第29話 出頭要請

◆◆◆ 第29話 出頭要請 ◆◆◆



 その後、商業ギルド職員は、ノルド領の白洲の前で行われた簡易裁判で有罪となり、即刻処刑された。


 仮にも伯爵の側室候補であり、神の御使いである使徒を殺そうとした罪であった。


その事は早馬で王都へと報告が行われ、商業ギルドの職員がその犯行に及んだという事で、その職務地であるカクルス領に出向き、理由を明確にする為に出頭しなさいという文章が届いたのは、あの事があった2ヶ月後だった。



「遅いなぁ、忘れてたぜ」


漸く平和になり自由を謳歌していた俺は、すっかり平和ボケをしたかのようにギルド職員による攻撃を忘れていた。



いつものように冒険者ギルドの奥にある酒場にてレモン蒸留酒を飲みながら、俺宛てに届いた封書の中身を読んでいた。



夏は終わり、季節は秋になっていた。

秋らしいざっくりと編んだニットワンピースを着てはいるが、ざっくり過ぎて黒い面積の少ない下着は丸見えになっていたが、色々と持って来るハウンゼンやエリアスに免じて着てやっていた。


ちなみにハウンゼンは、家の隠し金庫からお金を持ち出しており、俺が持って行ったお金はほんの一部だった。

子爵って儲かるのか?

誰か教えてくれ。



って言うか、最近女の服に抵抗が一切無い。

一度勇気を持って男服が売っている店に入り、男物のパンツやシャツを着てみたのだが、何か具合が悪かったのだ。

やはり心は男でも、身体は女なんだなあと実感し、夜のギルドでオークションを行った。

生脱ぎの下着を売ると、みるみる値が上がり、しまいには金貨10枚で男の下着セットが売れた。

ちなみに競り落としたのはデカだった。

その下着を何に使ったかは聞いていない。


いや、聞きたくない。

聞くつもりも無いし、感想を聞く予定も無い!

如何わしい事に使ったのは明らかだからだ!

伊達に元男ではないのだ!

だが、オカズの一品くらいは許してやろう。

俺は寛大な心を持っているのだっ!



しかしこれに気を良くした野郎共が、エロエロの下着を持って来ては穿かせようとする。


『げへへ、今月の新作でさぁ、オラの顔を思い出しながら穿いてくだせえ』



むろん燃やしてやった。


俺はそう言う趣味はないのだ!


さり気なく持って来るイカすメンズ…………まあ居ないのだが、恥ずかしそうに持って来るスレてない野郎は聞いてやったりもする。


難しい所である。




俺は焼く一週間の長旅を想定して買い物へと出かけた。


むろん、出向くのは例の店だ。



「邪魔するぜ」


「邪魔するなら帰んな」


「おう!またな!……………馬鹿か!俺だ!俺!俺!」


「おう、お前か。俺俺詐欺かと思ったぜ。何にする?良いのが入ってるぜ」


俺は店仕舞いをした店主の後に続いて地下へと入って行った。



「こんにゃくと言う東で作られた盾にその盾をも簡単んに切り割くハルバード、そしてそのハルバードを相手にもしないRPG-7って言うのもあるぜ」


「ハルバードは分かるが、何故こんにゃくの盾のように意味も無いモノで作ったんだ?」


「これはな、何でも切れると言う幻の剣があるらしいが、この盾だけはきれないらしい。まあ、それ以外の剣では簡単に切れるんだがな。まあ、遊びで作った物らしいがな」


「でだ、何故ここにRPG-7と言うオカルトか、オーパーツになるようなミサイルがあるんだ?」


「それは聞いちゃいけねえ決まりになってんだ。どうだ、買うか?」


「むろん、ロケランは男のロマンが詰まってる。弾薬はあるか?」


「もちろん、10発込みで金貨50枚だ」


「買うに決まってんだろ、寄こせ」



俺はRPG-7と言う対戦車ミサイルを渡され、そのまま落とした!


「あぶねえじゃねえか!爆発させる気か!」


「わるい、思ったより重いぜ」


「あんたどうやって打つんだ?」


「男気で踏ん張るしかないだろう。任せろ、元男だ」


「訳が分からんが入れてやるよ」


おっさんは目を血走りさせながら目を飛び出させるようにブラカップのマジックバックへと入れてくれた。


「また、面白くてロマン溢れる最高のモノを頼むぜ」


「ああ、注文しとくぜ」


俺は例の店から出てきた。

これで最新装備をゲットだぜ。


男なら黙って飛び道具だろ。


ロケランの威力を確かめる所だが、弾薬がもったいないので実戦で使うとしよう。



ステキな買い物をした俺は最近流行りの喫茶店へと向かった。

ほろ酔い気分で入る店では、オシャンティーなコーヒーとケーキのセットを頼み、有象無象の女子の自信を纏めてブチ折り、おしぼりで顔と脇汗を拭き、楽しみのコーヒーに舌鼓を打つ。


何事も無ければジョニーがコーヒーを大量に仕入れて来る予定なのだが、いかせん相手は自然。

平気でえ1ヵ月などは狂うという事だ。

楽しみに少しずつ飲もう。


ズズズズズズズ――



マロンの乗ったモンブランケーキを二口で平らげ、ギンちゃんに文句を言われて口の中まで長いベロで舐められた。


何だか怪しい気持ちになりそうなので、そのまま外でモツ焼きを頼み、ギンちゃんに食べさせる。


まだまだ子供と思っていたが、最近では柴犬を越えて秋田犬くらいの大きさになっていた。

もっと大きくなって俺を背中に乗せて欲しい所だ。



「ギンちゃん、ちょっと乗せてみて」


理由も無く道端でギンの上に跨り腰を落とす。

すると、ギンは腰を下げてお座りの状態に。



「違うんだけど、俺は乗りたいの」



そのまま上半身をギンの身体に合わせて乗せた。

すると今度は完全に伏せの体勢で顎を地面に着けてしまった。


「ぶぅ……そんなに重くないと思うんだけどなぁ」


「キュゥン」



「お母さん!あのお姉ちゃんお尻丸出しだよ!」


「見ちゃいけません!」



むぅ、俺のケツは有害図書か?!


「しょうがない、ギンちゃんいくか?」


「ワン!」



あの初めて会った時の亡くなった親のようにモフモフで大きくならないかなぁ。冬になるまでにデッカクなると、モフりながら寝れるんだけどなぁ。


俺は食べ歩きをしながらマジックブラカップバックにポイポイ食べ物を入れ、遠征の準備を行っていった。




「さささっ!お風呂に入りましょうね~」


何処で見ていたのか伯爵邸に戻ると、何処からともなくハウンゼンが部屋に入ってきた!


「お前見張ってたな!仕事をしろ!仕事を!」


「ふふふ、エリアスの騎士団は仮の姿。世を忍ぶ暗躍の仕事。本当は陛下より復旧の金子を貰うまでの遊び人のハウさんだ。ささっ二人でしっぽりと風呂にでも浸かって気持ち良くなろうではないか!」


「自分で遊び人って言うな!」


そう言いながらもニットワンピをスポっと脱がされエスコートされていくのであった。


何度も何度も、毎日毎日、嫌……良いかもしれないが弄ばれていると、精神が男か女か分からなくなっていくる。

硬い所から柔らかい所まで丁寧に洗ってくれるハウンゼンは嫌いではなかった。

時に優しく、そして荒々しく雄々しいモノを見せびらかしながら俺を赤面させて来る。


デイゲームが終わったと思ったら、今度は夕食前にエリアス戦が待っており、連戦連敗でダブルヘッダーを務め、疲れているはずなのに煌く銀髪に肌の艶もペカペカに光っていた。

ホルモンのバランスか?


だが、夕食は食う!

やはり肉の安定性は外せない!

一体どこに肉が付いているかは教えないが、美味しい夕食を食べ、トリプルヘッダーのナイトゲームに備えるのだ。

クマさんPに気を良くしたこの貴族野郎は、バツグンの連携を取り、前衛・後衛を見事に熟し、あれよあれよという間に敵の戦中に嵌って行く。

一撃離脱と思いきや、横からパンツァーカイルを仕掛けて来て一気にダウン!転がった隙を逃がさずフライングボディープレスでスリーカウントを取られる寸前にうまい棒を取られ、変形の縦四方固めに持っていかれる。

苦しくなる程の喉の攻撃を耐えると、下からはタッグプレーで歓喜の攻撃が待っていた。

そのまま身体を反転した俺は、一見すると抑え込みに入っている感じだったが、俺は一人。多勢に無勢で背後からトゥームストンのダブルピストンで勝敗は決した!



今夜もギンちゃんの『キューン』という寂しい声が邸宅に鳴り響いていた。

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