第10話 バリア爆誕
◆◆◆ 第10話 バリア爆誕 ◆◆◆
1週間もすると、襲われた事など忘れていつものルーティンに入っていく。
時々新しい冒険者がやって来ては出て行く事もあるが、古参のお墨付きを貰っている俺のポーションはギルドも個人売買も売れ行き好調だった。
町を散策し、歩き食いをあちこちで行い、昼間っから勝手にカクテルを作りほろ酔いで歩く俺の人気も出ていた。
金払いも良く、見栄えのする俺は子爵の愛人と間違われている様子だった。
「イヤイヤ、そんなんじゃないから」
週一で1級2級ポーションを家賃代わりに出しているだけだし、どちらかと言うと
ことおじと呼んでもらっても結構。
俺はこの生活を好きで堪能していた。
町散策も落ち着いたので、今日は西側城壁に沿って流れる川で魚釣りでもしようと思っていた。
雑貨屋で買った竿を持ち、城壁から10m程に流れている小川に糸を垂らす。
此処には鯉に似たゴイと言う魚がいる事を聞いていた。魚類の魔物はいないと言う事で、下流の方では水浴びをしている若い子ども達も姿が見えていた。
前世では殆ど川魚を食べた事が無かったので、今からゴイを釣って食べるのを楽しみにしていた。
土の中からミミズを掘って取り、針刺してはいるが全く反応が無い。
子供の時はフナ釣りや漁港近くの岸壁でアジなんかを釣った事あるので、それなりに自信はあったのだ。
ただ、ゆっくりと待つのも出来るのだが、今日の俺はアクティブ派だった。ゴイが居そうな所を探して直接ポイントにミミズを投げ入れる。
反応がないなら別のポイントだ!
太陽も高くなり心も体も熱くなって来た俺は深紅のローブをバックの中に押し込み、夏らしい淡いブルーのワンピースを着せられていた。
いつものコルセットも熱さの為にその場で取り外しバックに押し込む。
腹が減っては戦が出来ぬと前もって買っておいた串肉を食いながら徐々に必死になっていく。
「お姉ちゃん頑張って!」
「おう!」
子供や年寄りが川辺で薬草採取をしながら応援をしてくる以外に誰もいない中、俺はパンツが見えるのも気にせずに真剣になった!
そこに魚が見えるのだ!
何故食いつかん!
「こうなったら力業だ。ギンちゃん!今からお前に指令を言う!下流から上に追いかけろ!初仕事だからと言って気を抜くなよ。失敗したらポーションは抜きだからな!」
ギンちゃんは( ̄ロ ̄lll)ガーンと言う顔になった後、ヤル気を出して下流に走り出す!
ザッパーンと川に飛び込み上流へと向かって吠えながら泳ぎだす!
「いいぞ!その調子だ。デケエのがうじゃうじゃ集まって来るぜ!」
いつの間にか子供や年寄りが対岸に集まっていた。
ここでやらなきゃ女が廃る!
俺は脇からミスリルナイフを取り出し、推定1mオーバーはあろうかと言う大ゴイ10数匹に向かって空を飛んだ!!
「とう! あッ」
コケッ!
足に草が絡まりこけた。
ゴロゴロと急斜面を転がり小川にドポンッ!
その拍子に持っていたナイフが運よく巨大ゴイの体に突き刺さった!
ビックリした巨大ゴイが上流に向かって泳ぎだす!
「おお!アレは小川の主!」
「伝説の川太郎じゃ!」
「お姉ちゃん頑張れー!」
170はある俺よりも遥かに大きい!
頭の後ろに刺さったナイフを必死に握るが、その傷をものともしない巨大ゴイが身体を震わせジャンプする!
「負けるかよ!」
対岸ではギャラリーが付いて来ており、町側ではギンちゃんが川から上がって吠えながら付いて来ていた。
ジャンプされる度に体力がゴリゴリ削られていくが、ヒールで即座に体力を回復する!
いつもよりヒールを使っているが、全く魔力が減った気がしない!
流石は転移者特権!こうなりゃ体力魔力勝負だ!
巨大ゴイは左右に体を揺らし御t機時ジャンプして俺を振り払おうとする!
だが、俺も負けては無い!体力や握力が無くなったら即座に『ヒール』!
岸からはギンちゃんが吠えながら応援してくれている!
対岸からもギャラリーが応援していた!
「おお!主が飛んだぞ!」
「凄まじいドッグファイトだ!」
「おねーちゃんお尻丸出しだよ!」
「わんわんわん!」
治水の為に
此処から田畑への水門を作り分岐している所だ!
まずいぞ、ここから先へと上られると、水深が深くなる!
息の出来ない俺の負けが確定しちまう!
それを分かってかギンちゃんが先回りをしているのが見えた!
何をするんだと思った瞬間!
ギンちゃんが口から火を吐いた!
ボウッ!
小さい火の玉が巨大ゴイの進路を塞ぎ横へと逸らされる。
「いいぞ!その調子だ!」
ボウッ! ボウッボウッボウッボウッ!
水流から離れ、石で作られた堰に誘導されていく!
しかし巨大ゴイも諦めていなかった!
石作りの堰を飛び越えようと一気に加速する!
俺はヒールを唱え続けてナイフを持つのでいっぱいだった!
「おお!最後の抵抗か!」
「凄いジャンプだ!」
「パンツが脱げたよ!」
ギンを見ると、大きく開けた口に光りの粒子が集まって行く!
「おい!止めろ!俺がいるんだぞ!」
そんな事も気にせず口に光を蓄えたギンは、白く輝く炎を筋を発射した!
「ガオオオオオン!」
「止めッ!ばっバリア!」
咄嗟に口から出た言葉。
微かにキランッと光る透明な壁にギンが発射した荷電粒子砲?がぶつかった!
「のあッ!」
透明な
ゴロゴロと一緒に転がり止まった隙に暴れる巨大ゴイの頭にドラゴンナイフをサクッっと刺した!
わんわんわんわんと吠えながら泳ぎこちら側へと向かって来るギンちゃんが到着すると、背中を噛んでブンブン振り回そうとして諦め、魚の上に乗って俺がやったと自慢顔だった。
「いや、止めは俺がやったし!」
「おおッ!こいつはデカい!」
「久しぶりに見る大物だ!」
「おねえちゃん全身スッケスケだよ」
良く見れば体長2mはある大物だった。
ギンも鼻をスピスピして尻尾をブンブン振っていた。
「なあ、お嬢さんこの大物を持って帰るのか?」
「ワシらは歳を取ってて助けてあげられんぞ」
「小さかったらボクたちも手伝えるんだけどね」
所詮年寄りと子供だけだ。
「良し!ここでお前らも食うか?」
「へ?いいので?」
「おこぼれで構いませんから」
「何でも手伝いするよ!裸のお姉ちゃん!」
「子供らは皆で乾いた木を集めてこい!爺さんたちはそこら辺から石を持って来て
「「「了解!」」」
一気に散らばって行く群衆!
俺はミスリルナイフで鱗を取り、腹を裂いて内臓を取り出し川へとポイッ!
「キャウウ」
「ダメだ、内臓は寄生虫が居るかもしれん」
嘆くギンちゃんに教え込み、頭を落とす頃にはギンは近寄って来た鳥を追いかけ始めていた。
骨がデカいので、身を三枚に下ろす。
その頃には爺さん方が石で竈を作り上げていた。
「香草もあったよ~」
「火打石は持っとる」
「塩は任せろ」
何故か皆、用意が良かった。
塩をまぶした切り身を枝で刺して火で炙る。その上に香草を散らばせ臭みを消して行く。
竈の前で胡坐を掻き、ついでに服も乾かす。
「風邪を引かないようにな」
「川の水は冷たかろう」
「お姉ちゃんの穿いていたパンツ発見したよ!バックも持って来た!」
何故かみんな俺の前に陣取っているが、多分気のせいだろう。
コラッギン!火に近づくと危ないだろ!
まだ焼けてないぞ!
ほどほどに焼けた魚を枝を握って食べる。
「うん!良い感じだ!みんなも食え!」
順番があるのか、焼けた魚を食べる者と、新し切り身を焼きながら俺の前で焼けるのをじっと待つ者達。
ギラギラした目が一点に集中するが、俺らは気にせずギンちゃんと魚を取り分け頬張る。
塩を沢山使ったのでお金をやろうとしたが、
「良いモノを見させて頂いたのでお金は要りませんよ。南に行けば海もありますから塩は特別高くも無いですしね」
と言われた。
うん、そうだろそうだろ。こんな大物滅多に見られないもんな。
そして食べれるなんて思ってもみなかったのだろう。
みんなウィンウィンで嬉しいばかりだ。
次は海へと行って見ようと思いながら、枝の上に掛けた濡れた小さいパンツが渇くのを待っていた。
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