第23話 危機一髪
◆◆◆ 第23話 危機一髪 ◆◆◆
朝になっても現れない伯爵を少し残念……いや、安心した俺は、いつものルーティンである冒険者ギルドへとポーションを納品しに行った。
「来たぞ、あいつだ」
「ああ、少し前から此処にいる奴だよな」
「もうバイ―ンバイ―ン!」
「クリムゾンって言うらしい」
「ダンジョン近くで空が真っ赤になったろ、アイツの魔法らしいぜ」
俺を待っていたかのように噂話が普通に聞こえる。
野郎共は声を小さくする気配りは出来ないのか?
昨日はギルド職員もいたし、噂になるのはあっと言う間だった。
「ああっ!昨日のハルさん!待ってましたよ!昨日の盗賊は賞金首だったみたいで、一人頭金貨5枚が懸賞金でした!四人で金貨20枚です!」
カウンターにポーションの売った代金以外に金貨が積まれていく。
「ああ、ありがとう」
俺はブラカップからマジックバックならぬ、亜空間ガマ口財布を取り出し、音も無く吸い込まれていく金貨を眺めていた。
「そろそろお金も貯まられたと思いますが、御結婚資金ですか?」
「んな訳あるかい、可愛い
「可愛い
「何っ!何故それを先に言わん!」
俺は急遽予定を変更した。
何か話たそうな野郎共を放置プレーし、外で待っているレニーに急用が出来たからと残念がるレニーと別れて埠頭に向かう。
言っとくが俺はハーレムの夢を諦めた訳じゃない!
中にはこんな女の身体でも良いと言う奇特な可愛い子もいるはずだ!南門から出てダンジョンと埠頭の分かれ道で拳を握る俺の下でギンが後ろ脚で身体をポリポリ掻いていた。
余り興味がなさそうだが、構うもんか!
俺は防風林沿いに続く道をポテポテと歩いて行く。
そこは流石は伯爵領。
海岸沿いに歩くと、それほど離れていない所に馬車が集結し、大きな帆船から次々に荷物を降ろしていた。
「おおーデッカイ帆船だ」
にっぽん丸とか海洋丸みたいな帆船は見た事あるが、本物の帆船は初めてだった。
色々見ていると船首の下の船首象だが、普通女神象だと思うのだが、この船は筋肉モリモリのどう見ても男の象が目力強く正面を見ていた。スピリット・オブ・エクスタシーみたいなエロい象の方が良いと思うんだがな。
それにしてもエクスタシーって!それにあの恰好と言い何かエロい名前と恰好だ。後ろに手を回してほにゃららほにゃらら……
左舷を岸壁に付け、そこには大砲が5門が出て来るであろう、扉なども見えている!
煩悩の邪気を払い、異世界の海戦を想像し一人武者震いする。
「姉ちゃん、トイレなら事務所にあるよ」
「さっきしたわ!ションベンを船に掛けてやろうか!」
後ろからいきなり声を掛けられビックリして声を荒げてしまった。
そこには目がクリクリした30歳くらいに見える焼けた上半身を見せびらかし、ハーフパンツとサンダル姿の男が立っていた。
「おおっ!元気良いなぁ。ションベンじゃねえんか、震えてたからそうだと思ったぜ。わりいな!」
あっさりとした性格なのか、元気な声で俺に言うとペタペタと足音をさせてその事務所がある方向へと行ってしまった。
俺は荷下ろしの邪魔にならないように帆船へと近づき、ほへー、ふむむ、なるへそ~、むむむっ。などと独り言を言いながら船を見て回っていた。
初めは可愛い子ちゃんを探しに来たのだが、余りの迫力のある帆船に心を奪われていた。
「よお!また会ったな女!」
そこには事務所へと行ったと思っていた男が立っていた。
「ああ、お前か」
「へへ、男みてえな言葉を使う女だな。本当に女か?」
いきなりミニスカートの中に手を入れ“うにゅ”っと来た!うにゅっと!
「バカッ!」
グーで顔面にパンチを喰らわす!
「おおっ!女だ!女!力が全くねえぞ!よく今まで生きてたな!」
今度はむき出しになっているお尻を前からハグされ揉まれる!
「あータタタタタタタタタタ痛っ痛っ痛っいたたた」
「スゲーぞ!待ったく痛くねえ!」
腹立った!
俺は男の鼻の穴に指を突っ込む!
「チェスト!プチファイヤー!」
そして中で種火を燃やした!
「あちゃちゃちゃちゃちゃあ!」
揉んでいた手を離し、即座にバックして逃げた。
「怒ると怖いぜ」
「ちょっタンマ」
火傷したであろう鼻の穴に指を突っ込むと、反対の穴から水が噴き出て来た。
「おっお前……魔法が使えるのか?」
見事な鼻うがいを見せられ、これがまともに眼前で見た初めての魔法だった。
「お前もだろ。鼻の中で火を使うのは反則だろ」
「お前が勝手に触るからだろ」
「そっか!わりいなすまん!」
あっさりと非を認めた男。
何か、出鼻を挫かれる。
細身だが、海の男なのかしっかりと筋肉は付いている。
レニーよりももっと危なく危険な香りがしている気がしていた。
「何か調子が狂うな。しょうがねえ、コレ飲めや」
めんどくさかったので直ぐ手の平にポーションを出し、男に軽く投げた。
「おっスゲッ!ありがとな」
念のために3級ポーションを渡したが、酒でも飲むように一気に飲み干してしまった。
「お前の効き目良いなあ!俺の嫁になるか?」
「ブ――――!」
俺も気疲れの為に同じポーションを飲んでいたのだが、男に向かって吐いてしまった。
「ペロ、ペロ。やっぱり美人の涎は美味いって聞いていたが、本当に美味いんだな!」
「この変態が!俺を嫁にするなら大陸一番の船団でも持ってきやがれ!下っ端なんかはお断りだぜ!」
「く~~やっぱりそうか!クッソデカくしてやるから待ってろよ! さっ!ちょっと船でも見て行くか?興味あんだろ?」
「いいのか?」
「こっそりだぞ」
「分かった。こっそりだな」
俺達は馬車に積み込んでいる最中の裏側へと回る。
船首と船尾にロープで岸壁に係留しているが、その船尾に向かっていた。
左舷は橋が架けられてはいるが、荷下ろしの最中で作業員などが大勢いる。
中に無いるのなら前か後ろだった。
「このロープを渡っていくぞ」
「マジか、無理に決まってんじゃん」
「女ってのは弱ええな。ほら、しっかり掴まってな!」
俺をひょいとお姫様抱っこする男!
「ちょっ!」
「バカ、大声出すなよ。秘密なんだろ」
俺を抱きかかえたまま、斜めに掛けられているロープをひょいひょいと渡って行く!
落ちそうな感じに俺は必死に男の首に腕を回ししがみ付いていた!
「ほら!潜入成功~」
モミモミ、モミモミ
「おいっ」
モミモミ、モミモミ
がら空きの脇から伸びた手が、俺の胸を揉んどるやないかい!
「やっぱでけえのに限るよな!揉みごたえ抜群!こんなの見た事ねえそ!」
「堂々と触るな!」
「こっそりなら良いのか?」
「ダメに決まってるだろ!」
へへへ、やっぱダメか、っと怒られた素振りも見せずにニコニコ笑顔だった。
「よし!付いてこい、見つかるな!」
「おう!」
俺は男の後ろを音を立てずに付いていく。
身を屈め、壁に張り付き、肩車をされて太ももをペタペタ触られ、お尻を持ち上げられながら上に登る。
ああ、何か楽しいっ!
荷下ろしをしているのを見ている船員の後ろをこっそり通り抜け、荷物の一部からバナナを一房ちょろまかしてきた。
「この部屋で食うぞ!」
案内された部屋はどこか高級感漂う部屋だった。
デカい机には海図があり、あちこちに寄港できる港町が掛かれてあった。
そして三人掛けのソファー二つの間にテーブル。
その一番奥には一人掛けで少し大きめのソファーがあった。
「此処は船長室だな。そこのデカい椅子に座ってみろ!」
「マジヤバイって!」
「大丈夫だって!ほら座って見ろ!」
「いいの?座っちゃうよ」
俺は言われるがままに少し大きめの船長の堰だと思われる椅子に腰かけた。
「ふふっ」
座り心地は抜群。
少し周りの椅子よりも高い座面で前の横に座った男を少しだけ見下ろせる。
「いいじゃん、コレ凄く良い…………話はおしまいよ!この作戦を実行する!全ての責任は俺が取る。蹴散らしてしまいなさい!」
「はい、船長了解しました!」
「ふふふ……」
「あははっ」
「「ぶははははははははっ」」
二人でバカ笑いしてしまう。
「では船長、横領したバナナの味見をっ!」
「良いわね、持ってきなさい」
俺は気分良く足を組んで周りを見渡した。
横にもう一つ部屋がある。トイレ?寝室?それとも秘密の部屋かしら?
「船長バナナっす!」
男は俺の顎を上にあげ、いきなりばななを口に入れて来た!
「まだ噛んじゃだめっ!」
俺は押し返そうと唇を締めて頑張るが、上手くいかない!
何をしているの?!
「んッ!んんッ!」
「うわッ!エロ!」
ふと我に返り、バナナを奪い取る!
「変な事させるな!バカじゃねえのかよ!」
バナナを奪い、死うから立ち上がり様に男に蹴りを入れる!
ドガッ! ゴンッ
「うがあっ! 足!足の骨があッ!」
三人掛けのソファーにうつ伏せで倒れ込み、脛を持って蹲る!
「姉ちゃん桃尻丸出しだぜ」
「ひゃんッ!」
男は俺の尻を握り、バフンバフンと閉じたり開いたりを繰り返している!
「おッここの皺に隠れた黒子発見!」
「なッ!無いわよ!」
「スゲー際どいパンツ穿いてんだな。食い込んで丸見えだぜ“グ”がよ!」
「だめッ!ダメぇッ!」
ガチャ!
「船長ここに…………………………」
俺はソファーの上で尻を丸出しにしてバフンバフンと調べられ、男は下衆な顔でケツ間近な位置で涎を垂らし、入って来た船員と思しき男は、見たらダメな奴だと瞬時に判断し、三人三様固まっていた。
「…………………………構わん、何だ?」
一番先に正気に戻ったのは男だった。
「はっ!だッ第一陣の荷下ろしが終わりましたが…………」
「出発させろ。それと――」
「分かってやすぜ!誰にも言いやしませんで!」
バタン!ダダダダダダダダッ
『おい!船長が女を連れ込んでるぜ!あの堅物船長に女が出来た!』
『うおおおおおおおおおお!』
外で大歓声が聞こえてきた。
「あのバカが!」
パシンッ
「んッ!ケツを叩くなケツを!」
スカートを下ろし、足の痛みを2級ポーションを一気飲みして消した。
「もう!」
「中々良い物を拝ませてもらったぜ」
「勝手に見たんでしょ!貴方船長じゃない!嘘付いて!」
三人掛けのソファーに座り足を組んで文句を言う!
「船長じゃないって言った覚えはないぜ」
「うっ……普通は言うでしょ!それに何で若いあんたが船長なのよ!」
「俺の努力の成果だな。水の魔法も使えるし、水は船乗りに取って最大の資源さ。あると無いとじゃ雲泥の差だぜ」
「水くらいで威張るな!私だって出せれるわよ!」
「じゃあ出してみろよ」
「コップとか無いの?」
「どうせ指先から出すんだろ。ほれ、出せ」
そう言うと船長は私の指をパクッと咥えた。
「あ、やッ!」
「
「もう!プチウォーター」
じょぼじょぼと指先から水が出て来るのを船長はゴクゴクと飲んでいく。
「プハッ!うめッ!極上の女が出す汁はうめえぜ!」
「汁言うな!汁って!」
「じゃあ聖水!」
「もっと悪いわ!えい!」
ドガッ!ガスッ!
「あうッ!骨が!骨が!」
ソファーに転がり脛を押えて我慢する!
「あッ!」
その隙に船長に圧し掛かられ、顔間近に船長の顔が来た!
「気に入った。絶対俺の女にする」
「私は使徒よ」
「そんなの関係ねえ!尻の黒子を数えあった中じゃねえか」
「わ、私は数えてないわッ」
「じゃあ数えてみろ、お前の前なら全てをさらけ出せれる」
船長は私の上から退くと、後ろ向きになってズボンとパンツを一気に下ろして尻を見せて来た!
そしてその船長の前にはドアを少し開けてのぞき込む船員の姿が!
「……………」
「……………」
「はあ……」
三つ巴の静かな戦いだった。
だが、やはり先に言葉を発したのは船長だった。
「お前ら仕事しろ!便所掃除に甲板掃除だ!次の馬車は明日だからって仕事が無いんじゃねえんだろ!」
バタン!ピュ――
一気に出歯亀が居なくなった。
「何かヤル気が無くなったわ」
「やられる気も無かったけどね」
「くそッ、まあ良いわ。飯食いに行くか?」
「キャン!」
飯の言葉に反応したギンが吠えた。
「おう、お前も食わせてやるからな。」
部屋を出て行く船長に勝手についていくギンちゃん。
「ちょっと!ちょっと待ってよ!」
慌てて付いていく私だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます