第18話 爆発して地固まる

◆◆◆ 第18話 爆発して地固まる ◆◆◆



 このノルド領に来てもう直ぐ1ヵ月は経つ。

ハルロードの難民を受け入れてくれたのは良いが、いかせん、住む場所が無かった。


俺は領主のエリアス・クラウザー伯爵に直談判して新しく北の塀の外に塀を立てさせ、自分達でバラック小屋を建てさせた。


働く者は食うべからずと言って周り、何でも仕事をするようにお触れを出した。

そして子供にもギルドマスターに話をして、15歳以下でも薬草採集が出来るように特例を出してもらう。

代わりに時々俺が見回りをして死人が出ない様に小さい角ウサギを討伐する事で折り合いが付いた。


まあ、殆どはギンちゃんが狩ってるんだけどね。


食べ物の少ない難民の子供には、狩ったウサギをその場で焼いて食べさせる。

そのついでに清潔を保つ為に、一人だけ大衆浴場へ連れて行ってあげる。源泉かけ流しだ!

まあ、半分善意、半分は堂々と裸を除けるからなんだが、料金もポーションも俺の手だしなんだからこれ位は良いだろう。


健康!そう!住民の健康の為だ!




 あの夜、俺はドラゴンの魔弾に飛ばされ気を失ってしまった。

途中で気が付いていたが、何故か身体が動かないし、口も利けなかった。

馬が口で咥えて背中に乗せられ、その場を離脱した。そして何故か子爵の邸宅まで連れて行かれた。


そこで俺の中にあの神様、アプロと言う神に体を乗っ取られている事が分かった。


そこでの事は言うまい。

ハウンゼンに目くるめく官能小説のような言葉に出来ない事をされ、何度も死にたくなるような良い事をされて、恥ずかしさの余りに漏らしそうになる程の…………いや、これは少年誌だ。後は大人になってから考えろ。

自分の身体が自分で無い時に散々やられてしまう。

そしてその事は全て覚えていた。


何が愛と美と性を司る神だ!

人の身体を弄んで!


まあ、綺麗な身体と顔には感謝するけど、こっちだって気持ちの整理がいるんだ!


だけども、そのお陰でスイッチが入れられた。

何かが変わり、魔法が使えるようになっていた。

初心者程度の家庭用プチ魔法だけどな。


もっと魔法を使えるようになるには、愛を交わしなさいと言われた。

俺は誰とでもやるあばずれじゃねえんだ。

童貞よりも先に処女を失うとは。誰にも言えねえじゃねえか!


生きていたらハウンゼンの野郎に一発入れるんだがな。

残念ながら一ヶ月経っても冒険者の殆どと、ハウンゼンの姿は見つかっていなかった。


今や、ハルロードの町は壊し尽くされて廃墟となっているらしい。


俺は伯爵の城に招かれ、ハウンゼンの子供と一緒に忘れ形見として保護され過ごしていた。


この町でも商業ギルドが冒険者ギルドの真ん前にあった。

ココでは冒険者ギルドにだけ活動の場所変更の届出を出し、商業ギルドへは行かなかった。


此処は温泉も同じく有名だが、海岸沿いにあるダンジョンが有名だった。

そこで採れる魔物の部位がいい値で売れるらしい。冒険者から冒険者ギルドへ売られ、町の商店へと流れた部位は、商業ギルドに加盟している店ばかりだった。


町の半分は敵性が高く、後はどっち付かずか。


厳しいな。



だが、俺は見つけてしまった。


店に名前も無く、木の看板に剣だけが掘られてある古びた店だった。



「邪魔するぜ」


「邪魔だ帰んな」


「失礼しました~って帰る訳ねだろ!」


ギロっと上半身裸出っ歯丸ハゲが睨んだ。


「娼婦のデリは頼んでねえぞ」


「へー俺に向かって良い口を利くんだな。ハルロードの親父は奥から何でも出してくれたぜ」


「…………てめえ、何もんだ」


「噂はあっちの親父から聞いてるぜ、お前さんも聞いてないか?このローブを見ろ!」


俺は深紅のローブをカウンター越しに見せびらかした!



「いや、知らねえ」


俺は来たいしていた気持ちを折られ、ガクっと膝を崩し、カウンターにあったワンコの人形を握って事無きを得た。


ガクンッ ウィーン


ワンコの頭が折れ曲がりカウンターの後ろが下がって階段が出て来た!


「あ!バカ!そこを触るな!」


「へへへ、あるじゃねえかよ。秘密の階段が。隠してるんだろ。良い物をよ」


「お前…………商業ギルドの手先じゃねえんだよな」


「んな訳があるか。どちらかと言わないでも商業ギルドの敵だわ!」


「へへっそれなら話は早い。此処はギルドに登録していないモグリの店さ。置いてあるのは全て木剣などの木の製品ばかり。これじゃ武器と言えねえ、税金も払う義理はねえってもんさ。さあ、見て行きな、そして良い物を買ってくれ、今日は店仕舞いだ」


おっさんは表のドアを閉めてカーテンを引いた。

カパンッとカウンターの上天板を収めて通路へ案内する。

階段を下りるとそこは6畳くらいの広さがある部屋だった。

所せましと置かれている武器!武器!武器!


「良い物隠してんじゃねえか、お勧めはあるか?」


「あるぜ。アマダンタイトのロングソー」

「パスッ!」


「これがダメか。ではヒヒイロカネのデスサイズ」

「なんだか面白ろそうだがパスッ!」


「厳しいな。ミスリルで作った腕に隠す仕込みナイフ」

「ちょっと持たせてくれ」


ズシッッ


「パアアアッス!重い!」


「重い?ちょっと姉さん、俺の手をギュッと握ってくれ」


「ちゅっぱちゅっぱレロレロするなよ」


「するか!!」


変な事を思いだしてしまった。


俺は親父の手を握り思い切り握る!


「喰らえ!俺のパーフェクトナックル!」


「子供なみだな。全く握力がねえ。よく今まで生きてたな」


「うるせえ!俺には得て不得手があんだよ!」


「じゃあ女でも使えるってのは…………あッ!ペストルがあった!どうだ?チャクラムが発射できんだぜ!」


「これか?」


俺はスカートを捲り、太ももに装着していたペストルを抜いた。


「持ってんじゃねえか!これは製造数が三個だけなんだぜ!隣町の変人が作ったんだが、狙い通りに当たらないんで不人気なんだわ、もう一丁買わねえか?」


「断る!」


「つれねえな。じゃあコレはどうだ?杖なんだが」


それはどこぞのヤンキーが持っているような30cmくらいの鉄パイプだった。


「そんな武器いらね、俺は魔法が使えるんだ」


「へー魔法使いか。でもな、これは唯のパイプじゃねえんだぜ。これを握って魔力を込める。そして前に振ると先端から爆裂の魔法を仕込んだ爆導策が出て来るんだ。それが相手に絡まって……バンッ!」


「てめえ……」


「これも駄目か?」


「面白しれえもん持ってんじゃねえか!これだよコレ!」


「ちと弱点があってな。魔力が弱いと全く死なねえ、とんでも無くよええんだ」


「任せろ、俺の魔力は無尽蔵!この世界の誰よりも多い!なんせ使徒だからなブハハハハハ!」


「使徒かい、それは大きく出たな。それなら心配なかろう。金貨で50枚だがどうする?」


「物納でもいいか?」


「変なモノを受け付けねえぜ、ブルマとかも無しだ」


「初めての取引だ。1級ポーションを10本でどうだ?」


俺は胸のカップからポーションを出した。

胸を押えるカップがマジックバックになっている変態仕様だ。ボロンと全乳がこぼれ出て親父の目がギョッとなったが、出て来たポーションを見て驚いていた!



「おッ!おまッ!か、鑑定すっぞ!」


「確かめてみろや。1級の+だ。1本金貨10枚は堅いぞ」


鑑定をしたおっさんは信じられない顔で俺を見て来た。


「お前さんか。ハルロードで誰も買わない買い物をし、物納と言って超高級ポーションを売り捌く!男言葉の超絶美形変態姉御!」


「変態は余計だろ。向こうじゃクリムゾンって呼ばれてたぜ」


「姉御!贔屓にしたってや!」


「クリムゾンだってばっ」



俺は物納で支払い、ついでに杖を持つのが面倒と言って左足に取り付けるベルトをおまけで付けさせた。



「ふっ痺れるぜ」


右にペストル、左に爆導策。

これで男と寝なくても済むぞ!

やればやっただけ魔法の威力が上がるなんてエロゲーじゃねえんだぞ!


俺は男一人で結構。

未亡人で突き進むぜ!




 俺は店を出て密かに場所を探した。


男なら分かるだろ。

武器を持ったら試したくなる奴だ。

俺は広い町を彷徨った。

結局、北の山しか行く所が無く一人で向かう。


夕方の山は誰も採集をしていなかった。地下水が豊富で日当たりも良いこの場所は薬草の群生地として一番だった。


後ろをチラチラ見て誰も居ない事を確認する。


左太ももからサッと鉄パイプを抜き魔力を込める!


ピカピカとパイプが光り、ブーンブーンと妙に振動する!

これは魔力を込め過ぎか!!



「爆導策!当たって砕けろ!」



俺は鉄パイプをブンッ!と振った!

先っぽから直径1cm程度の玉が二つ出たと思ったら、一瞬でバスケットボールの大きさに変わり、表面にトゲトゲの鉄球が二つ、鎖につながれたまま回転して飛んで行く!


山の斜面に当たると、ズンッズドドドドドドドドドドと激しい大爆発が起こった!


「やべっ!ちと大きいって!」


俺の立っていた斜面ごと地滑りを起こし、辺り一帯がそのまま山の下まで滑り落ちていく!


「のああああああああああああああ!」


草の根っこが硬いのか、そのままの状態で一気に北門まで滑り落ちていく!


ギリギリで止まった地滑りは、北門周りに薬草の絨毯を広げていた。

そして音と振動にビックリした角ウサギは、慌てて他の所に逃げていく。



「ふふんっ作戦成功……」


足元でギンちゃんが穴を掘り始めていた…………

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