第26話 貴族の新しい遊び

◆◆◆ 第26話 貴族の新しい遊び ◆◆◆



 身体や顔に血しぶきを浴び、回りがドン引きしている中、私は冷静に周りを見渡していた。


「おっと!頂く物は頂かないと!」


私は黒焦げになった商業ギルドへ再び戻った。職員の生命反応は無い。

カウンター裏に回り、かたっぱしからお金の匂いのする箇所を漁り、胸の中から出したガマ口亜空間財布に金という金を入れていく!

ズダダダダダと二階へ上がり、やはり黒焦げになったギルマスの部屋の金という金を入れ、2つ程防火、防防水仕様の高級マジックバックを見つけた。


中には行っていたように白金貨が十数枚入っており、他にも足の付かない金品だけを奪い取って行く。



「地獄の沙汰も金次第ってね!ああ、世知辛い世の中だことっ!」



 私は金という金を全て奪い、ギルドを出て行く。


「ミニカース呪い


指先から建物中に小さい呪いを充填させていく。

威力が無い代わりに小さい小さい呪いを幾つも背負う事になるわ。


ブラカップのマジックバックから黄色いビニールテープを取り出し、入り口にバッテンに張って封鎖する。そのテープの上から『Keep Out・立ち入り禁止』『入った者は呪われるぞBy使徒』と書いて出来上がりっ!



ふふふんっっと清々しい気分でレニーの所へと戻ったが、ギンちゃんは尻尾を振って大喜びしている割には、レニーは顎をカクンッと落としたまま固まっていた。


「取り敢えず話は付けて来たわ!」


「あっ!はっ話って魔法を撃って来たんじゃん!」


漸くレニーのフリーズが解けた。


「私はね、自己紹介もしたのよ。それを無下にする所か、みんな揃ってバカにして。地獄へ堕ちちゃえばいいのよ!あ、もう堕ちたか!」


私はブラカップからタオルを出し、水の魔法で湿らせてから汚れた顔や腕を拭きながら言った。


「そんな簡単に殺しちゃだめだよ」


「そお?悪い人はやっつけても良いんだよ。その為に力を授かったのだから」


「それでもダメだって。話をすれば分かる人もいるんだから」



この時ハルは少し理解をしていた。

俺と私の時の性格に乖離があると。

女らしい性格の私は、使徒としての道を追っていきながら時には非情な事を平気で行い、無慈悲で心を痛めない。

その代わりに俺になると、臆病で人間臭く、慈悲の心でもって助ける事を厭わない。

性格は男そのものでありながらどことなく生活を楽しんでいる所が見受けられていた。


俺が私への変化を見ているように、私も俺の行動を分かっていた。

ある意味二重人格のようでもあり、二人は一人なのであった。



「うん、一応分かったわ」


顔をゴシゴシ拭いて、綺麗にスッピンになったハルは、それでも神々しいまでの品格と美貌でもってレニーに答えていた。


「ありがとうハル。それで俺はこれから何処かに逃げればいいのかな?」


「逃げる?ああ、商業ギルドとやり合ったからね!そうねえ…………取り敢えずこれをあげるからいつものようにいっぱい冒険者達にポーションを売りまくって媚びを売って、沢山サービスをしなさいっ!私の取り分は要らないから思いっきり安くで売るのよ!」


私はパクって来た防火防水タイプの高級鰐皮マジックバックを渡した。

そしてズドドドドと手から各種ポーションを入れていく!


「いい?0級ポーション、所謂エリクサーを5本、1級を100本、2級を5000、3級を5000、4級を10000入れたわ。序に氷と水も大量に入れてる。お金は迷惑料として白金貨20枚、金貨5000枚程は入っているわ。貴方がどこで何を使おうが貴方の勝手よ。だけど使いどころを間違えると目を付けられて殺される可能性もあるわ。言い?取り敢えずいつもと同じ生活をしなさい。期限は……そうねえ、1週間ほどかしら?ポーションは使い切っても良いわ。補充してあげる。でもエリクサーだけは良く考えなさい」


「こッ!こんな物!」


「ほら行きなさい。お客が来たわ」



私はマジックバックをレニーに押し付け押し出した。


30cm四方の肩下げバックを胸に、後ろへと下がって行くレニー。

そして私の後ろからはパッカパッカと馬の蹄の音がしだしていた。



それは馬車用の馬では無く、大きく逞しい軍馬が騎士を乗せて近づいてきた。


「あら?これから戦争?それとも私を捕まえに?」


私の直前で止まった軍馬の上にいるフルプレートアーマーを装着し、腰には剣を帯剣した騎士、そして手にはスピアを持った騎士もいた。

その完全武装の騎士二人に向かって話した。



「我々はクラウザー伯爵の領軍である!貴殿を保護しにきた!」


「あら、お迎え?エリアスにサービスのし過ぎかしら?」


その言葉を聞いたのか、ガタガタと赤添えの鎧を着た騎士が体制を崩しそうになった。


「ふふっ、では騎士さん私をこの雄馬に乗せてくれるかしら?」


その赤添えの鎧を装着した騎士に声を掛けた。


「お嬢様、こっちの馬と私の方が若いぞ」



片割れのシルバープレートアーマーを来た騎士が負けじと声を掛けて来た。


ガシャンッという音と共に馬から下りて来る真っ赤なプレートアーマーを着た騎士。

よく見ればその鎧には幾つもの大小の傷があり、歴戦の戦果を見ているようだった。


「乗るのであれば赤色と角が生えてる方が良いわ」


2m近くある頭の頂点にある、変形した斧の様な角を見上げた。


「俺も赤に塗り直そうかな。おっさん行くぞ!」


若そうな騎士は馬を操作し踵を返す。



「馬に乗った経験は?」


赤添えの騎士が聞いて来た。


「ないわ。でも雄ならば安全よ」


私は口の横から顔、首身体を撫でていく。

馬は皮筋をピクピクさせながら興奮していた。


「このエロ馬が」


片膝を曲げ、そこに両手を組んで足を掛けろと言う。


ヘルムのスリットしかない顔を覗く。


「どこかで会ったかしら?」


「いや、初めてだろう」


「ふふふっ」


私は手に足を賭け持ち上げてもらいながら馬に跨る。


「鞍の前を握っていると良い」


騎士は手綱を引き馬を歩かせ伯爵邸へと向かった。






「派手にやったな」


「だって私は使徒って言ったんだよ!それを笑うって信じられないわ!」


「まともな教会がある公爵の領地までいかないと信心深い領民はいないさ」


「別に神は一人じゃないし。意味位分かるでしょ」


「この国には、具現化された神やその配下となる使徒などの姿を見た者はいないんだよ。いきなり神だ、使徒だと言っても信じる者は王都や侯爵領の教会の人間だけさ」


「奇跡を起こして見せるわ!こうなったらみんなに呪いを掛けて…………」


「そこまで覚醒してないんだろ?町にいる年寄りの神父に除霊をお願いしたら、凄まじい数の怨念が込められていたらしいが、直ぐに除霊出来たらしいぞ」


「チッ 怨念がソコにおんねん…………」


背後にいるエリアスに手で作った水鉄砲の要領でお風呂のお湯をピューっと掛けてやる。



「まあやってしまった事はしょうがない。元々悪い噂のあったギルマスだ、死んで元々。だが、商人達や隣の侯爵は黙っていまい。

やるなら商人どもを残さずに始末するべきだったな」


「そお?!じゃあ今からやって殺しくる!」


ザバァ!っとお湯を撒き散らしながら一気に立ち上がる!


すぐさま、腰を引かれてエリアスの腰上に戻された。


ザッパーン!


「まあ待て。今更やっても遅い。どのみち隣のカクルス領からは馬車で1週間は掛かる。寝ずに軍馬を走らせても3日。まさか軍を送って来る事は無いだろうが…………国外にでも逃げるか?」


「私に逃げるという言葉は無いわ。あるとすれば殲滅ね」


「まだ力もないのに?」


「うっ…………だからって揉まなくてもいいのよ」



 私は伯爵の騎士に保護され、血しぶきで真っ赤に染まった身体を洗い、突如として現れた伯爵から抱っこされて湯船に浸かっていた。


お湯に浮かんだお胸を揉まれながら。



「いやー元男なら分かるだろう。これは実に良い物だ」


「私は他の女性のを揉んだ事ないしっ!ついでも言うならどどど童貞だったしっ!」


「それは実に残念だ。こんなに良い物を触れないなんて。自分で揉んでみれば?」


「こんなの脂肪の塊だしッ!自分で揉んでも楽しくない!」


お湯に浮かびながらちゃぷちゃぷと揺れ動く自分のお胸を良い様に揉まれ続けていた。



「だからか?微妙に腰が動いているぞ」


「うっ…………動いてないし!動かしてないわよ。私もう上がるからッ!」



ザパァッ!


私は勢いよく湯船から立ち上がった!


「もうちょっと居ろよ」


クイッ


ザッパーン!


「あッ…………」


刺さっちゃった…………剣が鞘に…………


「まあ…………事故だなこれは…………どうする?」


「事故よね、事故。しょうがないわね」



それから私達は派手に湯船のお湯をちゃっぽんちゃっぽんさせた。

どんぶらこーどんぶらこーと大波小波を作って遊び、そして…………




「あち―」

「のぼせた―」


二人でベッドに倒れ込んでしまった。




「これでも飲んで」


スポンッと手にキンキンに冷えた3級ポーションを出してエリアスに渡す。


「おッサンキュー」


うつ伏せになりながらコルクを抜いて飲んでいくエリアス。

私も肘を立ててうつ伏せになりながら同じキンキンに冷えたポーションを、栄養ドリンクと水分補給代わりに飲む。


「新しい力か?」


「そうみたい。ホットかクールのどちらかね」


「そうだ!もう一本1級をくれるか?」


「はい」



私はくぴくぴとポーションを飲みながらもう一つの手でポーションを渡す。



「うひゃッ!」


エリアスは渡した冷え冷えのポーションを、寄りにも依って私の背中からお尻にぶっかけて来た!


「ああ~ひゃっこくて気持ちいい~」


私の背中にエリアスは自分の胸をくっ付けて滑らせて遊んでいた。



「ほれ、もう一本っ!」


「はっはいぃ」


思わず渡すと、今度は私を仰向けに転がして表面にポーションをぶっかけて来た!



「ふにゃふにゃほにゃあ~」


「なっ何ですかその変な歌は!」


「知らんのか?気持ちが良いと自然に歌が出るんだぞっ!」


濡れた身体をすーりすーりしていくエリアス。

女体盛りは聞いた事あるが、女体ポーション滑りは聞いた事がない。

新しい貴族の遊びかしら?



「あっ ちょっとお!」


「いいではないか、いいではないか、ほれ、ハルも嫌いではなかろう」


「ちょっ あ まあいいけど」



ポーションを飲んだからか、エリアスは元気になっていた。

涎や何かの液体や追加されたポーション塗れになって、またお風呂に入ったのは夕方、陽が落ちてからだった……

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