第3話 子爵邸宅
◆◆◆ 第3話 子爵邸宅 ◆◆◆
「開門!開門だ!」
大きな声で目が覚めた。
その声の持ち主はシュタイナー子爵であり、馬車の前の御者を行っている為に当然ながら馬車の中にはおらず、直ぐ前の席から声を張り上げているのであった。
その大きな声で俺とワンコが目を覚まし、小さい魔dおから外を見ると、3mはあるような城壁が張り巡らされ、出入り口の城壁に付いた棟にいる者を呼んでいる。
「りょッ!領主様!大丈夫ですか!!」
御者席にいる子爵に集まって来る皮鎧の集団!
「大丈夫だ!既に治療はしてある!」
心配しているような兵士を通り抜け、格子状の柵が徐々に上にあがる城門と、そして両開きのデカい門が開いて中へと進んで行く。
子爵は御者席を降り、俺のいる馬車内のドアを開けた。
「ハル殿、此処が私の治める領地、ハルロードの町です」
既に夜になっているが、城門周りは帰ってこない子爵を心配してか、50名程の兵士が集まっていた。
「よっこらせっと!」
ワンコを抱きかかえ、少し高い位置にある座席から飛び降りる!
ワンピースの様な貫頭衣がフワッとなるが、夜だし見えないだろ。
「此処までありがとうございました」
「何をおっしゃる、命の恩人ですので、このまま我が屋敷へ。おい!新しい馬車を回せ!」
後ろを見ると兵士達は俺の後ろに集まり、少し前かがみになっていた。
お前ら何してんだ?
新しい馬車が直ぐに用意され、高い位置にある座席に乗り込む。ワンコを抱っこしたままだったので、子爵がお尻を押してくれた。
が、その顔を乗ってから見ると、ニヤケて崩れていた。
こいつ、ワザとケツを押したな?!
まあ、いい。毟れるだけ毟ってやる。
「出せ!」
席の前にある御者との連絡小窓を開けて言い放つ子爵。
ワンコが鼻をスピスピさせてキョロキョロしだしたので、抱きかかえて顔を胸で挟んでやる。
「ウキュ」
一言鳴いて大人しくなった。
ワンコ捕獲機として有効を確認した。
だが、鼻の下を伸ばして見ているおっさ……子爵がウザかった。
子爵の邸宅は流石にデカかった。
この領地を治める統治者と言う事もあり、門兵に門を開けさせ中へと馬車が入って行く。
「大丈夫でございますか?!」
60近いブラックスーツの様な物を来た執事らしき男が待っていた。
「ドミニク、野党に待ち伏せをされた。不意打ちで馬をやられて馬車が転倒した。私もやられたが、護衛騎士の働きで互角の戦いだったが、守り神のシルバーウルフがやられた。そして多分この子がその子供だ」
そして俺の抱きかかえているワンコを見て来た。
「え?シルバーウルフ?狼なの?」
「昔からのこの辺りに住む土場の守り神の野獣なのだが、人間には懐かない代わりに時々助けてくれる存在でね」
そのワンコと思っていた狼を見ると、顔を挟まれたままスピスピと息をしているが、全身の力を抜きダランとぶら下っていた。
「して、その女性の御方は?」
「あ、私はハルと言います。その……戦闘になった現場に後から居合わせて。ポーションを持っていたものですから。子爵様の御厚意でこちらに。」
執事は俺の言う事を聞くと、ギロッと子爵を見る!
「そうだ、丸腰で力も無い。私の顔も名前も知らない。それに何も無い所からポーションを出せれる。間者で無い事は確かだ」
こいつ、見てやがったな。
子爵は俺の事をチラッと見て来た。
それもそうか、あんな所にポツッと女が一人いる。
それだけで怪しい人物か。
「それは確かですか!薬師の作るポーションは薬草から抽出して独自の配合や煮詰める作業などを行い、分離してて来たモノと聞きますが!それを何も無い所から出すなどと!」
二人の目が俺に集まる。
「見てたのかよ。今出てきました見たいな顔をしといて」
「これでも戦場を駆け巡った事もある貴族なのでな。もちろん初めから終わりまでチャンと思えておる」
「このド変態が!」
イラッとした俺は、反射的に隣のデカい子爵の足に蹴りを入れた!
ゴッ!
「フォオオオオオオ!骨ッ!骨が折れるううううううう!」
足の骨が折れる寸前だった!
まるで大木に蹴りを入れたような感覚に、右足を抱えてその辺りを転げ回った!
「ハル殿!何か見えてはいけないモノがチラチラと!」
「むううッ!」
それでもしばらく痛みを堪える為に石畳の上を転がっていた。
「ここじゃあれ何で中で話そうか」
「それは私が言う事だと思うが」
「いえいえ、あの様子を見ても間者ではございますまい。どうぞ中へ」
足を引きずりながら裸足のままでペタペタと中へと入って行く。
ドアの中には左右に1組のメイドが待っており、お帰りなさいませと無表情で迎えてくれた。
「メイド喫茶かッ!」
小声で突っ込む。
ロビーを抜け、隣の応接室へと連れて行かれる。
フカフカなソファーにドカッと座り、すぐさま紅茶が出される。
俺はコーヒー派なのだが、異世界と言うと紅茶が定番。世界で一番飲まれているのも紅茶というので、此処は我慢する。
「で、ハルさん。何故あそこに居て、どうして手からポーションが出せれるのか教えてもらえるかな」
子爵のシュタイナーが前のめりになって俺に言ってきた。
変な事を言うと絞め殺すぞと言うようなデカい顔を近づけ、男臭い息を吐きつけてきた。
「では、私の保護と平安で安全な住む家を提供してくれるのなら話しましょう」
「それは話の内容に依る」
「むぅ」
ここはウンと言う所じゃないのか?俺は転移者だぞ。
「見た所、持ち物はその服しか持っていない様子。力は……さっきの事を見て分かるように全く無い。正直、無手であれば子供にも劣る位であるが、ポーションに関しては一切不明。それに馬に何やら回復の魔法も使っておったな。これだけは約束しよう、悪いようにはせぬ。話してみないか?」
「全て見られてたって訳ね。良いだろう。良く聞け!我こそは神が遣わした使徒なる!」
「…………」
「…………」
アレ?受けない?
これは異世界全土で使えると思ったんだが……
「はい、生まれたのは日本です」
「おお!二ホンときたか!」
「ええ!知ってます?!」
「知らん。続けろ」
このクソ親父が!
「ある日ある時、仕事終わりに小僧から蹴られて俺は死にました。そこで神様に出会い、
抱っこしていたワンコの頬をビローンと伸ばして見せた。
「そう言う事だったのか。昔、この国に異世界から勇者が来たと言う話があったが、それと同じか」
「ええ、そうでしょう、そうなのでしょう。辛かったですね」
執事のドミニクはシクシクと泣きだした。
いや、そんなに辛くは無かったが。むしろ、神様に変な所に転移させられて、一気に死ぬ方が辛かったが!
この辺は全部言うと変な感じになる為、極秘情報として死ぬまで持って行くつもりだ。
変な所で見ている気がするし…………
「で、俺の保護は?」
ワンコの口をパクパクさせて腹話術のように聞いてみた。
当の本人は、頬を何か柔らかいモノに挟まれくたぁとしている。
「ポーションを無料でと言いたい所だが、何級のポーションが幾つ出せれるのだ?」
「まずはそれですよね。取り敢えず、0~4級までは出せれます」
心の中でそれぞれセットでと唱えると、一本ずつのポーションが手の中に出て来た。
それをテーブルの上に並べる。
「緑色が4級で少し青みが掛かった透き通っているのが0級です」
「「0級だと!」」
随分驚いた表情で恐る恐る0級のポーションを握って見ていた。
「それが何か?」
「本当に異世界から来たのか。この世界での0級ポーションはお伽噺の中でしか出てこない代物よ。別名エリクサーと言って寿命以外は何でも治るという伝説の代物よ」
「へーそうなんですね。子爵と馬にも使いましたよ見事な回復でした」
「何と!!私の身体に伝説の液がああ!」
「くわばわくわばら、ナンマイダ―」
子爵は痙攣し、執事は両手を合わせて拝みだした。
「部屋を貸して頂けるのなら、当座の生活費で収めてください。多分幾らでも出せれますので」
取り敢えず10セット出してというと手の先にあるテーブルに0から4級までの5本が10セット出て来た。
「直ぐに部屋を用意させる!ハル!俺と結婚しよう!」
「は?断る!」
何言ってんだおっさん。
俺がおっさんと結婚する訳ないだろ!
俺はカワイ子ちゃんや美人さんとハーレムを作る為にスローライフを送るのだ!!
「何故だ!子爵だぞ!領地持ちだぞ!」
「おっさんは却下。男に興味ないし。」
「ああッもったいないもったいない……」
執事のドミニクが嘆いていた。
取り敢えず部屋を貸して頂き、そこで生活する確約を貰った。
「いつかワシの女に…………」
などと言う大きな独り言が聞こえたが興味は無い。
いつまでもこの恰好でと思っていたら、お客用のお風呂があると言う事で、執事のドミニクさんから案内された。
「このハルロード領は、西に大森林、更に奥にはロクナ山脈が聳え立ち、湧き水が豊富にあります。大森林から魔物が湧き出るのが少し厄介ですが、その討伐した魔物の魔石や部位などで領地は潤っていますので、居なくなっても困るのですが、ハル殿のポーションで、少しでも被害を押えたらと思っております」
「へー魔物がいるんだね。怖いから近寄らないけど、明日にでもポーションを売りに行こうと思うよ」
「それは良い事です。商業ギルドか、冒険者ギルドにでも売り込めば宜しいかと。明日、お送り致しますので、今日はお湯に浸かって身体を癒して下さい」
6畳程の脱衣所にはいると、いつの間にかドミニクさんの後ろから一人の若いメイドが現れた。
「では、ごゆるりと……」
「ハルさま、専属でお手伝い致しますピナでございます。さあお召し物を」
俺の前で一礼して自己紹介すると、貫頭衣の服を下から捲り上げて脱がそうとする。
ああ、流石は子爵家。
風呂の中までメイドが手伝いをするんだ。漫画じゃ一人で洗わせて!ってなる所だが、これは良い機会だ。貴族気分を味わってみよう。
ちと若すぎるので、女と言うよりか女の子って感じだな。俺の趣味じゃ無いが、この際しょうがないだろう。
「んッ! ふんっ! んしょっ えいっ ふぁっ! それっ!」
万歳状態の前でピナが服を顔まで上げたり下ろしたりしている。その度にデカい胸がバルンッ!スッ、バルンッ!スッ、バルンッ!スッ、バルンッ!スッ、っと出たり隠れたりしていた。
「あの……ピナ。何を…………」
「もう少しですッもうちょっと辛抱してください!んッ!よッ!あんッ!それッ!」
ああ、身長が足りないんだ。
ドワーフを呼ばれた前世よりか遥かに背が高くなっている。前が159cmだったが、今は何となく170はありそうな身長で、そしてこの目の前にいるピナはどう見ても子供サイズ。130cm位しかないんじゃないか?
従って万歳している俺の腕より上に服を脱がせられる訳が無かった。
「ピナ……自分で脱ぐから」
苦労している脱衣を止めさせ自分でスッと脱いだ。
「ううッ不徳の致す所でありますぅ。いっぱい
御飯を食べて直ぐにでも背を伸ばしますので」
下を向いてショボン(´・ω・`)としていた。
「イヤイヤ、ご飯を食べても直ぐには大きくならないから」
「ハルさまもいっぱい食べてデデンッと大きくなったんじゃないのですか?」
どう見てもピナの見ている視線の先は、俺のデカい胸だった。
そしてピナは自分のツルペタを手で押さえている。
「あんまり大きくても邪魔だと思うんだけど……」
「いいえ、素晴らしい御身体です。もう、神の領域だと。そんなハルさまのように私もなりたいですぅ」
「そ、そうだな。良く食べて、良く働いて、良く寝ると、良いんじゃないかな?」
「私頑張ります!さあ、いざお風呂へ行きますです!」
バサッと自分の少し大きなメイド服を一気に脱ぎ、俺の手を取り中へと入って行く。
木で出来たサウナ室のようなドアを開けるとそこは湯気が立ち込める洗い場だった。
「おお~」
「このハルロード領の自慢でございます。地下からこんこんと湧き出る暖かいお湯が傷や打ち身を癒すと話題でございます。さあ、こちらへ」
言っている通りに暖かいお湯が滾々と石作りの浴槽に流れ出ていた。全部で10畳程はあるか。広い洗い場に二人は並んで足を延ばせれる浴槽。
そこはまるで温泉のようだった。
「さささ、こちらにお掛けになって下さい。
「ここね…………って、この椅子?」
「そうですが。何か?」
確かに椅子はあった。
木で作られた職人が作ったような背もたれの無い椅子。座面は皮が張られているのか、少しふっくらしているが、その座面が問題だった。
「座面に穴が……それも結構大き目の」
これは便座か?それとも何か怪しい気も……
「穴が無いと洗えないです。何も変ではないですよ」
マジか!
ソコも洗われるのか!
半ば強引に座らせられ、お湯の温度を確かめさせられる。
ああ、コレ良いヤツだ。少し
「それでは洗っていきますので、リラックスしててください」
ピナが高級品の海綿の様な物を持ち、液体せっけんの様な物を付け泡立てながら首元から洗っていく。
滑るような肌触りに滑らかな石鹸の泡。それに良い香り。暖かく開放的な洗い場の先には高価なのだろうか少し小さめのガラス窓があり、広い庭でも見えるようになっているんだろう、夜で見えないが。
腕から脇、胸を持ち上げられて隠れた所からヘソを念入りに洗っていく。太ももから膝、ふくらはぎから足先まで洗うと、いきなりグイっと足を広げさせられる!
ムッチャ柔らかい関節は、留まる事を知らずに180度開脚させられた。
後ろへ回ったピナは、一番汚い所を指でクリクリと洗い出す!
「あッちょっとそこはッ!」
「メイドは物と同じです。気になさらずお任せ下さい」
どこかの皺の一つ一つまで洗われると、その近くも泡立てた指で洗っていく!
「あッ そこッ」
「母さまにココは綺麗に洗いなさいと言われましたので念入りに致します!」
180度開脚のガニ股で座っている椅子の下からクリクリサワサワツルツルピロピロと洗われる!
「ちょッ そこッ あッ なにッ だめッ あッ ああ!」
ふースッキリした(何がだ!)
泡をお湯で流され湯船へと入る。そこはすごく浅く、完全に寝る体勢で入る湯船だった。頭を縁に合わせて乗せられると、枕代わりのタオルを敷いて髪の毛を別の台の上に乗せられる。
「ああ、寝たままで髪を洗うのね」
「女性は髪が命ですので。長い人も多いですし、このやり方が負担が掛からず良いのです。香油はどうされますか?」
「何処も行かないから今回は要らないかな~」
気持ち良く地肌をマッサージされながら髪を洗い流される。気持ち良くお湯に浸かっていると、トコトコと付いて来ていたワンコも洗われていた。
「むふふ、ワンコ可愛いですぅ」
ワンコもハアハア言って喜んでいるみたいだった。
ワンコも洗面器の中でお湯に軽く浸かり、一緒にお風呂から上がった。
タオルで身体を拭き上げ、魔道具らしい物で髪を乾かす。
「これが下着になります」
「何、この紐とレースの小さいのは……」
「ご主人様の御趣味で買われていた物です。亡き奥様へのプレゼントで買われていた物と聞いています。新品ですのでご安心下さい」
奥さんって亡くなってたんだ。
それは大変だったな。
だが!これはなんだ!
何処も彼処も紐、紐、紐!
生地なんて両手で三角を作ったよりも小さいレース生地しかない!
「此処をこうやって、腰の上で紐を結び……あ、ハルさまも覚えて下さい。外で用をたした時は自分でしないといけませんから」
そのパンツは横も後ろも紐だった。腰の部分で紐を結び、鋭角な生地が真下から前の少しだけを隠している。いや、レースだから隠していないが、これは俗に言う紐パンか?
ひょっとしてこの世界にはゴム製品はないのか?
そしてその真っ白な紐パンの次に腰を締め付けるコルセットが来た。
「元々細いので余り意味が無いかもしれませんね。羨ましいですぅ」
革で出来た赤いコルセットを回し、紐を交互に掛けていく。
少し締め付けられているが、苦しい事は無かった。裏地に柔らかい生地を貼られており、更には胸を持ち上げる三角のカップの様な物も付いていたが、俺の胸は規格外なのか、殆どがはみ出ていた。
先端が隠れているのでオッケーとする。
俺は独身かと聞かれ、もちろんと答えると、独身はスカートの丈が短くするのが普通と言われ、白いミニスカワンピースを着せられた。
貫頭衣と余り変わらない丈なので今更何も言わない。
だが、サンダルの様な物を履かされたが、5cmぐらいの高さが慣れずに歩きずらかった。
寝室らしき広い部屋に連れて行かれ、丸いテーブルの席に着くと、暖かいスープとパンに肉を焼いた物が出て来た。
異世界での初めての食事を堪能した。
お休みになられて下さいと言われ、自分でコルセットを外し、パンツ一丁になり毛布の中へ潜っていく。ワンコもご飯を食べて良い感じになっていたのか、俺の隣に来て直ぐに眠ってしまった。
明日から頑張ろうと思いつつアルコールランプを消して俺も眠りに付いたのだった。
◇◇あとがき◇◇
お読みいただきありがとうございます。
明日より1日1話の投稿となりますので、よろしくお願いいたします。
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