第30話 閑話:忍びの二人

◆◆◆ 第30話 閑話:忍びの二人 ◆◆◆



「では、いざ参らん!」


 出頭命令が届いてから数日後。

俺は馬車に揺られながら東のカクルス領へと旅立った。


商業都市と言う事で、商業ギルドの総本山だと思うが、こちらとて、無手で行くわけではない。

最新兵器のロケランを使いたくてムズムズしていた。



「姉さん、モジモジしちゃってションベンですか?」


「違うわ!出る前にして来たわ!窓からションベンぶっかけるぞ!」


「…………」


無言で口を開けるパワー。


「…………する訳ないだろ、察しろ」



 俺は伯爵の馬車に乗り、護衛として敏腕だと思っているジャスティスを雇った。

1週間の旅だ。慣れた野郎達の方が楽しく行けるってもんだ。


昨日は寂しいから早く帰って来てねと言いながらエリアスに一日中遊ばれた。

しかし、幾らやってもパワーレベルが上がった気がしない。

レベルアップは一人一回切りなのか?

減るもんじゃないから良いんだが…………



「マッドぉ~何か退屈だぞ~魔物とかでないのか?」


ゴトゴトと揺られ続けて3時間。


田園風景から丘陵地域を抜け、険しい山並みを上っていたが、余りにも風景が変わらない。


まあ暇なのだ。座っているだけで何もする事が無い。

現在、御者を務めているマッドに聞いてみた。



「そろそろ休憩にしましょうか?馬に水もやらないといけませんから」


「うっ……俺の冒険を無視しやがった」


「魔物なんて出ないのなら出ない方が良いんですよ。山を越えたら森になるようですし、そこら辺で出そうですね」


むふふふ、俺のロケランの出番は近い……


馬車を適当な空き地に止め、桶に俺が水を出して飲ませる。

草は馬屋から買った物があったので、別のマジックバックから出して食べさせた。

二人乗り用の小さな馬車なので馬は一頭立てだ。

ギンちゃんがこいつ食えるのかという顔で見ていたので、少し怯えている。


「ギン、食ったら駄目だかんな。その内魔物を食わしてやるぞ~」


それが嬉しかったのか、足に抱き着きヘコヘコと腰を振っていた。



小休憩も終わり、再び山道を抜けて行く。

余りにも変わらない景色が変わったのは、夕方になり山を抜けた所だった。


「姉さん、この先森になりますぜ。今日は此処でキャンプを張りましょう」


「いや、もうちょっと森の中まで行くぞ」


「危ないですぜ」


「俺の結界を舐めるな。最近使ってなかったから使いたくてビンビンしてるぜ」


俺の言葉に振るが動きを止めるが、表情はヘルムがある為見えなかった。

フルプレートの中で悶々としてるんだろう。



俺の言葉通りに山を下りた所にある森の中までやってきた。

木々が覆い茂り、昼間でもうっそうとしていて薄暗いはずの森は、一気に暗くなっていた。



「よーし!みんな木や枝を集めろ!キャンプファイヤーを作るぞ!」


「姉さん!暗くて余り見えません!」


「ん!俺が良い案を思いついた!」


と言うか、フルを見ていた時からやってみたかった事があった。


フルのフェイスガードの横にある可動部の上下に動く部分に枝を何本か差し込み、そこへ火を付ける。

フルプーレートアーマーは鈍い艶消しシルバーだが、松明のように明るい火が幾らかは反射し、背の高いフルのお陰で周りが明るくなった!



「おおッ!思った通りの歩くトーチ!」


「流石です姉さん!」


「これで周りが見え易く……って!火!火が着いてる!」


茂みに入って行くフルは、低い枝や屈んだ時などに回りに自然に放火しながら進んでいた!


「ミニウォーターボール!」


ボール状の水が幾つも飛び出し延焼を防いだ。



やはり素直にミニライトを沢山展開し、灯り代わりにしよう。


親指大の光をこれでもかと出し、辺りを昼間のように明るくした。


これで木々を集めるのが楽になる。

初めからこうしておけば良かった。

そう思っていた時、少し奥から火の手が上がった!


「まだ燃えてるぞ!」


仲間の掛け声に俺は水の魔法を使い消そうとしていた。

だが、



ガオオオオオオオオオオ


雄叫びと共に出て来る火炎放射器のような火!


「魔物だ!」



いつもなら逃げる所だが、俺はこれ幸いとばかりに馬車に乗り込み、サンルーフの屋根から頭を出し、そこにマジックブラカップからRPG-7を出す!


屋根が台代わりになって一々持たなくても良い!


「むふふ、頭が違うのだよ。そんじょそこらの冒険者とはな。ポチッとな!」



適当に向きを合わせ、上についていたボタンを押し込む!


バシューン!


RPG-7は本体後方からガスを噴射し、弾頭の反動を相殺しながら、そのまま高圧縮された弾頭のガスに点火!

真っすぐ俺の向けて何処かへと飛んで行った!


後ろ?!



バッコーン!



「何でボーリングピンみたいな弾頭が見えてないんだ!前がどっちか分からないじゃねえか!…………ん?」



弾薬の爆発に照らされた、爆発炎上する炎の前に素早く木々を抜けて行く謎の二人の姿が見えた!


「誰だ!に、ニンジャ?!スゲー!ここに忍者がいるぜ!!」


俺は弾薬を再装填し、今度こそ前向きに忍者の逃げた方向に適当に気配を辿り撃つ!


バシューン!


ドッコーン!


爆炎から逃げるように影が見えた!



雷遁らいとんの術、爆雷」



ヤバッ!

どこか懐かしいのうな声が響き、咄嗟に結界を張った直後!



ダッダーン!


と雷鳴と同時に爆発的な雷が俺の真上に直撃する!



「あぶなッ!でもこの結界は破れないわよ!さあ、私の結界を破って見なさい!あはははは!おほほほほ!」


バシューン!バシューン!バシューン!バシューン!


ドッコーン!ドッコーン!ドッコーン!ドッコーン!



「すばしっこいわね!メガ爆導策……そこよおお!」



チョロチョロしている忍者に的を絞り、私は特大の魔力を込めた爆導策を投げ入れる!


ズゴゴゴゴゴーン!ズゴゴゴゴゴーン!ズゴゴゴゴゴーン!


太い木々がへし折れ、魔物が巻き込まれるようにすっ飛んで行く!



「ええい!邪魔するなあああ!ぶち殺すぞ!」



土遁どとんの術、トーチカ」



声と共に地面が盛り上がって来る!



「あははは!そんな土壁如き!メガ爆!メガ爆!」


爆導策を連発し、土地壁を木っ端みじんにしていく!

なんだか楽しくなってきた!



おぼろッ!引くわよ!水遁の術、霧隠れ」

「はい!霧姉!」



「逃がさないわ!ミニメガ粒子砲!」


指先から出た極細の高熱線が辺りを焼き払う!


同時に霧隠れの術なのか、辺りが一気に濃霧に包まれていく!



周囲を細かく熱線で焼いていったが、静かになり、霧が晴れていくと周りには先ほどまでいた忍者は居なくなっていた。



そして馬車の裏側からのそのそと這い出て来るジャスティスのメンバー。


「お前達、そこに隠れていたのか?道理で見えないはずだわ」


「姉さん、俺達護衛は要らないんじゃ」


「か弱い私に一人旅をさせろって言うの?ほらっサッサと薪の準備と索敵急いで!」



辺りはRPG-7の爆発と爆導策で焼け野原になっていた…………




「さっきの黒ずくめの人は何だったんでしょう?」


「さあ?」


「さあって、意味も無く攻撃したんですか?」


「気配を消して背後に居られるのは嫌なのよ」


「どこかのヒットマンですか?」


「どうせ、作者が次の小説の主人公でも出してきたんでしょ!相手にしても出てこないわよ」


「俺も出演できるといいなぁ」



マッドのポツリと言った言葉にハルが反応した。


「あんたは飼い殺し決定。出演オファーは私が断っておくわ」


「そんなぁ!」



夜は和気藹々と更けてゆく…………



そして幾日が過ぎ、隣の都市であるカクルス領が見えてきた。


商業都市と言うだけあって近くの村や町からに馬車に物を積んで入って行く姿が多く見られている。


「さあ、ド変態と聞いているビリー・ランダー侯爵に会いに行くとするか」


「姉さんほどじゃ…………」

「なに!」


「いえ…………」


この時、更なる波乱が待っているとは誰も知らなかった。





◇◇◇第二章:魔道都市ノルド領 了 ◇◇◇


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