----第八話----
あのあと、蒼井さんに毛布をかけてあげて、タクシー呼んで芋ジャーのまま帰った。
芋ジャーはクリーニングに出して、綺麗にした。
その芋ジャーと大量の書類を持って、蒼井さんのデスクへと向かう。
「……宮原さん、クリーニングなんていらないのに……で、この書類は?」
「ごめんね、急ぎなの……」
「………………今日も私、残業ですね」
丸眼鏡の奥からじとっと私を見る蒼井さん。
あー、わかってみると、すっごく美人さんなんだよなー。
その眉毛、私が整えてあげたい。
いい美容室も紹介したげたい。
「手伝うからさ。今日、終わったらごはん食べに行かない?」
「ごはん?」
「うん、いろいろ話したいことがあるの。いっぱい話したいことがあるの。で、お友達になりたいの」
「お友達……」
「お友達から始めたいの」
ちらっと私を見上げ「あはは、なにそれ」と笑う蒼井さん。
そのほっぺたが少し赤らんでいるような……。
いける?
「私、食いしん坊ですよ」
「おいしいイタリアンを予約してあるの、おごりだからたくさん食べて飲んでいいよ、こないだの……いえ、今までのお礼も兼ねてあるから、いくらでも高いの飲み食いしていい」
ボーナス入ったばかりだしね。全部使っちゃってもいいや。
蒼井さんはむむう、と唇をへの字にするけど、表情はあきらかにうれしそう。
「わかりました、じゃあ仕事は急いで終わらせますよ」
蒼井さんと、いっぱいお話して、いっぱいごめんなさいして、いっぱいありがとうを言おう。
そして。
いつの日にか、あなたの大切になりたいし、私の大切になってほしいな。
そんな淡い夢を持つくらい、いいよね?
あとその眉毛は私に剃らせてね。
「デザートのスイートポテトがとてもおいしいお店なんだよ」
それを聞いてパッと顔を明るくする蒼井さんを見て、私も笑顔になるのであった。
〈了〉
【百合短編】私、魔法少女に助けられたいから、危険な橋を渡ります! 羽黒 楓 @jisitsu-keeper
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