商業都市カクルス領

第31話 強者

第三章:商業都市カクルス領

◆◆◆ 第31話 強者 ◆◆◆



「身分証を」


「これよ!」


私は門兵にビリー・ランダー侯爵の蝋封で閉じられていた封筒を見せた。

金糸で縁どられており、いかにも金持ちしか出しませんと言うオーラが出まくりの逸品だ。



「侯爵様は大通りを真っすぐ行かれれば直ぐに分かりますので、お気を付けて下さい」


「ありがとう」


護衛のジャスティスも素通りで抜けられた。



「流石は侯爵の手紙ね」


「姉さん、馬車には伯爵家のマークが入って……」


「五月蠅い!細かい事は良いの!」


「へい……」



 馬車は大通りを真っすぐ進む。

今までも商売関係や、町の人の活気は見られていたのだが、町の規模が大きいせいか、それとも商業に特化した町だからか、地方都市と中央に近い都市の差を見せつけられていた。



「さあそろそろ着替えようかしら」


指に付けているマジックイメージチェンジングリングを操作し、侯爵に会う為に用意した服に着替える。

コレの良い所は身に着けていた全てをリングの中に入れ、それを寸分たがわず一瞬で着替えられる所だ。


普段着のベリーショートローライズのホットパンツから、コルセットで細い腰を締め上げた黒い皮のビスチェに、同じ黒皮の超ミニスカ。ビスチェの下に着こんだガーターベルトにはアミアミストッキングを付け、絶対領域を見せ付ける事も忘れない。

膝下のロングブーツに赤のマント、そのマントを止める金具やこの際だからと開けたピアスにはエリアスから貰った白金で出来た金細工があしらわれていた。


下着は初めての相手に評判の良い、白いスケスケレースの極小Gストリングスタイプだ。


たかだかパンツが見えたと喜んでいた前世を事を思うとアレだが、本当にパンツが見えて何が楽しいか分からなくなっていた。


だから見せつけているのである。


「むふふ、私の作戦に間違いはないっ」



馬車は進む、侯爵の城に向けて…………



昼過ぎだったので、そのまま侯爵の城へと来たが、あっさりと城の中へと入られ、護衛とはそこでお別れになった。


「暫く、こちっちのギルドに世話になるんで、何かあれば言って下さい」


「いざとなったら爆破するから大丈夫よ」


「ダメですって!ほらっ!近衛兵もこっち見てますって!」


私は中指をオッ立てて見せつけた。


だが、こっちの世界ではそう言うジェスチャーは無いのか、笑顔で親指を人差し指と中指の間から出してグーを突き出してきた。


意味分からん。



ジャスティスのメンバーは近衛兵に連れられ、私は代わりの御者に馬車を任せて城壁から続く広大な土地の中にある城へと進んだ。

塀から城まで野球が出来る位の広さがある。

そこを通り過ぎ正面の玄関へと乗り付けられた馬車から下りた。


「ようこそカクルス城へ。長旅でお疲れでしょう、中で休まれて下さい」


ザ・執事と言うような温厚そうな白髪交じりの50過ぎの黒スーツの男が出迎えてくれていた。



「セバスッ!私はテキーラにシャルトリューズ・ジョーヌを混ぜ、ライムを少し絞った物を入れて、氷と共にシェイクし、マラスキーノ・チェリー1粒とスロー・ジンをティー・スプーンで一匙静かに沈めるのよ。それをシャンパングラスで持って来て」


「よく私の名前を知っておられましたな。ライジングサンですな」


「あるの?!」


「もちろん。此処をどこだと御思いで?」


「あるんかい!」



大概執事はセバスチャンと決まってるのよ。

執事=セバス

これは決定事項ね。


だけど、テキーラベースのカクテルがあるとは思いもしなかった。

さては誰か異世界から召喚したか、転生してきた奴がいるのね?

巻き込んでやるわ。


ずっと寝ていたギンちゃんと共に入口から入ると、赤絨毯が敷かれたロビーだった。

メイドが並んでいる事は無かったが、学校の教室よりも遥かに広いこの広さのロビーで何をするんだろうか?


私なら10人は楽に過ごせるわ。



庶民生活が抜けないハルだった。



別室の待合室の様な豪華な部屋。

一人執事が持って来たライジングサンのカクテルを飲みつつボケーっと待っていた。

ギンちゃんには搾りたての牛乳だそうだ。

嬉しそうにお茶請けのサラミの様な乾燥肉をウマウマと食っている。



「お前、懐柔されるなよ、私達は戦いに来たんだからな」


「ワン!」


やけに嬉しそうに尻尾を振ているのが怪しい……


そう言う私も一口チョコなどと言う久しぶりの甘味を食べてはいるんだが……



ソローっと出て行こうとすると、


「どちらへ?」


「いや、少し気分転換に散歩でも……」


「申し訳ありません。暫くのお待ちを……」


無表情のメイドに咎められた。


ボインでも無けりゃ、デカ〇ンの男もいない。


ああ退屈…………



デカい姿見に自分を映して久しぶりに自分を客観的に見てみる。


まあ、美人よね。

そこら辺のモデル顔負けの美貌に、男が夢中になるような身体。


じつはマジックミラーになってて、この鏡の奥で見ているとか?


私は鏡に手で囲いを作り、奥に誰かいないかと目を凝らしてガン見した。


何だか違う目付きの顔からハアハア(*´Д`)言っている気もするが、気のせい気のせい。


「ほらッ!」


ビスチェのカップをペロンと捲り、薄桃色の先端を見せてみた!


「うぼぼぼぼ!」


姿見の奥から変な声が!



「やっぱりいやがったな!この変態侯爵!」


サッと後ろに下がると、鏡がくるりんと回転し、中から中肉中背の男が出てきた!



「お初にお目に掛かります。カクルス領の領主を務めております、ビリー・ランダー侯爵。愛情をこめてビリーと御呼びください」



ビリーは、オールバックの髪を一撫でし、カイゼル髭を指で整え、胸のポケットから一輪の薔薇を抜いて口に咥え、片足を私に向かって着き、バチンッとウインクをしてきた。



「てめえ、何の冗談だ?その股間は」


「冗談?私はいつも本気だが」


綺麗な白いワイシャツに、短い丈のワイシャツ。下は裸に象牙のペニスケースを付けた変態が此処に居た。


「これは出迎えの儀式。城を代表してお祝いを申し上げる、ハルよ」



30歳後半と思しきイケメンだけに、その下半身には思いっきり視線が行ってしまう。


私はプルプルと身体を震わせながら思いっきり蹴った!


「その反り返った象牙をどこからパクってきたんじゃあああああ!!」


「あべえええええ!」


見事にバックテンを決める侯爵!

そして私の足も見事に骨が折れた!



「いでええええええええ!骨ええええ骨があああああ!」



「ごゆっくりと…………」


静かにメイドが退室する中、私は1級ポーションをぐい飲みする!



シュタッと立ち上がった私は、目の目で大の字に転がっている侯爵に近寄った!


「大事な象牙の根本からふぐりが出てるじゃねえかよ!ふぐりがああ!」


ウリウリと靴で柔らかいモノをゲシゲシと痛めつけ、オットセイみたいに鳴く侯爵のぺニスケースを左右にはたく!



「うっ!これは凄い反発力!起き上がり小法師のように倒れない!」


ペシペシと叩いては元に戻るペニスケース。

あの重たそうな象牙を物ともしない超超高反発体!


「ふははははッ!よくぞ見破った!私自慢の一品を!」


見破ったも何も出てるじゃん、キャンタマに根本が。


ビヨンビヨンビヨ――――ン!


とケースの反動を使い、一気に起き上がる侯爵!


「キャッ!」


倒れた私に象牙の先端をウリウリと頬に擦り付けてくる!



「どうだミルクキャンデーの味はッ!ほうらほら、舐めてみそ、あまーいミルク味だぞ。初産の初乳を厳選し、餌に拘り広大な土地でストレスなく育てたミルクキャンデーだぞ!ウリウリ、その可憐な唇で私の絶品棒を舐めてみそ」


「あ、甘いッ!」


口をこじ開けて入れられたキャンデーは、侯爵の言う通り絶品であった。


「この滑らかで、濃厚な味の中にも後味を引かないスッキリとした喉越し。それにほんわりと残り香にバニラのような香りも!」


「そうだろ、そうだろ。おうふっ、そこっそこがいい!っと、餌に色々混ぜているからな」


私は夢中でペロペロキャンディーを舐めるように口に含んでウットリとしながらキャンデーを舐めていた。



ガチャ


「……ごゆっくりと」


出て行ったメイドともう一人のメイドが少しドアを開けて入り……そうになり、再び出て行った。



私達は二人目を合わせ固まった。



「お前が何かするから勘違いされたじゃないのよ!」


象牙を持ってグルングルンと振り回す!


「折れる!折れる!折れるって!」



転がって逃げようとする侯爵!

私は先回りをしてケースを軽く捩じりながら逆向きで顔面に尻を落とした!


「ふがふがああ」


「しゃッ喋るな!イキがフガフガ尻に当たるだろ!」


私のデカいケツを握りしめ、スーハースーハーしているし、喋る度に口が秘密の花園に当たって来る。



「ええい!コレが悪いんだ!コレが!」


ペシペシとケースの根本を叩き、フゴオ!フゴオ!と言っている侯爵の両足を持ってマングリ返しにさせた。


「ホーレホレ、恥ずかしいだろ。全部丸見えになってるわよ、こうしてあげるわ」




ガチャ


「…………何か御用の時はおっしゃって下さい。何も見えてませんからッ」


少し開いたドアの隙間から目が8つ程見えていた。


完全に覗きに来たな?


丁度、マングリ状態の侯爵のおふくろ様をグリグリビローンと遊んでいる時だった。


そしてその見られていた反動か、カパッと開いた象牙の先から出た侯爵の変な汗を浴びて私はマントで顔を拭い取った。






「では、この立位移動式魔神で案内して進ぜよう」


やけにスッキリした顔のビリーに乗せられ、広い城を案内させてもらう事に。


「変な名前だが、これはどう見ても二人乗りに改造したセグ〇ェイなんだけど」


「そんな物は知らないなぁ」


「この領地にヘルランダーと言うエルフがいると聞いたが、敏腕の物創りの名人だそうだな。何処にいる?」


「ギクッ!」


「効果音を自分で言うな!証拠は挙がってるんだ会わせろ」



俺はノルド領の秘密の武器屋から教えてもらっていた。

この町にいる凄腕の錬金術師であり、エルフである謎の存在を。



「彼女は非常に恥ずかしがり屋なのだ。私も顔を拝んだのは、初めに会ってから1年も掛かったのだ。誰にも知られぬ事のない場所で、ひっそりと趣味の物創りを行っておる。それはゴミか神の如く、屑銭1枚か白金貨100枚のどちらかだ!」


「つまり?」


「ああ、作者が次の次の主人公を温めておるんだろう。何度言っても私には表舞台に出す権限はない。諦めろ」



クソッ

忍者の次も決まっているのか!

どこまで貪欲な作者だっ!



私はペニスペースを後ろから前に出され、まるでカートを後ろから押されている子供のように下から前から象牙で固定されて城を案内されていた。



「それはそうと、この股の象牙はどうにかならないの?」


「セーフティーロックが掛かっておる。その破廉恥な姿を見ているといつまでもロックが外れんわ!

わははははははは!」


「あはははははは!死ね!」


「ぷぎゅッ!」



後ろに蹴り上げた足が柔らかい所にメガヒット!

そのまま転がり落ちるビリー!


象牙に引っ掛かって私も落ちそうな所を必死にセ〇ウェイのハンドルに掴まり、急に後ろに引いたハンドルのせいでセグウ〇イは急に全開でバックを開始する!


「のおッおッおッおッおッおッおッ」


デカいタイヤでビリーを轢き、耐えた私はどうにかセグウェ〇に乗り込みハンドルを前に倒す!


バックから急に前に倒したハンドルで、タイヤはスモークを上げながらホイールスピンを開始!

赤い絨毯にブラックマークを付けながら唸る魔道モーター!

そして一度轢かれたビリーの顔を轢き、更に身体の前にあった象牙に乗り上げジャンプした!



私の手を離れた〇グウェイはゆっくりと直進し、乗り手を失ったからか、そのまま停止。


ビリーを見ると、根本から折れた象牙が飛び散り、パッキーンとモノが張れ、変な方向に折れ曲がっており、本人は泡を吹いて失神していた!


「まずい!極上回復リバイブヒール!0級ポーション!」


最大の回復魔法を掛け、最高級のポーションをオチンにぶっかけグイグイと真っすぐに伸ばし、立体整形でカッコイイ形に!まだ腫れているがこの際問題無し!おふくろさんもパンパンに張れていたので、ポーションをぶっかけ、揉み洗いして信楽焼きの狸さんのように形を整える!

ギンちゃんはこの痛みが分かるのか、両手で目をかくしてチラ見していた!


まだ泡を吹いているビリーの頭を膝に乗せ、グイっと口に含んだ0級ポーションを口移しに呑ませる!


「ぷはッ!ベロを入れてきやがって死ね!」


ニヤリと笑っているビリーに肘を顔面に食らわせ、その痛みで転がりまくった!


「肘いいいいいい!肘があああああ!」



ギンちゃんは後ろ脚で砂を掛けるように地面を蹴っていた。




自分で1級ポーションを飲み、鼻から血を流しているビリーにもポーションを投げてやった。


「うーむ、美味だ、美味であるぞ!その卓越した魔法に、何処からともなく出て来るポーション!決めた!私の第一婦人はハル!君だ!」


「やだよそんなの」


あくまで私は冷静だった。



「何でもハルが望むモノを渡そう!」


「いっぺん死んで」



「爵位から何から君の欲しい物を用意する!」


「錬金術師のエルフと交換かなあ~」



「この町を張るの好きにしても良い!この城は君のモノだ!」


「まあ客人にはなってあげようかな~ってか!簡単に領地をあげちゃ駄目でしょ!陛下に怒られるわよ!」



この変態は何を言っているのかしらとプンスカしていると、ビリーはスタッと立ち上がり自慢のV2ロケットを見せびらかした。


「ふはははは!復活!我は復活したぞ!それもVer.1からVer.2への進化だ!」


意味分からん。


私の眼前にVerアップした物を見せつけ、『なっ!』とか言ってる。

そんな使用前、使用後の事を言われても…………


廊下の奥からはメイド達が顔だけを出してトーテムポールのように下から上まで顔を並べて見ているし。



「さて、君の城となる城内を案内しよう」


「いや、嫁になるって言ってないし」


何も聞いていないビリーは、止まっていたセグウェイを取りに行き、


「さあ、魔導自立型二輪セミアクティブ走行車セグウェイに乗って行こうぜ!」


などと妙にカッコイイ顔で、白い歯を煌きさせながら顎クイして誘ってきた。

初めと名前が違うが……



「三本目の足をオッ立てながら言うな!」




どうにか、私の秘蔵品である蛇皮黒Tバックを穿かせたが、どうにか棒を収める事が出来たが、大きくなったおふくろさんが左右から思いっきり出ていた。



「サイドボール!」


「何故英語で言う!」


「ソレは生殖器ではない。精巣であり、生殖機能補助する物だ」


「意味わかんない。栄養補助食品みたいに言うな!」


「背中に当たるデカパイが至極恐悦の喜びなり」


「頭でも打ったか?」



私は略、自動二輪の後ろに乗せられて城内を案内されていたが、私よりも大きい身体の為、殆ど見えずに更にはマシンガンの様な下ネタ全開で、頭には一切入って来なかった。


2時間程グルグルと案内されたが、ただ疲れただけの案内だった。



与えられた部屋に入り、疲れ果てた私はソファーに座り天を仰いだ。


「コーヒー淹れますね」


「サンキュー…………ってよくコーヒー好きって知ってるな」


専属メイドがテーブルにサイフォンで入れたコーヒーを入れていた。


「領主様は事前確認を怠りませんわ。それに城内デートもステキでした。あんなに張り切った領主様は見た事ありません」


ニコニコした若いメイドが最上の誉め言葉で説明してきた。


どうやら下半身スッポンポンで歩き回る領主が王子様に見えているらしい。

ウジでも湧いているのか?



豊潤な香りの濃い深入りコーヒーを一口飲むと、外で凄まじい爆発音がした!



ズドドドドドドーン!



「何だ!敵襲か!?」


ソファーから立ち上がり窓の外を見ると、破片を飛び散らかせながら濛々と煙を上げて燃え盛る離れが見えた!


「ご安心を。お抱え錬金術師が小型ロケットモーターの燃焼試験に失敗しただけですわ」



「慌てないんだな。いつもああなのか?」


「はい、毎度ですので」



どうやら天才武器開発のエルフは危ない存在かもしれない…………

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