side ー 獣人娘 1

《sideミーニャ》


 私は幼い頃にお母さんを亡くしました。 

 幼い私を庇って事故に遭ったのです。


 女性ばかりの世界で、周りの人たちもいい人ばかりでした。

 ですが、子供一人では生きていくことはできなくて、孤児院での生活は辛いことばかりでした。

 私よりも小さな子たちがお腹を空かせて泣いてばかり、私は彼女たちのために果物を盗んだこともあります。


 それでも食事は毎日必要になるので、一日食べても次の日にはまたお腹が空くのです。


 みんなから頼られるようになったけど、私は何もできない。

 孤児になる子は色々な境遇の子がいて、みんな辛い思いをしてきています。

 どうして私たちばかりこんなに酷い人生を生きなくちゃいけないの? 暖かいご飯を食べて綺麗なお布団で寝れたらどれだけ幸せなことなのか……。


 その人は突然やってきた。

 

 もう動くこともできなくて、汚い床に寝そべっていると綺麗な服をきた良い匂いをした人が歩いていく姿を見ました。


 その人は、私たちを外に連れ出して、馬車に乗せました。

 何が起きているのかわからない私たち。

 他の孤児院からも集められた子達も一緒にお風呂に入れられてゴシゴシと全身を洗われました。


 長い間お風呂になんて入っていなかったので、体についた汚れはなかなか落ちなくて、やっと全身を洗い終えるのに凄く時間がかかりました。

 そのあとは温かなスープと美味しいお肉。そして、柔らかいパンを食べて、ふわふわのベッドで寝かせていただきました。


 ずっと夢にまで見ていた生活が送れました。

 私たちを洗ってくれた人はブラックウッド家の騎士様たちだそうです。

 どうして、そんな方々が私たちを洗ってくれたのか、すぐに知ることになります。


 私たちはブラックウッド家の別邸で生活をさせてもらうようになったのです。

 洗濯をして、食事を作り、掃除を自分たちでして、布団を干します。

 孤児院でもやっていましたが、ちゃんとしたメイドさんに教えてもらうことで、私たちの家事をするやり方を知って勉強になりました。


 そんな日々が続いて、綺麗な服を着させてもらうようになり、生活に慣れ始めた頃。孤児院で見た綺麗な人が別邸に入ってきました。

 私たちをこの屋敷に連れてきてくれたマクシム様です。


 私はどうしても気になっていた質問を投げかけてみることにしました。


「あっ、あの、マクシム様」 

「どうしたんだい。ミーニャ」

「マクシム様は男ですか?」


 本当はもっと丁寧な聞き方をしたい。

 だけど、まだ始めたばかりの言葉使いは上手く話せなくて、なんとか伝えることができた言い方で問いかけても、マクシム様は怒ることなく優しく笑ってくれました。


 その笑顔に、私だけじゃなくこの場にいる子達全員が嬉しい気持ちになれたと思います。


「そうだよ。私は男だ。君たちは子供なので、子供の間に、男性に慣れて欲しくて、私の姿を見ていてほしい」

「男性に慣れる???」


 男性に慣れるってどういうことだろうか? 女性じゃない男性。

 見ているだけでドキドキする。

 ゴロゴロしたい。甘えたい。もう好き。


「そうだよ。この国には男性が少ないんだ。だから、男性に慣れていない女性が多くいるんだ。だから、君たちぐらいの歳からなら男に触れて居れば慣れることができるだろうと思ってね」


 無理だと思う。だって、もうドキドキが止まらないから。

 それに、マクシム様が手を伸ばして私の頭を撫でてくれた。


「フニャ〜」


 凄く幸せ。もうこの天国を手放したくない。


 その思いが募りに募ったある満月の日。


 私は体がおかしいことに気づいた。

 それは私と同い年のポニンとウルルも同じだった様子で、私たちは戸惑った。

 気づいたら獣人の本能に従って男性を求め屋敷の庭を徘徊していた。


 そして、見つけてしまった。


 マクシム様の姿を見つけてしまった。


「マクシム様?」


 ウルルちゃんが声をかけた瞬間。

 私は自分でも信じられない行動をとってしまう。

 マクシム様を気絶させたのだ。


 自分の身体能力が高いことはベラ様に教えてもらっていたけど、こんなことができるなんて思っていなかった。

 だけど、できてしまった私はマクシム様を連れて部屋へと連れて帰った。


 だけど、バレたら今の生活が壊れてしまう。


 私は何をしているのだろう。

 だけど、衝動が止められなくて、マクシム様を縛って椅子に座らせた。


 衝動的に起こした行動にポリンもウルルも戸惑いながら、一緒に動いていた。


「マクシム様。本当にごめんなさい。本当はダメだって。わかっているのに衝動が抑えきれなくて」


 意識を取り戻したマクシム様に謝罪を口にする。


 涙が浮かんできて三人で謝ったけど許してもらえるはずがない。


 マクシム様は酷いことをした私たちを怒るのではなく、優しく受け入れてくれました。


 それぞれの望みを叶えてくれて、添い寝をしてくれました。


 私はこの時に決めたので、一生をマクシム様を守るために使おう。

 それができる能力が私にはあるはずだ。


 アルファ様にいっぱい叱られて、ベラ様の訓練を頑張るように努力する日々が始まった。

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