第28話 生き残り
◆◆◆ 第28話 生き残り ◆◆◆
「船長!海賊船です!!」
船員の声で一斉に海を見ると、湾内に入って来る黒地に白で書かれた髑髏に骨を交差させた海賊旗をはためかせn大型帆船が侵入してくる所だった!
「こんな所に何で海賊が!!」
「錨を上げろ!総員乗船!攻撃体勢を取れ!」
「くそっ!商業ギルドの手先か?!」
「大砲用意!早く!」
「旋回急げ!何している!」
一気に緊張感がマックスになり、出航準備を行っていた船員が走りだす!
俺は何やら見た事のある船にデジャブをを感じながら見張り台の籠に片足を乗せ、マストに掴まりながら海賊船を見た。
「くそ!アイツ、どこかで見た事あると思ったら俺が死んだときの海賊旗じゃねえか!許すまじ!!」
何度か死に戻りを繰り返していた時に見た海賊旗だった!
メラメラと燃え盛る復讐心!
必死に隠そうと手を股間に当てるレニー!
一部の船員が真下でポカンと口を開けていたが、下から文句を言いだしていた。
船が港を離れていく時、見た事の無い馬車が数台集まって来た!
「そこの船止まれ!カクルス領の商業ギルドの者だ!」
黒地に天秤のマークが入った旗をはためかせ、出航しようとしていた俺らを止めに掛かった。
その数十数名!
だが、離れていく船を止める事は出来ず、徐々に船は巨大なオールを使って舳先を湾内に入って来る海賊船に向けていく。
「バカが!海は海賊を呼んでいるんだよ!死ぬか掴まるか選べ!」
一人の商業ギルド員が叫んだ事でハッキリした!
海賊は創業ギルドの呼んだ船であり、どこかで海賊との繋がりを持っている事が分かった。
「よし!これで何も考える事無く沈められるわ」
「え?!」
レニーが何を言っているのかと俺の方を見ていた。
「ミニメテオ!」
大気圏外に僅か1~2cmの岩石を発生させた。
その岩石は大気圏を通過し、真っ赤に燃えながら体積を減らす事無くそのままの体積で斜めに軌跡を残しながら海へと落ちた!
ちゃぽっ ジュッ
俺らの乗っている船の10m程先に小石が落ちた
「へ…………ブハハハハハハ、メテオだと?そんな大魔法をと思ったら小石じゃねえか!そんな大陸最高の魔導士の魔法を使わる訳がねえんだ!裸の姉ちゃんよお!」
一斉に分からいだす男達。
だが俺はそれすらも聞いてはいなかった。
「
もう一発のメテオの岩石がゆっくりと近づく海賊船の舳先近くに落ちた!
「よし!ミニメテオランブルストライク!」
レベルが足りず、マニュアル設定のメテオを調整し、岩石群を宇宙に発現させ、位置調整をした岩石が一斉に攻撃を仕掛けて落ちて来た!
マッハを越える岩石が数十万もの数で振って来る!
シュバババババババババババババババババババババ!
燃え盛る小さな岩石が、甲板を位置も簡単に穴を開け、破壊しながら燃やしていく!
盾や部屋などは紙のように貫通し、大砲の火薬に誘爆!
一気に海賊船はど真ん中から二つに折れていく!
水飛沫と濛々とした水蒸気で何も見えなかったが、その攻撃が終わると、そこには船の残骸だけしか残されていなっかった。
「じゃあなレニー、元気でやれよ。もう名前を変えるんだからレニーじゃないんだな」
見張り台の中で俺は別れの言葉を言った。
「やっぱり一緒には行ってくれないんだね」
「主犯格が逃げたらカッコ悪いだろ。仮にも俺は使徒。神の使いなんだぜ」
「…………うん、分かった。頑張って来るよ」
「そうだ、その気持ちを忘れるな。何処に居ても誰と話していてもお前の事は忘れないからな」
「俺も忘れないよ、ハル」
「もしまた会ったら色んな話を聞かせてくれよ」
俺はマストを掴み、見張り台の縁に立った。
海へと飛び込もうとした時、レニーから声が掛かった!
「ハル!俺決めたよ!ハルから一文字貰ってハーレーにする!うん!決めた俺は今からハーレーだ!忘れるなよ!」
「ハーレーだな!分かった!覚えとくぜ!」
「また男言葉になってる!」
「あははは、わりいな。簡単には治らないぜ。じゃあ元気でな! トウ!」
俺はカッコ良く海へと飛んだ!
まるで高飛び込みの最上階から飛び込むように伸身で一回宙返りをし、そのまま頭から綺麗に着水する予定だった。
海面の衝撃を防ぐ為に全身に障壁を身に纏い、そして勢いが足りずにそのまま甲板に落下した!
ドガン!ゴロゴロゴロ、ザッパーン!
「うあああ!アイツ甲板に穴を開けやがった!」
船員が文句を言ってきたが、既に海へと落ちた後だった。
軽い痛みと衝撃に、暫くプカプカと浮いていた。
ど座衛門に見えないように軽く手を振り別れを告げた。
港湾の端にある砂浜まで待機していたギンちゃんが、海へと飛び込み、銀髪を咥えて泳いでくれた。
その途中で0級ポーションを飲んでパワーアップした私は、マジックイメージチェンジングリングで戦闘服マークⅠにチェ〇ングし、正義の味方のように両手を揃えて斜め上に向け、足を大きく開いて右足を真っすぐ伸ばして構えた!
「不埒な悪行の数々、人が許しても俺が許さん!」
決まった!
良い具合に海風が深紅のローブをはためかせていた。
「くそお!やっちまえ!」
「え?」
メテオを見せたにも関わらず、一斉に襲って来るギルド職員!
簡単にお縄になると思っていた俺の意表を付く攻撃に、俺は足裏のクローラーを全開にして一気に離脱する!
「ぶははは!諸君!捕まらなければ俺の勝ちなのだよ」
俺は脳波コントロールのクローラーで向かう敵を大きく旋回し、町へ向けて一気に加速していく!
だが、そうは問屋が卸さず、正面から馬に乗った者達が砂煙を上げながら向かってきた!
早い!その数10名ほど!
先頭のどこかで見た様な厳つい男が剣を抜き馬に大声を張り上げる!
うわああああどうしよう!
あああ、もう来た来たきたああああ!
「きゃッ!」
俺は頭を抱えてその場にしゃがみ込んだ!
そしてその側を通り過ぎて行く馬郡達。
俺は一人その場に残されていた。
「お嬢を嵌めやがって!やっちまえ!」
それはこの町にいた冒険者達だった。
何となく見覚えがある顔姿。名前なんか知る訳も無く、そうしている間にアッという間に武器を取られたギルド職員が無力化されていた。
「貴様ら何をしているのか分かってんだろうな!」
後ろ手にロープで巻かれ、罪人同様の姿になった職員が吠えていた。
そこへ俺の横をパッカパッカとデカい軍馬で通り過ぎて行く二頭の馬上から声が響く。
「商業ギルドの儲けが少なくなると思えば直ぐにハルに暗殺を試み」
「それが失敗するや、今度は商売の邪魔をするどころか偽物のポーションを販売した罪とな?」
真っ赤なフルプレートを着こんだ騎士のような者と、白銀のフルプレートを着こんだ者とが交互にギルド職員に話しかける。
「勝手に人を犯人に仕立て上げ」
「挙句の果てに海賊船まで呼ぶとは笑止千万!」
「「俺の領土で好き勝手はさせない!」」
おおー決まった!
何かカッコイイ!どこかの暴れる大名みたいだ!
「いや!お前の領土じゃねえだろ!」
「隣じゃん!ちっと位移動してもわかりゃしねえって!」
「ココは俺の領地だっつーの!お前のは壊滅したじゃん!」
「ちと分けてくれてもいいじゃん!ケチッ!」
「俺が寄り親だっつーの!」
「なら子の面倒をみろよ!こんな時だけ親気どりやがって!」
「だから領地を無くすんだよ!」
「まだあるわ!住めないだけで!」
「それが無いつーの!」
「ある!」
「無い!」
「ある!」
「ないったら無い!」
赤添えが必死であるとアピールしている。
それに対して白銀が無いと言い張る。
これってもしかして…………
「おい、赤のおっさん!」
「おっさんじゃねえ!お前を女にした男を忘れたのか!」
「ミニファイヤー!!」
問答無用でズドドドドドドと火炎放射器のような火が赤男の顔にぶち当たって行く!
「あちあちあちいいいいいい!俺を殺す気か!」
「その声、その厚顔無恥な言い方……さては恥知らずのハウンゼン!生きていたか!?」
「血塗りのハウンゼンだわ!!勝手に殺すな!」
取り敢えず1級ポーションを頭に何本も投げて癒して行く。
カパンッと開けたヘルムから出た顔は、見事に顎髭を生やしたおっさ――ハウンゼン・シュタイナー子爵だった。
聞けば単騎で特攻を掛け、生き残りの冒険者と巨大な魔物を討伐し、命からがら領地を抜け出したと。
俺がお馬さんに乗ってのんびりノルド領へ寄り道しながら向かっている最中に追い抜かれたらしい。
エリアスの騎士団に入団し、商業ギルドの様子を窺っていたと。
途中でダメになった普通のフルプレートアーマーを捨て、本来の物である赤添えのアーマーに変えていたらしい。
道理で分からなかったはずだ。
「そのイヤらしい視線は健在だな」
「うっせーわ!エリアスに何度もやられやがって。てめえ、今夜抱いてやるからな!」
「おう!やれるもんならやってみろ!」
「なら今夜はクマさんPだな」
「するか!」
ペストルからチャクラムを早打ちし、見事に白銀の角を斬った!
「俺の角おおおお!」
「へん!俺の角を真似しおって。角持ちは俺だけで十分だ!」
ヘルムを脱ぐと、思っていた通りのエリアスの顔が出てきた。
そしてどうにか角が元通りにならないかと試行錯誤していく。
「姉さん!御機嫌麗しゅう」
どこかで見た厳つい顔の四人衆がギルド職員を踏ん縛って来た。
「おッお前ら!!……………え、え――っと…………」
「姉さん!もしかしてわすれ――」
「ちょっと待て!思い出す、思い出すからあ…………………………あッ!」
「キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!」
「どんぶりブラザーズのマック!チン!デカルチャー!パワー!!」
「ジャスティスのマッド、フル、デカ、です!パワーしか合ってないじゃないですか!」
マッドが悔しそうな顔で地団駄を踏んでいる。
「お前らも生きてたか!俺は嬉しいぞ!また顔面騎乗してやるからな!」
直ぐにオッキするデカの顔がニヤケていた。
「何ぃ!顔面騎乗だと!!俺はやってもらってないぞ!」
「俺もだ!」
貴族の二人が俺に迫ってくる。
「うっせーな。その時の気分だよ、き・ぶ・ん!」
俺が先にしてもらうと二人で殴り合いが始まった。
その横を領地の騎士団が到着し、ギルド職員を踏ん縛って、連れて行った。
「さあ、久しぶりに焼肉パーティーと行くか?」
まるで子分の様になったジャスティスの馬に跨り、場末の焼き肉屋へと直行するのであった。
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