第39話 ソフィアの秘密

◆◆◆ 第39話 ソフィアの秘密 ◆◆◆



 次の日、両夫人の所へと行くが、やはりポーションやヒールの効果は一晩で無くなっていた。

それでも飲めば一時的に回復するので、一進一退で現状維持は出来ている。

年単位では無理だと思うが。


そして昨日は引き上げた娘のソフィアの寝室へとやってきた。


ガチャ

「入るぞー」


「普通はノックしてから了解を経て入る物でしょ!」


「お―元気元気、わりいな、そう言う風に育てられてないんだわ」



サイドチェストの上に置いたエリクサーはそのままだった。


「よお、コレ飲まないのか?」


「飲まないわよ」


「じゃあもったいないから飲むな」


栓を抜いてくぴくぴと飲んだ。


「もったいない?」


ソフィアはベッドに寝たまま俺に視線を向けて来た。


「ああもったいないだろ。折角出したんだから。俺は病気じゃないが、水分補給でもたまに飲むぞ」


「もったいない…………じゃあ食事を摂る時に何て言う?」


コイツ、俺の話を聞いてないな。


「頂きますだろ、何言ってんだお前。親から教えてもらわなかったのか?」


変わってんな、親がアレだから子もアレなのか?


「この家族はいつもバラバラよ、父は公爵の仕事のせいか、いつもあっちこっちに行って子供の顔も見ない、奥さんと会うのはエッチな事をする時だけ。母親も有職者との会合やパーティーで子供はほったらかし。特に私はこんなんだから放置よ。早く死ねばいいのに」


「早死にするには達観し過ぎじゃねえか?生きていれば楽しい事もあるだろ。俺なんかアレだったし」


「何よ」


「何処までは無したっけな。俺は使徒だって言ったろ」


「うん」


「アレは別の世界で死んでから始まったんだよ」


「うん……」



俺はこの子なら話をしても良いと思った。

まだ子供だから?

助からない命だから?

ゆく先も確かでは無く、治る道すら分からない。

治療も自ら拒否している。

だが、落ち着けばこうして話を聞いてもらえる事に、俺は誰かに聞いてもらいたかったのかもしれない。


不細工に生まれ、誰からも必要とされず、親から見放されたも同然で、誰とも付き合う事も無く死んでしまった事を。

俺は死んで生まれ変った事を伝えた。

今は何となく楽しい生活が出来ている事も。



「ずるい…………」


「は?」


返ってきた言葉は、俺が予想している物と違っていた。


「あんただけずるいわ!卑怯よ!」


「俺だってこんなになってると思わなかったんだぞ!元は男だぞ!それがこんな女の身体になって俺の夢がッ!」


「どうせ、女を侍らかせてハーレムを作る予定だったんでしょ」


「むぅ……何故分かる」


「はー男って単純。地位と金と女とプライドでしか生きられない生き物よね」


「子供が何を言う!」


「あら?言ってなかったっけ?私15歳なんだけど」


「なんだとおお?!じゅッ15とな!」


「障害児として生まれて成長が止まったのよ。魔力過多な人はたまにあるらしいけど。今となっては幾ら魔力があっても無意味だわ」


「わりい、まだ5・6歳だと思った。話が少し大人びてんなーと思った訳だ」


「くくくっあんたって面白いわね」


「あんたって言うな、これでもこの世界じゃ17歳だぞ。向こうの29年を足すと46歳だ。結構年上なんだからな」


「へーおっさんじゃん」


「おっさん言うな」


「じゃあなんて呼べば良い?」


「ハルさんとか、ハルちゃん?クリムゾンは何か堅苦しいし、アレは仕事用にすっか。じゃあハルちゃんで!」


「中身は宙ねんんのおっさんでしょ、ハル君ね。ふふふ、ハ~ルくん!私弟が欲しかったんだけど」


「弟か…………お前知ってんのか?」


「知ってるわよ、弟が居た事でしょ。その時はまだ動けたし、元気もあったんだから」


「俺がその弟だ」


どうだ!ビックリしたろ!



「そんなデカパイのお姉さんじゃないの!あんたエロ過ぎるんだって!私が欲しいのは色々遊べる弟!」


「デカパイ言うな!お前も羨ましいんだろ!ほれほれ吸ってみるか?元弟のおっぱい吸うか?」


童貞殺しのニットワンピを着ていた俺は、デデンッ!とパイパイを出して目の前でゆっさゆっさと揺らして見せた。


「ツルペタはツルペタで需要があるんだわ!えい!」


「はうッ!え?本当に吸い付いた?ええ?そんなに吸っても出ない出ない出ないって!」


子供が抱っこするように腕を回し、逃がさないとでも言うように抱きしめながら胸に吸い付いていた。


「ちょっと、あっ、久しぶりだから、吸っちゃ駄目だって。そこ噛まないのっ、それに赤ちゃんは舌を使わないんだって!」


久しぶりに感じるあの感覚。

それでも意識が私にはならなかったのは、相手が女の子だったからか。


少し気持ちいい感覚と、母性を呼び起こす愛おしい感覚、そして吸われている所から感じる嫌な、邪悪な息吹。


これはゾンビとなった魔物を集め、それを砕いて現世への恨みを持った物を飲ませた物?


体に浸透している呪いがはっきり分かった!



「あ、ごめんなさい。呪いが移っちゃうから…………」


気が付いたのか、慌てて口を離すソフィア。いや、もう遅いから。


体に浸透してくる呪いの成分が分かった瞬間、体内から自然に反発するように聖なる気が出て相殺した!


身体が真っ白に発行する!



「え?!あんな魔導士?聖職者?」


直ぐに光も無くなり、呪いを取り除く事が出来た事が理解出来た。

そしてソフィアの言葉で思い出した!


「魔導士…………そう言えば俺は一度魔導士になりたいと望みを言ったなあ。俺はあの時の能力も備えていたのか?ああ、四属性所か10属性も持ってんだ。これは魔導士の力?それとも使徒の力?」


「何?何?ゴメン! 移っちゃったの?」


慌てるソフィア。


だが、この瞬間、俺は忘れていた魔導士としての能力を使えるようになった!



「治る!治るぞソフィー!どうだ生きたいか?!生きて楽しく面白く自由に生きたいか!」


「う、うん! 私生きたい。楽しく面白く自由に生きてみたい! お願いこの呪いを解き放して!」


「分かった! 俺の姉だった女よ! リトルホーリー!!」



フワフワな少しの曇りも無い、純白の光の玉がソフィアを覆っていく!


「っや あっ あったかい、ママぁ」


身体中に着いた小さな白い玉を抱きしめるように振ソフィアは腕を前で抱きしめた。


玉が剥がれていくと、みるみる内に肌の針艶が戻り、そしてその目には生気が戻っていた!


「あぁぁキモチイイ」


消えた玉を追いかけるように両腕を伸ばしていた。



「よし、これで大丈夫だ。体力は戻っていないからご飯を食べて体力を付けて行くんだ。ほれ、先ずはこれでも飲んどけ」


俺は新しくエリクサーを出して渡した。

疑いも無くソレを受け取り、直ぐに飲み干す。


「炭酸入りがいいなぁ、これリポDみたいじゃん。もっとエナドリみたいなのが良いよハル君」


「エナドリがある訳な…………お前…………何でエナドリを知ってる…………さてはお前転生者……だな」


「あ、ヤバっ。これ内緒ね」


「何が内緒だ。やけに大人びていると思ったらお前、ひょっとして俺よりも年上か?」


「違うもん!私JKだったからまだ三十路にもなってないもん!」


「JK…………俺の天敵じゃねえかよ」


「どんな暗い高校生活してたのよ」


むふふと言いながらゆっくりとベッドから下りるソフィア。


「うっせいわ。華やかで楽しい学校生活に憧れてたんだよ!まあ、此処でそのうっぷんを晴らしているけどな」


「うわぁ、おっさんの考えキモイ」


そう言いながらも俺に向かって両手を伸ばすソフィア。


「なんだその手は?」


「私、ミイラみたいで力ないじゃん!抱っこしてよ、散歩したい」


「そうだな、この部屋は変えた方が良い。そこら中に嫌な感じが立ち込めてる、ついでも此処も浄化しとくか」


部屋中をホーリーの玉で埋め尽くし、全てを浄化させていく。

そして両手を伸ばして待っていたソフィアを抱えて――


「うぉっ」

「あっ」


チュッ



俺はソフィアを抱き抱えようとして、そのままキスをしてしまった。


ハッとして二人見合ってしまう。


「ご、ゴメンなさい。こんな姿……顔でチューして。ハル君の初めて貰っちゃった」


「まあまあ、元々美人だったんだろうが、俺は初めてじゃないし。肉が付いたら結構可愛いから全然オッケーだし」


「むうっ、17にしてヤリマンだったとは。私の初めてを返せ、おっさんの癖に……」


「あっちでJKだったんだろ。それこそヤリヤリだったんじゃね?」


「私は純粋無垢なJKです!ハル君みたいにヤリマンじゃないの!いいから抱っこしなさい!」


「女の身体は力がないの!よわよわで見た目だけなんだから!」


「しょうがないわね! ブーストアップ身体強化!」


「ふぁ!?」


みるみる力が溢れて来る!当社比300%アップしているようだった。


「ソフィーお前何をした」


「ブーストアップ。身体強化ね。それにソフィーって……」


「身体強化か……付与魔法が得意ってか。名前は短い方が良いからそう呼ぶぞ」


「ソフィー…………うん、良いわよそう呼んで。それに付与はバフ、デバフも得意なんだから。早く抱っこしなさいよ」


約3倍もの身体強化を掛けられ、俺は軽々とソフィーを抱き抱える事が出来た。


「あはっ!えへへ」


顔は骸骨だが、笑っていた。


多分、障碍者として扱われ、親の愛情を受けずに育ってきたんだろう。

物心が付いて初めての抱っこだったのかもしれない。ソフィーはニコニコ顔であっち行け、こっちいに行けと言っていたが、顔は楽しそうだった。


俺がもし普通の顔だったら、その内こんな子供が出来て、こういう風に抱っこして散歩でもしたんだろう。


赤ちゃんって言うには少し大きいが、5.6歳って感じの大きさは、抱っこしてもおかしくない大きさだった。



「さあメイドに部屋の用意はさせたし、風呂入るぞ風呂!」


「JKの裸が見たいだけじゃん」


「今は子供だ!子供!風呂入って綺麗にするぞ!」


「ちょっ!ちょっと!私は女あああ!」


「安心しろ!俺も女だ!」


逃げ出そうとしているソフィーを抱き抱えたまま、俺は自室の風呂場に連れて行き、一緒に風呂で身体を洗った。




私と同じツルツルじゃん

うるせー初めから無いんだよ!

ヤリマンだから?

そんなにやってねえわ!

あ、そこ痒い

どこだ?

そこそこ!

俺の背中もゴシゴシしろよ

力が入んないよお

元気になってからだな

うん、それまで一緒にいてねハル君

どうすっかな~

身体弱化!弱化!

あっお前力が入らないじゃねえか!

えへへ、私と一緒

しょうがねえな一緒に風呂の中で浮いとくか

うん!一緒が良い~

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