第24話 使徒の役目?
◆◆◆ 第24話 使徒の役目? ◆◆◆
私達は30分程歩き、南門から町へと入って行く。
船長の名前はジョリー。26歳という若さで大型貨物船の艦長になったらしい。
腕っぷしにも自信があるようで、幾度となく海賊船との戦況を打破してきたらしい。
一応、自己申告ではあるが。
まあ、誇大・誇張はしてない、だろう。
「それよりもさあ、ハルの事が知りたいな!」
私の首に腕を回し、無精ひげを私の頬に擦り付けてくる。
荒々しい愛情だが、私となった今ではそれが嫌いじゃなかった。
「強引ね」
「イヤか?でもな、運は自分から掴みに行かないと逃げていくんだぜ」
「知ってるわ。アイツにも教えてあげたいわ」
今頃レニーは商業ギルドとダンジョンを往復しているのかしら?
少し可愛そうだけど、ずっと一緒に居られる訳じゃないから、頑張ってと言うしかなかった。
「おっライバル出現!」
「そんなんじゃないわよ。頑張って欲しい人がいるだけ」
「何か言葉使いが変わってねえ?」
「そうかもね、でも今は私よ、気にしないでも良いわ」
「へー、良く分からないけど分かった!」
こいつ、少しバカぁ?
でも元気はあるし、生命力高いわよね。
誰かの使徒?いいえ加護を受けてる?
「ジョニー……貴方の魔法、誰から貰った?」
「ん゛ッ……魔法が貰える訳ねえべ?ほらそこそこ!その店が美味いんだ!」
ジョニーは私を連れて店内へと入って行った。
何だか誤魔化された気分だった。
その店は船乗り達で溢れていた!
交代制の勤務なのか、20人くらいが早々とエールや強い蒸留酒を飲み騒ぎ、肉をモリモリ食っては野菜をバリバリ貪っている。
「お前らお待ちかねの給料だ!一人ずつ並べ!」
デカい大衆食堂の様な場所で、荒くれ者達が嬉しそうな顔で並び出す。
当然ジョニーは一番奥の席でその場を仕切っていた。
一人一人へいつの間にか持っていた小さなバックから紙に書かれた名前の通りに金貨や銀貨をテーブルに並べご苦労だったと声を掛けていく。
案外少ないようにも見えるが、どれくらいの航海で貰えているのかが分からないので、その多さは判断が出来なかった。
「船長、良い女が出来たから、これは俺からの奢りでさあ!」
エールを持って来た男がお金の代わりにエールを置いて行く。
「
隣に座っていた私にもエールを置いていた。
「私を誰だと思ってんだい?使徒だよ。これ位飲めないでどうするってんだ?」
私はエールのコップを一気に煽って飲んだ!
「ヒュースゲえぜ!流石は姉さん!」
「これ位水と同じだよ!もっと強い酒をこれで買ってきな!」
私はブラカップからガマ口マジックバックを出し、金貨を50枚程をテーブルに山積みにする!
「誰か酒を狩ってこい!姉さんが御所望だ!!」
「流石は船長の女だ!」
「一番強くて高い酒を買ってこい!」
一気に盛り上がって行く場末の酒場!
高級な酒場も良いが、こう言う庶民的な酒場も良いもんだ。
お礼にと鳥のもも肉を出してもらい、胡椒の聞いた肉をふんぬッ!と噛み千切る!
「極上の女なのに飾らねえのがたまらんぜ!」
何処からともなくほめたたえる声が聞こえてくる。
枝豆にむしゃぶり付きながらエールで流す!
「肉焼きますよ!店員さーん!カルビとロース40人前追加~!」
ハルはガマ口財布からワサッと金貨を握りテーブルに置く!
「お肉を食べないとお仕置するわよ~!あーんして欲しい人は並びなさーい!」
次々に運ばれてくるお肉。
そしてジョニーは真っ先に私の目の前に並んでいた!
「くれ!肉!」
「焼けるまで、ま・ち・な・さ・い!食中毒になるんだから!」
相変わらず生焼けを許さないハルであった。
ハルのテーブルに“待て”をさせられて並ぶ野盗たち。
そしてギンはハルの太ももの上に座って尻尾を振っていた。
「初めはギンちゃんからね。はい、あーん」
焼けた肉をフーフーして食べさせると、にゃんにゃんと一生懸命噛みながら満足そうな顔をしていた。
「うふっ可愛いんだからギンちゃんって。次はジョニー、貴方よ。これからも頑張ってね、ふふっ」
同じようにフーフーしてからタレに付けて食べさせる。
「うおー!美人の焼いた肉はうめえぜ!」
船長が食べた後は、我先にと巣で待っているヒナのようにテーブル前に口を開けて待つ船員が並んだ。
中にはエールや蒸留酒を注いで持って来る者も。
「気が利く男って好きよ」
貢いできた酒をグッと煽り、焼けた肉を一舐めしタレ
を付けて食べさせる。
「違う!唾液がスゲー甘いぜ!」
その声を聴いて酒を注文する船員!
ハルは知らず知らずに使徒としての能力を発揮していた。
今やこの場末の定食屋はハルを頂点とした教団のようなヒエラルキーの階級が作られていた。
「姉さん!酒樽買ってきやしたぜ!」
買いに行かせた船員達が酒樽3個を並べていた。
そこから始まる酒の飲み比べ。
いつの間にかハルもその輪に混ざり、和気藹々と肩を組んで飲んでいた。
胸元のボタンを外し、胸の内側の大半を見せながらも暴動が起きないのは、ハルの隣に座っている船長の威厳と、ギリギリで押さえるハルの能力のせいか。
我慢の出来なくなった者達は、春を売る店舗へと貰った給料を手に持ち店を出て行き、残った者は肉や酒を手に夜を過ごしていく。
私も気分良くエールや蒸留酒を飲み、いつの間にか限界を超えていた。
ただ、みんんが酔って倒れている死屍累々の店内で、一人酔っていない者がいた。
船長のジョニーだった。
「案外飲めるんだな。ちとビックリしたぜ」
ジョニーは以前から店と交渉をしており、船員をそのまま寝かせる事を了承させていた。
言わば簡易の宿代わりになったいた為、ジョニーはそのまま船員を放置し、隣で眠っていたハルを背負い店を出た。
「お前も忠犬だな。一緒にいくか?」
「キャン!」
いつの間にか付いて来ていたギンと、夜道の中をお尻丸出しのハルを背負って歩いて行くジョニーだった。
「はッ!…………ん?あれ?」
見た事の無い天井。
見た事の無い部屋。
俺はまた死んだのだろうか?
私が調子に乗って定食屋で肉を焼きまくり、酒を飲みまくっていた所までは記憶があった。
まるで子分のように慕ってくれる船員達が可愛くって、飲んだことの無い量を限界が超えるまで飲んでいた。
大学生の時はボッチだったからコンパとか無かったし、話す男はいたが飲み明かすなんて一切居なかったから楽しくて仕方がなかった。
「1級ポーション」
天井に向けた手の平にポーションをスッと現れた。
「あれ?死んでないや」
ムクッと起き上がると、そこは清潔な白いシーツとフカフカのベッドの上であり、薄手のタオルが胸から滑り落ち、その豊満な肉体が露わになる。
そのまま出したポーションをゴクゴクと飲み干すと、飲みすぎで頭の痛かった事が嘘のように消えて無くなり、気分スッキリ、元気モリモリになっていく。
「昨日は死ぬ、死んじゃうって言ってたのにな。可愛い奴だぜ」
「ふぁッ!」
左を見ると窓辺の椅子に座って俺を見ているジョニーの姿があった!
身動ぎをすると身体に違和感が!
薄いタオルケットを剥ぎ、身体を確認する。
「あんた…………やったわね」
寝ている間にやられるとは!一生の不覚!!
いや、グロいモノを見ずに済んだのは返って良い事だったのか?
いや、あの快感は捨てがたいものが…………
などと一人で考えていると、ジョニーは持っていたマグカップから独特の香りをさせたモノをグイっと飲んで微笑んだ。
「それってコーヒー?」
「良く知ってるな」
「ちょっと飲ませなさい!」
俺はベッドを降り、ジョニーの持っていたマグカップを奪い取る。
黒い液体と独特の香りを確かめ、一気に飲み干す!
「ああ…………久しぶりのコーヒーだ」
元々コーヒー党だった俺は紅茶も嫌いではないのだが、こうして飲むとやっぱりコーヒーは良いッ!
「それ、高級品だぜ。こっちで売れば一杯銀貨5枚は堅い」
「船長ともあろう者が、残った半分を飲まれてお金を請求する気?」
金儲けはしているだろうに、一杯5千円だろうが、飲みたい物は飲みたいのだ!
「いや……お前の身体はこんな屑では表せない。金貨を積み上げてエントリーできるかどうかってとこだぜ……」
やられてしまった事は仕方が無かった。
全裸でコーヒーを飲み干し、微かに残ったコーヒー一滴を落とすように逆さまにしたカップを、仁王立ちで落ちるのを待っていた。
「…………裸で仁王立ちする女神か……悪くねえ。コーヒーならまだあるぜ」
ガン!
窓枠にマグカップを叩き着ける!
「それを早く言いなさい!朝昼休憩はコーヒーって決めてたんだ!って言うかギンちゃんはどこ?」
いつも側に居るギンがいなかった。
俺のペット兼家族みたいなもんだ。
「犬ならそこを散歩してるぜ」
窓の外を眺めるジョニー。
俺も開け放たれた窓に頭を突っ込み、外を見渡した。
そこは船の上であり、右舷の端をクンカクンカと匂いを嗅ぎながらトコトコ歩くギンの姿があった!
「なあ、俺もポーションくれるか?」
「ふふっ可愛いギンちゃん、海に落ちないようにね!ハイ、これでも飲んでなさい」
後ろも見ずに1級ポーションを渡す。
「くああ!こりゃキク――」
後ろで一人騒ぐジョニー。
だが、それでおさまる事は無く、俺の腰を握り後ろへと引きずり込まれる。
「あっ!ちょ!」
ベッドへと倒される私は、ポッキーだと思っていたモノが富士山だった事に漸く気が付いた。
「こんなに元気にさせて、責任取って貰うぜ」
「はへ?あっちょっと!朝からだなんて!」
「ランプの灯りよりも、朝日の方が似合ってるぜ」
「あ!ちょ!ちょ!ちょっと~~~~」
私は目くるめく嵐に呑まれてしまった…………
それは工員が積み荷を運び出す時間になって漸く終わりを迎えた。
「この強姦魔!スケベ!エロ男爵!反社!」
俺は作ってもらった熱々のコーヒーをベッドの上で胡坐を掻いて飲んでいた。
「スケベは男の本能だからな、間違いじゃね。だが、俺は男爵みたいな貴族ではないし、はんしゃってなんだ?そんな職業でも出来たのか?」
「ああ、もう煩いな。昨晩と今ので貸し2だかんな!」
「おっけー。貸しは作れる時に作っとけってもんだ!もし出来たら迎えに来るからな」
出来たら?
出来ちゃった?
いや、それは無い。
本能と言うか、自分の身体が普通じゃない事に今更気が付いた。
「それは無い……子供はその時が来た時、この私が望んだ時じゃないと出来ない事になっている。
そして使徒としての……仕事がこの先に待っている……待ってるのよ。決して死ぬ事の無い悠久の時の中で、その者達が現れるのを待ち……合流?使徒たち?人間達と私のような使徒は違う存在?貴方のようなポセイドンの加護持ちとは違う?のよ」
それは記憶の片隅に刻み込まれた情報だった。
生まれ変りの様な事だと思っていたが、そんな簡単な事では無かった!
異世界転移?
そもそも人間じゃないわよね。
神の使徒?
神の片腕となり動き、神のお告げを代弁する?
そんなの嘘
未来へと続くこの道を揺導する?
そんなの私には無理
その内仲間が出来る?
それなら…………
なんて事
いや、でも、まだそれは起こらない。
私の成長にも時間が掛かる。
それまでは遊んで暮らせ?
ハメやがったな?!
「ふうっ…………安心て、子は出来ないわ。そう言う仕組みみたいよ」
「ん?なんか変わった事情があるんだな。嫁にとも思ったが残念だ」
「当面誰かのモノになる予定はないわ」
「残念」
次の出航までは少し日が掛かるようで、一旦離れるように船を下船し、町へと思っていった。
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