャも一つ下なだけなので、アルファと変わらない体型をしている。


「おいたわダメよ」

「はい!」


 女性同士は目と目で何かを語り合い。

 私はそれを気にしないように目を閉じた。


 柔らかくて良い匂いがして、妹ではない他人と寝るのはかなり緊張した。

 目を閉じていれば次第に眠気がやってきて、眠ることができた。

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