第4話 初商業ギルドへ

◆◆◆ 第4話 初商業ギルドへ ◆◆◆



 顔を舐られ目が覚めた。


「ふあぁぁぁおはよワンコ」


小さいガラスの明かり窓からは朝日が差し込み、天蓋付きのベッドには、淡い明りが差し込んでいた。

薄いシルクのような掛け毛布を剥ぐと、エグイくらいに食い込んだ下着が見えた。


「異世界でもエロは健在と。朝になると元気なモノがないっていうのも何か変な気分だな」


パンパンに溜まっていたオシッコをしようと部屋を歩き回り、ドアの先にある洗面所から中に入れるドアを開けると石作りの豪華なボットン便所を発見した。


「ウォシュレットが無いのは分かっていたが、汲み取り式とはな」


慣れないエロ下着の片方の紐を外し、そのトイレで座り込む。

勢い良く出た所で中に何か蠢くモノが見えた。


「すっスライム?!」


薄い青色の丸っこいモノが一匹明かり窓から動きまわるのが見えた。

だが、出る物は止まらず、そのままスライムに当たりふるふると震えていた。


「アレは喜んでいるのか?異世界じゃトイレの浄化を兼ねている所もあるって書いてあったから、そうなんだろ」


緊張のせいかンコは出ずにおしっこだけをして、男みたいにしようと思い、考えた末に腰を前後に振ってみた。


「ふんっ ふんっ えいっ やあっ とうッ!」


デカいケツがぶるんぶるんと震え、邪魔な肉だと思ったら、横に幾つかのタオルと水らしき物が入った壺が置いてあった。



「洗って拭けと?」


どういう構造になっているか分からない箇所に濡らした手で洗い、タオルで拭く。

股間にかにも無い妙な感覚を覚えながらも習った様に下着の紐を結ぶのであった。


後ろを振り向くと、ワンコが俺の排泄を見ていた。



「お前もするか?」


クンクンと匂いを嗅ぎ、片足を上げて見毎にオシッコをするワンコ。


「おーナイスッ!上手だぞ!お前オスだったんだな」


トイレを終わったワンコの頭をグシグシ撫でてやる。



「おはようございます!」


顔を洗って部屋へと出て来ると、昨日のピナとは違う可愛い子が待っていた。


「ああ、おはよ」


「専属メイドのアンです。宜しくお願いします!」


短いフリルのメイド服を着た女の子だった。


「昨日のピナは?」


「ピナは別の仕事を行ってます。一日交代で付きますのでお願いします」


「そうだったんだ。じゃあ今日は宜しくなアン」


「はい!ではお食事をご用意してもよろしいですか?」


「うん、頼むよ」


直ぐにドアからワゴンで運ばれた朝食は、パンにスープ、ベーコンと卵を焼いた物にミカンのような果物だった。


異世界の食事は色々アニメや漫画で描いてあるが、此処の食事は質素ながらも味は美味しい。

塩も胡椒も付いており、何が有って、何が無いのかも一切分からなかった。


食後のミルクティーを飲みながらアンに聞いてみた。



「これから商業ギルドと冒険者ギルドへ行こうと思うんだが」


「畏まりました。ギルドは基本一日中開いておりますので、問題ないかと。執事のドミニクからは馬車を出しなさいと聞いております」


「子爵は?」


「朝早くから出て行きましたが、昨日の事で夕方までは帰らないと聞いています」


「そっかー、襲撃の現場に行くんだろうな。じゃあ俺はギルドに行くか」


「では外出着を用意致します」




で、これが外出着?朝御飯の時に着せられた昨日のワンピースでは無く、昨日着たコルセットの上に胸元の開いた白いシャツ、そして下は黒いタイトなミニスカだった。


「少し目立たないか?ローブみたいに羽織る物ないの?」


すると直ぐにローブを持って来たのだが……



「ローブはこれしかないのですが。一応、夏用なのですが、暑いかと思います」


それでいいやと思い用意させると、そのローブは深紅しんく色のローブだった。

スゲー目立つんですけど。

コルセットの細さは合っているんだが、シャツもスカートもパツンパツンではみ出し、尻も破けそうだ。


「ちなみにこの服は?」


「旦那様が亡き奥様にプレゼントしようと思っていた服でございます。新品ですので大丈夫ですよ」



いや、新品はいいんだけど、サイズが小さいんだな。


それしか服が無いとの事で、俺は肩さげのバックを用意してもらい、馬車を用意する間、メイドから日焼け止めと化粧をされてしまう。


「お、終わりましたが、お、お、お美しいです」


小ぶりな顔が入る程度の鏡を向けられ、その鏡に映っている人を見てみた。

そこには、絶世の美女が映っていた。


「ふぁ!これが俺?」


確か、美形でとお願いしたが、こんな美人は見た事が無かった。

嬉しいと言うよりもやりすぎだと言う感情が盛り上がって来る!


「あのヤロー寄りによって男じゃなく絶世の美女にしやがって!目立ちすぎるだろ!」


怒った顔も綺麗だった。


ファンデーションの様な薄い下地に目元のアイラインと唇を塗っただけの化粧であったが、元の素材が良いのかキラキラとしたオーラが俺でも分かった。ラメとか入って無いのかと確認までしたのでこれは確かだった。


腰までの銀髪ストレートにどこまでも見通すようなブルーの目。

胸はデデンッに腰は子供のようにくびれ、ケツはドッカ―ンっとデカい。

しかも力は皆無と来たもんだ。

まあ、町の中はスラムに行かなければ安全だろう。



 7cmはあるハイヒールを履かされ、用意された馬車に乗る。


ヤバイ、コルセットを付けているせいか、意外に暑い。ローブを前のボタンで締めていたが、デカい胸が入らない為、いっそのこと全部開いてしまう。

町の中央にある邸宅から西へと向かう中、服をパタパタとして風を送りつつ、バックに4級ポーションと3級ポーションを15本づつ出していくとギルドは直ぐだった。



「此処が商業ギルドか」


高い位置の馬車から下り、目の前にある三階建てのレンガ作りのような建物を見上げる。



中に入ると待合室兼カウンターが並んでおり、朝だからか、待っている人も多く見かけられた。


そして俺が入ると一斉に視線が俺に集中する!


「いらっしゃいませ、此処は初めてですよね……何か御用でございますか?」


一番手前にいた若い職員が声を掛けてきて、上から下まで舐めるように見て来た。


「えっと、ポーションの買い取りをお願いしたいんだけど」


「ギルド会員証はお持ちです?」


「いや、持ってないんだけど」


「では新規登録致しますか?」


「その事を詳しく教えて下さい」



 俺は椅子を進められ、この職員に商業ギルドの事を詳しく聞いた。


 まず第一に、商業に関する事に関して、この商業ギルドを介さないとギルド内では誰でも売り買いは出来ない。


 そして商業ギルド証があれば、どの町でも無料で出入りが出来る。ちなみにこのハルロードの町は入場料が銀貨5枚、感覚的に5千円掛かる。それだけ儲けが大きい町だと言う事だ。


 そして商業ギルドにはランクがあり、A,B,C,Dランクと分けられており、Dランクは初心者でこの町でしか売り買いが出来ず、Cランクは中堅として他の町でも売り買いが出来る代わりに年会費が金貨10枚いる、Bランクはベテランとして王都での売り買いができ、年会費は大金貨10枚、約100万円掛かる。最後にAランクは、別の国でも売り買いが行え、その為には商業ギルドが色々な手助けを行うとの事で、年会費は白金貨1枚、約一千万円掛かるとの事だった。

だが、ランクが一つ上がると買う物が5%づつ下がって行くらしい。つまり大量に買ってランクが上がればお安くなる計算だ。


 次に商業ギルドでしか販売できない物も決まっている。

例えば薬草関連は独占だった。冒険者ギルドでは薬草関連の注文を冒険者に出すらしいが、その薬草は町の商業ギルドを持っている商店や商業ギルド本体が出しているらしい。冒険者ギルドでもポーションを売り買い出来るが、その材料となる薬草はココでしか売っていないとの事だった。



「例えばこのポーションを売るとしたら幾らになります?」


「鑑定をしてもよろしいですか?」


「どうぞ、4級だと思いますが」


一本出した4級ポーションを出すと、職員は裏側へと持って行った。

直ぐに戻って来るとポーションをテーブルに置いて鑑定結果を言って来る。


「確かに4級ポーションでした。鑑定では4級+と出ましたので一本銅貨5枚です」


銅貨……一本500円って所か。


「ちなみにずっとDランクのままでいられるんですか?」


「それも出来ますが、この町でしか売り買いはできませんし、割引もありませんよ?」


「でも別の町で商業ギルドに登録すれば売り買いが出来るでしょ」


「その際は初めての登録と同じ銀貨5枚が費用として掛かりますけど」



うーん、取り敢えず登録だけしておくか。僅か5千円だが何となく大袈裟に言うとなると、この世界の平均給料は安いのか?

まあ当面はこの町で稼ぐ事を考えていたし、売った後で冒険者ギルドにも行って聞いてみよう。


「それじゃあ、登録をお願いします。登録料は売ったポーションから引けますよね」


「それは大丈夫です。先ずは売れるポーションを出してください」


俺はバックに入っている4級15本と3級15本を並べた。


「え?こんなに売って頂けるのですね、それでは鑑定を致します」


鑑定の機械を持って来た職員は一本一本鑑定していく。


「4級が一本銅貨5枚で15本で銅貨75枚。3級が一本銀貨1枚で15本で銀貨15枚。全てで銀貨22枚に銅貨5枚ですが、登録料を差し引きますので銀貨17枚に銅貨5枚で宜しいですか?」


「じゃあそれでお願いします」


「では、登録の鑑定をお願いします」


「え?俺も鑑定するんですか?」


「身元が分からない人と商売は出来ませんんから。名前と年齢、職業だけしか分からないですよ。例え貴女がどこかのお姫様でも分かりませんからご安心を」


職員は石板の様な物を出してきた。


「この上に手を当てて下さい。鑑定します」



うーん!これこそ異世界!


「出ましたね、名前はハル様、御年は17歳、職業は薬師で間違いないですか?」


おおッ!俺って17歳なんだ!

しかも名前が初めて名乗った通りにハルだけになってる!


「間違いないです」


「ではギルド証をお作りします」


鉄のプレートを石板に入れると何やら印字している。

出て来たプレートには商業ギルド発行の証明とDランクのデカい文字の下に名前と職業が掛かれていた。


「どれも+評価でしたのと初めての登録と言う事でこのお金入れをプレゼントします」


認識タグの様な鉄のプレートと革の巾着袋を出された。



「ギルド証にお金を入金する事も出来ますが?」


「少ないのでこのまま持って帰ります。ところで、興味で聞きたいんですが、2級から上のポーションは幾らの買い取りですか?」


「向上心があるのは良い事ですよ。2級は+評価で金貨1枚、1級ともなれば+評価で大金貨1枚は堅いですね」


「じゃあ0級では?」


「0級ですか?お伽噺の世界ですが、出てくれば白金貨を出しても買えないでしょうね。この国での0級ポーションはギルドでの売り買いの記録はございませんよ。是非0級ポーションが作れるように目指して下さいね!」



やべえ、何度か0級ポーションを簡単に出してしまった。

だから昨夜は子爵と執事があんなに驚いていたんだ。

出すとすれば2級までか?


「薬草などのお買い求めはされますか?」


「まだ余裕があるので、今回は結構」


「ではまたのご利用をお願いします!」



商売人のような人が出入りをする中、膝の上で爆睡していたワンコを寝たまま抱きかかえ外へと出た。



「おい、水飲むか?」


声を掛けるとワンコが目を覚ましたので、ギルドの横に行き、隠れて1級ポーションを出して飲ませる。

まだ子犬だからか、良く寝るわ。



「さあ、今度は冒険者ギルドか。テンプレの様にならないと良いが……」


ポーションを飲み終わったワンコを抱きかかえ、俺は真向いの冒険者ギルドへと向かった。

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