第6話 クリムゾン

◆◆◆ 第6話 クリムゾン ◆◆◆



 大金をせしめた俺らは、まず南へと向かった。

南側には宿屋などが沢山あるとの事だが、それに伴い飲食店も多くあると聞いていたからだ。


「おっちゃん、串を4本下さい」

「あいよ!銅貨8枚だよ」

「釣りは取っときな」


銀貨を渡し頬を緩めるおっちゃんにウインクをし、貰った串を四本口に咥え、革袋を背負い屋台の後ろ側で道に座り込む。


「ほれ、ワンコ」


足元で待っていたワンコに串を外した何かしらの肉を食べさせる。

にゃんにゃんにゃんと俺を見ながら勢いよく食べる。それを見て俺も串肉を食べていった。


「んッんまいなコレ。何の肉だろ」


胡坐をかいて座り、その股間に革袋を起き、その上に番犬代わりのワンコが座っている。


「姉さん、それはワイルドボアの肉さ。ジューシーで良いだろ。この町は香辛料も安く手に入るし、最高の町さ。これからも贔屓にしてくれよ」


「おうッ 近くに来たらまた頼むわ」


肉汁を3級ポーションで流し、ワンコにも同じポーションを飲ませる。


それからコカトリス串、オーク串、ミノ肉串を食べつつ東へと向かう。

東は商業施設、所謂悪露んなお店が並んでいるのだった。


 先ずはデカい皮袋を小分けにしたいので、幾つか袋を買い、銀貨を50枚ずつ入れてバックに収める。

次に武器だ!

異世界と言ったら武器屋だろう!


剣が掘られた木の看板を見つけて中へと入る。



「冷やかしなら帰んな」



どこかの海賊のように眼帯をしたハゲ親父に速効で言われた。


「ナイフを探してる。此処に良いモノがあると聞いたんだが…………ないならしょうが無い、邪魔したな」


知らんけど


俺は店主に背中を見せた



「どこで聞いた」


俺の背中越しに言ってきやがった。

掛かった!


「ギルドで。デカい男に」


「名前は何だ」


「利害関係だけですれ違うだけの男に名前を聞くか?」


「ははッ違いねえ!ナイフならあるぜ、見て行きな」



ああ、めんどくせえ

何故すんなり見せてくれねえのかなぁ


剣やハルバードなどが並ぶ通路を通り抜けカウンターに向かって歩く。

店主はカウンターに下からナイフを色々出していた。



「姉さんが欲しいのはどういうのだ?これはアマダンタイトのナイフで大金貨2枚、こっちはダマスカス鋼のナイフで大金貨1枚、これはミスリルナイフで金貨5枚。今の所これしかねえが、時間さえくれればドラゴンの鱗で作ったナイフやワイバーンの牙のナイフも用意できるせ」


おいおい、超高級品じゃねえかよ!

マジで裏技だった訳?


「これで支払いできるか?」


俺はバックの中でポーションを作り出す……


「そこら辺のモノじゃ交換なんて……ぬッ、ポーションか?この色、この透明度!鑑定してもいいか!」


「確かめてみろ1級だ」


カウンター横にある機械に入れると直ぐに店主の顔が変わった。


「マジで1級じゃねえか!こりゃ高く売れるぜ!」


興奮している親父に言ってやった。



「通常だと1級ならば買値は金貨10枚ほどだが、初めての取引だ、今回は更に一本付ける!そしてボディーハーネスを付けてくれるのなら今だけの超限定で2級ポーションを10本プレゼント!これでミスリルナイフと交換!」


「売った!!」



俺は左脇に漬けるハーネスにミスリルナイフを収め立ち上がった。



「姉さん、名前は?」


「……深紅しんく…………クリムゾンとでも呼べ」


「また色々用意して待ってるぜ」


俺は深紅のローブをバサッとひるがえし、店を出た。



うん、俺ってカッコイイぜ。

ほぼタダも同然。

ミスリルって持ってみたかったんだよな。



その後、討伐に出ない俺は防具も要らないし、女の下着なども恥ずかしくて買えれない俺は、食い物やの梯子をして飲み食いを楽しんだ。

幾らでも食べる小さいワンコもそうだが、俺も腹は薄っすいのに幾らでも入る。

まさか、このデカい胸と尻に全部の栄養がいってるんじゃないだろうなと思い、フラフラ歩いていた。



西側へと戻った俺は、解体屋で騒いでいる人だかりを見つけた。



「ああ姉さん!買ったポーションのお陰で、奥まで行ってバンバン狩ってきましたよ!」


全身黒い皮のプロテクター姿のハードゲイの様な佇まいの男が声を掛けて来た。


表の台車の上にはデカい人型の角が生えたよく分からないモノから内臓を取り出されて解体されていた。


うげええグロッ


「やるじゃねえか、見直したぜ」


肘でゴンゴン突くが一向に堪えていない。返ってこっちの方が痛いくらいだ。


「みんなも今日は森の奥でバンバン狩りをしてたから、祝勝会しましょうぜ!」


「おお!早く来ないと飲み干すぜ!」


「直ぐ行きますから待っててくださいよ!」



俺はハードゲイを放置し、冒険者ギルドへ入って行く。


中は帰って来た野郎共で賑わっていた!



「おお!姉さんが来たぜ!」

「待ってました!」

「誰か椅子もってこい!」

「肉追加だ!」


ワイワイ騒がしくなる野郎共。

ああ、でも何かいいなあ。

女にはモテたいけど、気兼ねない男達と他愛もない話で盛り上がる。

前世では出来なかった事が此処で実現しようとしていた。



「手前らポーションは役に立ったか!?」

「「「「「おおおお!」」」」」


「死んだ奴はいねえか!?」

「「「「「おおおお!」」」」」


「腹は減ってるか!?」

「「「「「おおおお!」」」」」


「飲みたいか!?」

「「「「「おおおお!」」」」」


「今日の飲み代は俺が持つ!全て飲み尽くせ!」

「「「「「ぬおおおおおおおおお!」」」」」


地響きの様な声が響いていた。


「エールだ!エールを樽ごともってこい!」


一番奥に連れて行かれた俺は左手にワンコを抱えたまま飲み食いを始める。

こんな騒がしい中でも谷間に顔を挟みスヤスヤと寝ている。将来が楽しみだ。



「姉さん姉さん!俺、最後まで大事にポーション取ってましたよ!」


乾杯が終わると一人の皮ベルトを両肩からクロスに掛けているマッドな野郎が来た。


「全身傷だらけじゃねえか!使わないと死ぬぞ!今日はサービスだ!」


俺は4級ポーションを出して頭からぶっかけてやる!


「く~~姉さんの愛情が染みるぜ!」


「てめえ!抜け駆けしやがったな!姉さん俺も肘を擦りむいて痛いんすけど!」


「出せ出せ!こん畜生目が!上手い肉を狩って来たお礼だ!」


4級ポーションをぶっかける!


「お姉!俺も此処が腫れてるんすけど!」


全身フルプレートアーマーでヘルムを脱いでいた顔面バッテンの傷だらけの男が、股間の部分をカパッと開いて腫れていると言うモノを出して見せていた。


まるでナマコの様なモノを見せられ、俺は反射的に動いてしまった。


「汚い物を見せんじゃねえ!」



脇からミスリルナイフを取り出しド頭にサクッと刺した!



「あぴゃ!」


流石はミスリル、サクッと軽く4cmは刺さった……




刺さったじゃねえ!


ヌキッ! ピュー


やべッ!咄嗟に刺してしまった!

頭から血が噴き出し、フル君の目があっちこっちに飛んでる!

どうにかしないと!!



「おお! あっちでスライムが逆立ちしてる!!」


入口に向けて指を指すと一斉にみんなが出入口に顔を向けた!


(今だ!0級ポーション出ろ!)


どぼどぼどぼ

頭からポーションをぶっかけ、残った半分を強引に口に入れて鼻を摘まんだ!


目玉がクルンッと回転し、正常に戻った!

ついでにフル君の下のナマコがフル元気になっていた。


「スライムって!おおッ!本当にスライムが!どこから逃げやがった!捕まえるぞ!」

「スライムって逆立ちするんすね!」

「馬鹿!どこから見ても上下左右あるもんか!」

「酔っぱらった姫……可愛いっす」

「おいてめえ!ゴーヤを出すな!汚れるだろ!」

「うあっ!本当にヘチマを出してやがる!」

「縛れ!縛れ!拘束するぞ!」


「違うんだ!あ、出したのは本当だけど、あぴゃってなってドボッとなったてゴクンとしたらこんなに!!」


「ふん縛れ!狸縛りだ!」


こうして完全犯罪を犯した俺は、焼き肉を頬張るのであった。




「では、そろそろ俺は帰るからな。みんな楽しめよ」


「姉さんゴチになります!」

「明日もポーションヨロです!」


夕闇迫る中、俺は寝たままのワンコを抱っこし、深紅のローブを翻して帰るのであった。





次の日、カウンターで飲み代を金貨50枚請求され、殆どの儲けが無くなっていた事に嘆いた。



「手前ら!飲みすぎだああああ!」


「そりゃねえぜ姉さん!飲み放題と来れば飲むしかないでしょ!」



一部から文句が出た事は言うまでも無いが、その分ポーションを売りさばき事無きを得たのであった。



◇◇あとがき◇◇

お読み頂きありがとうございます。

明日より1日1話の投稿になります。

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