呪われた公爵家、オーエン領

第37話 解けない呪い

第四章:呪われた公爵家、オーエン領領

◆◆◆ 第37話 解けない呪い ◆◆◆



 馬車の中では色々と話す時間があった。

向かっているオーエン領は先々代の王の弟から収めた領地であり、そこで油田が見つかった事から現在まで発展しているとの事だった。


公爵ともなれば、各領土に諜報員を持っており、俺が黙って出発した事を知っていた。

元から俺を領地に予防と合作していたらしいが、タイミング良く騎士達が向かっている時に俺が町を出たらしい。


大貴族の諜報員恐るべし。


エリスも知らないらしいが、各ギルドや店員、貴族のいる城の中までも諜報活動を行っている人がいるとの事だった。



 そして俺のメイドと言うか、従者になったエリスは元々魔力が多く、公爵領の中にある小さな村で生まれ、その魔力と運動能力を活かして公爵家の騎士団に入団したそうだ。

その魔力は魔法使いと呼べれる物であったが、使える魔法は回復系。すなわち俺と被っていたのだった。



「そんな、ハル様と同じでしたとは光栄です」


まあ、魔法使いとして引き抜いた訳じゃないのでOKなのだ。正統派の剣士として側にいれば良いと思う。




そしてそれば公爵領のすぐ手前の最後の中継地で起こるべくして起こった。


虎視眈々とエリスを狙っていた俺は、お風呂があると言う事で身体を洗わせる事にしたのだ。


見た目は女同士、しかも田舎育ちの若い女とあって平気で全裸を見せて来た。

子爵家のメイドなんかは湯あみかメイド服のまま、体を洗ってきたが、そんなメイドの仕事など知らないエリスは、俺が誘ったように一緒に洗いっこをしようと言う事をうのみにした。


俺と少し違うデカいメロン型のパイパイを揺らしながら入って来るエリス。当然、髪や背中を洗ってもらいながら徐々にスキンシップを取って行く。

さり気なくお触りをし、背後からむんずっと揉みしだく!

後は気の向くまま心の向くまま、タオルに入れていたビリー愛用のぷにぷに張り型で貫いた!



「え?!使徒様は男だったのですか!」


アレ?

お前俺の身体を見ているよな?


「使徒様の役に立てて嬉しいです!もっと虐めてください!」


アレ?


虚しく空を切る俺の腰。

何も無い股間が寂しい。


だが、お風呂でイチャイチャした後は、俺の腕に自分の腕を絡ませてまるで恋人同士のような感じになっていた。


半分成功、半分虚しい。


この子って少し天然?


初めての経験だったからか、それとも今まで回復系兼騎士としての訓練が忙しかったからか。

その手の情報の入手が年上からのみ伝わるこの世界では、奥手なエリスは間違った情報を持ってしまっていた。


色々してしまったが、最後まで往っていない俺は消化不良の試合に勝って、勝負に負けた気分だった。



そんなこんなでべったりとくっついたエリスをお供に、侯爵領地よりも遥かにデカい宮殿と呼べるお城へと入って行った。



 流石に入城した後のエリスは、ピリッとした表情で騎士団へ報告に行くと言い、何処かへと消えていった。

代わりにザ・執事と呼べる壮年の男性が傍にいた。


「ひょっとしてセバスチャンって名前ですか?」


「いいえ、それは私の弟で隣の町で働いております。私はアルフレッドと申します」



ああ、何かその名前もありそうだ。

ひょっとしてこの世界の執事はNPCなのか?ありそうな名前が妙に怪しい。


「私で代々15代目と聞いています」


「へ?そうなんだ」


ズズズと暖かいココアを飲み干した。



季節はやや冬になってきていた。しかも少し標高の高いこの領地は、夕方になってから一気に冷え出していた。

だだっ広くて人気の余り居ないこのお城だからか、より寒く感じてしまう。


「ひょっとして余り人がいないのでは?」


「お恥ずかしながら、あの噂を聞いた職員が次々に辞めてしまっている状態で。移っているのはご家族だけなのですがね、困った物です」



この呪いは空気感染や飛沫感染では無い事は分かった。

今まで呪いと言われても見た事も無いし、そう言う都市伝説しか聞いた事の無い俺にとって、何をしたらいいかなんて分からなかった。


エリクサーをぶっかけて飲ませたり、極上回復リバイブヒールでは呪いと言うモノは治らない気がする。


「一番重症で、弱っている人は誰ですか?」


「それは第二夫人のお子様であられるソフィア様です」


「案内して」


アルフレッドは案内を始めた。

例に依って魔道具が沢山あるのか、その子供の部屋は最上階の5階にあった。


流石に破廉恥な服装では無理があるので、一番大人しく見える白いボディーコンシャスなワンピースに変えた。



そして冷静になって回りを見るに、贅を尽くしたこの階層には家族全員の寝室がありそうだ。

その一つのドアをアルフレッドがノックする。



コンコン


「アルフレッドでございます。薬師様をお連れしました」


カチャ ゴンッ!


そこが寝室にでもなるのか、ドアをいきなり硬い物が当たる音がした!


「どうせ何も変わらないのよ!入って来ないで!」


二人見つめ合い、今は無理だと諦めた。



次に第二夫人の寝室へと行く。


そこは流石に大きなリビングがあり、食事の出来るテーブルが虚しく置かれていた。

そこから続き間があり、そこから少し匂いが変わっている事が分かった。


執事のアルフレッドが同じ様に一言伝えて中へと入った。


一気に肺に入って来る異臭と言うか腐敗臭がする!

天蓋付きのベッドには、ふわふわの羽毛布団が掛けられ、一人寂しく目を閉じて横になっている中年と言うにはまだ若いだろうが、眼窩は窪み、顔もやせ細って綺麗だっただろう顔は老人のようにカサカサに乾燥してミイラのようになっていた。


「ご紹介されました薬師のハルと言います」


「凄くお綺麗な方なのね。昔は私も綺麗だと言われたんだけど、比べ物にならないわ。ふふ、もうその必要もなくなるんだけどね。貴女も分かるわよね」



それはもう過ぎ死期が近づいていて、元の綺麗になる事も出来ないと言う事か。


「ええ、ですが最後にこれを飲んでみてください、気休めかもしれませんが、元気にはなると思います」


ワザと見えるように手の平を見せながら、その手にポーションを出した。


「あら、ポーション? もう何度も飲んだのよ」


「飲んでみれば分かります。私は使徒です。これは混ざりっ気の無い0級ポーション。通称エリクサーと呼ばれる物です」


「あら、使徒様でしたか。お迎えに来たのではないのね。では頂くわ」


俺は栓を抜いて渡した。

すると第二夫人のジュリエットは、怪しむ様子も見せずにビンを口に付け、ゆっくりと飲んでいった。


青白い光に包まれ、直ぐに目には生気が戻ってきた!

だが、呪いの解除する事は出来なかったのか、肌に張りと艶が出てきただけで、殆ど見た目に変わりが無かった。



「これスゴイわ。今までのポーションじゃない」


「それは良かった。ですが、多分これでは呪いと言う物は残ったままだと思います。それではもう一度魔法を掛けます。 極上回復リバイブヒール


淡い光の玉が身体に吸い込まれていく。

更に身体は張りと艶を取り戻したが、感覚的なイヤな感は残ったままだった。



「あら、貴女は薬師だったのでは?最近の薬師は回復魔法も使えるのね。ああ使徒様だからかな?」


頭が困難している。多分栄養も満足に摂れていないはずだ。


「今の内に暖かいスープでも飲んで下さい。体力を回復する事が第一です」


「そうね、今なら食べられそうだわ。でも、またその内呪いは私の身体を……娘を、家族を生きながらに腐らせていくのよ。治らないのならいっその事…………」


「ダメならそう言います。だから最後まで諦めないで下さい」


「……分かったわ、アルフレッド。スープを持って来て頂戴。もう少し頑張ってみるわ」



俺はこの城に滞在するからと言い、部屋を後にした。



「治るのでしょうか?」


廊下で立ちすくむ俺に執事が言ってきた。


「分からない。でも、心のどこかで何かが引っ掛かっている。何かが出来ると。それが分かれば……」



神は万能じゃない。

使徒も然り。


だが、これしきの事位、出来るだろと心の中で本来の使徒か、私が言っている気がする。



続いて第一夫人の所にも行った。

第二夫人よりは具合は良かったが、それでもミイラのように腐敗臭がしている。

何もしなければ時間の問題だと思ったが、俺のエリクサーと極上回復リバイブヒールで同じように食事を摂れる気持ちが出ていた。



最後に公爵の部屋へと入った。

気合か、それとも体力の成せる技なのか、四人の中では一番元気だった。



「何をしに此処へ来た」


「貴方の騎士団が俺を連れて来たのですよ」


「ワシは頼んでないぞ」


「嫌ならば帰るが、婦人二人は少し元気になったぞ」


「少しではダメだ!治らないのなら治療をする意味が無い!さては金品が目的か?!」


「治せたのなら頂く物は頂こう。少しここに滞在する。それでエリクサーの代金はチャラにしてやる」


「エリクサーだと?そんな物がこの世にあるはずがないわ!」


「俺は使徒だぞ。お前が信じなくてもエリクサーはある。アルフレッド!」


「はい」


俺はベッドの近くにアルフレッドを呼んだ。


「これを飲んでみろ」


公爵に見せていた手の平に出したエリクサーを渡した。

アルフレッドは夫人二人の際にもこのエリクサーを見ていた為、何も思う事無く渡した物直ぐに呑んだ。


「ッ!」


「これは……思っていたよりも元気に。身体が若返った気がします」


気がする所では無く、実際、白髪交じりで皺があちこちに出来ていた顔に艶と張りが出来ていた。

白髪は戻らないが皺の無い顔が20歳は若く見えていた。



「それをワシにもよこせ!」


「残念ですが、今日はこれまでです」


「何ッ!」


「何事も順序があるんですよ。言いましたよね、俺は使徒だと。いつまでも偉い気でいるんですか? 俺なら此処でどうする事も出来る。神の僕である使徒に命令するとは。気分が宜しくないので今日は終わりだ」


「ワシを脅迫する気か!」


「脅迫では無い。神の教えを解いているのさ。じゃあな、明日も来る」



俺は後ろで騒ぐ公爵を無視し、静かに部屋を出た。



「何もしていただけないのでしょうか?」


「アルフレッド。あれだけ元気なら直ぐに死ぬ事は無い。さて、俺の部屋に案内してくれ。それと美味しい飯が欲しい」


俺は若返って見える執事に案内され、豪華な客室へと入って行ったのだった。

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