第19話 爆裂お姉さん

◆◆◆ 第19話 爆裂お姉さん ◆◆◆



 このノルド領はダンジョンがあるせいか、冒険者が多い。

それも魔法を使って来る魔物がいるせいか、冒険者達も魔法を使える奴らが多いのが特徴だった。


上位20%に入る魔法強者がゴロゴロいた。俺は一応使えるので、上位30%に引っ掛かっている状態だ!

プチ魔法だけだが一応魔法使いだ!

だが!声を大きくして言いたい!

ポーションを魔法で出せれるのは俺一人!

オンリーワンの魔法だ!



「お姉さん、そこで仁王立ちしてっと邪魔だよ」


「あっすんません!」


俺は今、南門から出て海岸沿いにあると言うダンジョンに向かおうとしていた。


これは怖いからじゃない、武者震いだ!


次々に南門から出て行く強者どものパーティー。

一応このノルド領に来て、ハルロードの功績を認められ、Eランクに上がってはいた。


たかがEランク。

されどEランク。


ダンジョンの推奨ランクはDランクだが、一個上のランクまではOKらしいので、俺も行って見る事にした。


南門から出て森の中道を約1km。ゾロゾロと歩く厳つい冒険者の後ろに寄生してフフフンとピクニック気分。

これなら魔物も怖くないぜ。



「このやろ!出やがったぞ!」


「ひっ!」


右側から豚の魔物が出てきて20人くらいが取り囲みタコ殴りで瞬殺する!


初撃と最後に倒したパーティーが半分づつ肉を分け合いながら道端で解体しだす。



「今度はこっちから来るぞ!」


「にゃっ!」


左上空からデカい、幅が4mはあろうかと言う猛禽類が木々を抜けて襲ってきた!


ズバアア!


いや、本当にズバアアって音がすんのな。デカい剣で一振りし、真っ二つにしてしまった。

首を切り落とし血抜きをするとロープでグルグル巻きにして背中に背負った。


こっちに来てからマジックバックを見ていない。

子爵の家の中で見つけた各種マジックバックは持っているが、やはり高価で手に入りにくい物なんだろう。


だが!ブラカップと布の間にマジックバックを仕込むとか、アレとか、コレとか変な所に仕込むのは止めて欲しい。

死んでるかもしれないが、生きてたら絶対ブッ飛ばす!

妙な振動する魔道具を服に仕込んでたりしているが、裁縫スキルの無い俺には摘出する術がない。リモコンも無いのでそのままにしているが、少し違和感が……



そんな事を考えていると、直ぐに森を抜けて砂浜の側にぽっかりと開いた穴発見。

横にはブロック積みの事務所らしき物が建っており、並びには露店が並んでいた。



「安いよ!安いよ~!」

「今なら防具を買ったらショートソードも付いてくるよ!」

「刃物を砥ぐぜ!10分でスパスパだ!」

「ポーション5個かったら1個おまけだぜ!」



お祭りだな。

意外にポーションが売れてる。これは何か良い金の匂いがするぜ。



仲見世通りのような場所を抜け、ギルド事務所で会員証を見せる。


「はい、がんばってねー、次の方~」


流れ作業で入らされた。



俺は武器らしいたった一つの武器である爆導策の鉄パイプを肩に掲げた。


俺はトンネルの中へと入って行く。

中はほぼ真っ暗で、中には松明や、魔道具のライトを持っている奴もいた。


「プチライト、連続射出!」


俺必殺のプチ魔法シリーズを使った!


一個の明りがほわんと頭の上に登る。

ムギ球程度の明るさしか無いが、それを100個程連続で出し、光源を回りに向ける。

ハルロードからの逃亡生活の暇暇で練習した成果だ。

まるで天使の輪みたいに見えて少し恥ずかしい。


周りの野郎共もギョッとした目で見てくる。


「おおっ良いな。周りが良く見せるぜ」


「だろっ」


LEDみたいにギラギラしておらず、太陽光調のブルーライトカットタイプだからな。


だが、その明りが仇となった。

俺を先頭に行かしてみんなは俺の明りを充てにしているらしい。後ろからゾロゾロ付いてきた。



「姉さん!前!前!」


後ろを気にしていたら前から魔物がっ!



「いやあああああ!爆導策!爆導策!爆導策!爆導策!爆導策!爆導策!爆導策!爆導策!爆導策!」


ズド―ン!ズド―ン!ズド―ン!ズド―ン!ズド―ン!ズド―ン!ズド―ン!ズド―ン!ズド―ン!



「姉さん横!横!!」


「来ないでええええ爆導策!爆導策!爆導策!爆導策!爆導策!爆導策!爆導策!爆導策!爆導策!」


ズド―ン!ズド―ン!ズド―ン!ズド―ン!ズド―ン!ズド―ン!ズド―ン!ズド―ン!ズド―ン!



「後ろからだ!挟まれたぞ!」


「ノオオオオオオ!爆導策!爆導策!爆導策!爆導策!爆導策!爆導策!爆導策!爆導策!爆導策!」


「俺らに撃つなああああああ!」


ズド―ン!ズド―ン!ズド―ン!ズド―ン!ズド―ン!ズド―ン!ズド―ン!ズド―ン!ズド―ン!



濛々とした煙が晴れてゆくと、そこには死屍累々の野郎共と、肉片と化したなんだか分からない魔物の残骸が残っていた。


俺はせっせとせっせと倒れた野郎共に0級ポーションをぶっかけ、一人一人に飲ませていった。


ダンジョンって怖い…………



結局何の魔物かも分からないまま、俺はダンジョンを撤退した。




「なあ、ポーションを代わりに売ってくれないか?」


仲見世通りのポーション露天商に話を持ち掛けた。


「いいぜ、幾らだ?」


「1級が金貨10枚、2級が金貨1枚、3級が銀貨1枚、4級が銅貨5枚でどうだ?」


「相場と同じで半値だな。で、何本用意できる?」


「幾らでも出せれるぜ」


戦闘服の胸カップから1級ポーションを出して見せた。


「か、変わったマジックバックだな。在庫が少なくなって一旦帰ろうと思ってた所だったんだ。ジャンジャン出してくれ!」


若い兄さんは、沢山出したポーションを並べて売りに出す。10本以上買えば4級を1本サービスすると、俺の手伝いもあってか、人だかりが出て来た。


「見てな、出るぜ」

「おおっ出た!」

「マジポロってるぜ」

「ジャンジャン買え、またポロるぞ」

「スゲー!こんなデカいの見た事ないぜ」

「バイ―ンって!バイ―ンって!」

「確信犯だな」

「ちょっと俺トイレ!」

「馬鹿っ!こっそり行け!」



何やら視線が集まってる気がするが、気のせいだろう。

お昼の休憩を除いて午前・午後とポーションは爆売れした。

ギルドにも納品はしていたのだが、即売会の方が何となく楽しい!


ダンジョン帰りの野郎共にもポーションは売れ、十数人の冒険者から遠巻きに見られながら、


「深紅の魔女だ」

「破壊王だぞ」

「爆裂お姉さんだって」

「クリムゾンって名前らしいぞ」

「じゃあ爆裂クリちゃんで……」

「バカッ!」

「近くにいると巻き込まれるからな」

「くわばらくわばら…………」


何か、変な二るつ名を貰いそうだった。

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