魔道都市ノルド領
第17話 ある女の子
第二章:魔道都市ノルド領
◆◆◆ 第17話 ある女の子 ◆◆◆
私はハルロードに住んでいた住民。
あ、名前は覚えてもらわなくても良いわ。
綺麗になろうとしている10歳の女の子って覚えてもらって下さい。
ある日突然町に非常事態の鐘が鳴り響いたわ。
「スタンピードだ!」
親達は何かしら騒ぎながらお金と僅かな服を握りしめ、私の手を引いて東門へと走り出した。
あっちに行くと安全らしいの。
元々余り裕福では無かったので、家に置いてあるモノは余り無かった。
それでも大事に持っていた靴はちゃんと履いて逃げたわ。
お祭り以上の人出で、町は大混乱!
コケないようにするだけで精一杯!
夜中だと言うのに門は開かれており、大勢の人達が真っ暗な中で夜道を抜けて行った。
その時、凄い真っ赤な光が町を照らし、少し間をおいて爆発するような音と振動が襲ってきたの。
「ドラゴンだ!」
「ドラゴンが攻撃してるぞ!」
ゆっくりになっていた足が更に速くなっていく。
必死になってお父さんの手を握り走ったわ。
1時間くらい経つと町の明りも見えなくなり、暗闇で町の人々と休憩をしていた。
そこに後ろから話が伝わってきた。
「町はもうダメらしい」
「西は全壊、北と南にも魔物が襲いかかっている」
「ドラゴンは冒険者達が倒した」
「城主はハルロードの住民全員に脱出の命令を下した」
「城主は城に留まり最後の一人になるまで魔物を防いでいる!」
まるでお伽噺のような話だった。
それは後から遅れてやって来たお城の近衛兵が住民を守ると言う事で隊列を組んで隣町のノルド領へ行くと聞かされ、本当の事だと言う事が分かった。
夜は固まって眠り、明るくなると魔物に襲われないように集団になって馬車で1週間も掛かる道をひたすら歩く。
近衛兵や冒険者の皆さんが魔物を狩り、そこで食べ物を分け与えてくれなかったら皆死んでいたと思う。
朝昼晩、朝昼版……それが5日目になった時、十数台の馬車が正面から来たわ。
それがノルド領からの物資や医療班の馬車だと言う事が分かり、助かったと思った。
ノルド領はハルロードよりも大きく、都会のような町だった。
西門からは商店街が広がり、南にはギルド関係と魔道具屋さん、金物屋さんが並び、東には宿屋や飲食店が並んでるの。
私達難民は、北にある住宅地の更に奥にあるスラム。更に奥の塀の外だった。
沢山の難民が住めれる土地が無いからって言ってた。
だけどここの領主は私達を見捨ててなかったわ。
新たに塀を作り始めたの。
そして北門も新しく作るんだって!
新し北門から外へ出ると、キロ山と言うのがあって、そこでは薬草が沢山生えてるの!
私はまだ10歳だけど、この国ではギルドに登録出来るのは15歳からで、18歳で大人って決まってるわ。
だけど、きゅうさいしょち?って言うので難民を中心に採取作業にのみ限ってFランクのギルド証を貰える事になったの!
確かに山などの外には時々魔物が出るわ。
少し怖いけど、働かない者は食うべからずと父が言っているから頑張って採集するの。
このキロ山は角が生えたウサギが出るわ。
あいつら足が速くてすばしっこいし、角で突進されたら大人だって死んじゃう可能性があるんだから。
周りを見ながら覚えた薬草を丁寧に取って行く。
少し根っこが硬いけど、これがお金になるのよ!
10束で銅貨2枚にしかならないけど、一日いると40本、銅貨8枚は堅いの。
それに…………
「いけ―!そこだ!負けるな!」
一人のお姉ちゃんが犬にウサギを捕まえるように命令している。時々やって来て周りのウサギをやっつけてくれるから好き。
でもね、山歩きに貴族さんみたいな高い踵の靴は合わないと思うの。
「ローリングクラッシャーアターック!」
犬の首から包丁がいっぱい出てきてグルグル回転しながらウサギの穴に入って行った。
あそこが巣穴なんだわ。
ほら、いっぱい咥えて出て来た。
と言う事は…………
「誰か―!燃える枝を持って来て―!お肉を分けてあげるから!」
キタッ!
私はいつも様子を見てたから分かるの!お裾分けの時間だ!
「もってまーす!」
密かに集めていた枝や木切れを持って行くわ。
「おっ!ヒナちゃん、今日も用意が良いね~ついでに石コロも集めようか?」
「私ヒナって名前じゃないんだって!」
「あははごめんごめんヒナちゃん!」
名前を覚える気が無いみたい。
他にも私と同じ位の子供が三人集まり石を集めて竈を作りだす。
その間にお姉さんはウサギの皮を剥ぎ、血抜きをして内臓を指先から出した魔法の火で燃やしていくわ。
ワンコが悲しそうな顔をするけど、「生モツはダメッ!」って言うと、シュンとした顔になってて可哀想。
モツってなんだろう?
枝に肉を挿して少し高い塩とコショウを振り掛け、木切れに魔法の火を付けて焼き出す。
一日一食になったから貰える時には貰っておきなさいってお母さんが言っていたからご馳走のお肉を頂く。
「はい!みんな一緒に、「「「「頂きます」」」」」
この呪文を言わないと食べたらダメだって。
生き物を殺して大切にその命を頂くから頂きますを言わないと食べさせてくれないの。
へーって感じだったけど、今は慣れたわ。
「ちゃんと良く噛むのよ」
そう言うとみんなも良く噛んで食べていく。
ワンコもにゃんにゃんにゃんって良く噛んで食べてるわ。
「ごほごほっ」
ボーっとしてたら喉にお肉が詰まった!
「ほらっ慌てて食べるから!これを飲みなさい」
お姉さんは私を抱っこしてくれて美味しいジュースを飲ませてくれたわ。
時々こうやって喉に詰まらせた子にジュースを飲ませてくれるの。美味しいし、元気が出て来るから好きぃ!
食べたお肉の骨を地面に穴を掘って埋めるの。変な魔物が出ないようにだって。
ワンコが更に悲しそうな顔をしているけど、お姉さんはワンコを持ち上げ、ワンコの顔をその凄くおっきいお胸で挟み目を隠してしまう。
お母さんもお胸はおっきいけど、比べ物にならないし、お姉さんの胸はいつも半分はみ出しちゃってるの。
どうやったらおっきくなるの?って一度聞いたら、
「好きな男に吸われたらおっきくなるわ」
って言われちゃった。
赤ちゃんでもないのに大人がおっぱいを吸う訳ないのにね!
見てなさい!目指せお姉さん!
「さあ、いつもの時間になったわよ~お風呂に入りたい人じゃんけんね!」
来た!来た来た来た~!
お風呂の時間よ!
ハルロードではたまに暖かいお風呂に入る事が出来たけど、ここではお金が無くて無理だった。
でも、こうしてじゃんけんで勝てば!
「やったわ!今日は私よ!」
久しぶりのお風呂よ~!
「じゃっ行こうか!」
私はお姉さんの細い手を握り山を下りていく。
もちろんワンコはお姉さんのお胸に挟まれたままよ。
そして旧北門の中にある大衆浴場へとやって来た。
ココはキロ山の下に流れるお湯があっていつもお湯が沸き出ているの。
ハルロードも同じだったわ。
お風呂はお金がいるんだけど、じゃんけんで勝った一人はお金を出してもらえるの。
「仕事終わりの温泉はいいよな~」
おんせんってなんだろう?
中は広くていつもたくさんのお湯が流れてるの!綺麗にしないとお嫁さんになれないからゴシゴシ洗うわ!
お姉さんも長い銀髪を頭の上に巻き上げ、チャチャッと洗って湯船の中に入り、一番手前でいつも何かを見ているの。
まるで怖い魔物を見る様な目付きでいつもブツブツ言ってる。
こんな所に出る訳ないのにね!
「あ、お姉さん、鼻血が出てる」
「ぐへ、ぐへへへ……おっとやべっ!やべっ!」
慌てて上を向いているお姉さん。お湯で逆上せたのかしら?
それにしては凄い美人の顔が崩れまくってる。お湯でふやけたみたい。
お風呂を上がると裸のままでいつものジュースをくれるの。
飲み方に正式な恰好があるらしくて、いつも同じように裸のままで腰に片腕を当て、足は肩幅に広げる。そして美味しいジュースを一気に飲み干す!
「「プハー」」
ココまでが正式の流れみたい。
身体をタオルで拭き拭きしたら、服を着替えるんだけど、いつもお姉さんんは一瞬で服を脱ぎ、一瞬で服に着替えているの。だけど下から見えるお姉さんのスカートの中はお尻が丸出し。
パンツだけ買えないのかしら?細い紐みたいなパンツしか見た事無いわ。
「じゃあ気を付けて帰るのよ」
「バイバイ!お姉さん!」
いつもより早い時間だけど、一度ギルドに寄って、薬草をお金に換えよう。
そしてお母さんの仕事を手伝うわ!
「ただいまー!お母さん!今日もお姉さんお風呂で鼻血出して、お尻丸出しだった!」
「あらあら、大きい女性でも下着が変えないのかしらね?いつも鼻血出してるけど大丈夫かしら?」
「いつもフガフガ言ってるから元気だと思うよ!」
「そお?なら良いけど」
ふふふ、私の目標はいつも綺麗なお姉さんなのよ。
大人に成る前に綺麗になれる秘訣を教えてもらうんだからッ!
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