----第六話----
一瞬身体が硬直したけれど、蒼井さん――いや、今は変身しているからミスティシャーベットだ、彼女から私の大好きな甘いお花の香りを感じて、ああ、ほんとに蒼井さんがミスティシャーベットだったんだ、と思って、どうしようもなくなってしまって、もうほんとに無我夢中で私も蒼井さんのことを抱きしめ返したら、蒼井さんもぎゅっとさらに力をいれてきて、痛い痛い、背中に爪立ててるよ、痛い、痛くて痛くてありがとう。ありがとね。
「ありがとね」
口に出していた。
「バカ宮原さん!」
ミスティシャーベットが私の耳もとで叫ぶもんだから、私はびっくりしてしまった。
「半年前に初めて宮原さんを助けてから……私、いつでも宮原さんのことが心配で……夜も眠れなくて……。それなのに宮原さんはっ! いつでも危ない場所にいって危ないことばっかりして……!」
「ご、ごめんね……」
なにしろ、憧れのミスティシャーベットに逢いたいがために、助けられるためにわざと危険なことをしてきていたのだ。
こんな心配させちゃって、謝る以上のことが私にはできない。
ミスティシャーベットは、私を抱きしめる手を放して、私の肩をつかんだ。
じーっと私の目を見つめる。
その瞳は青く透き通っていて、ああそうか、魔法少女に変身すると碧眼になるんだなあ、かっこいいなあ、綺麗だなあ、かわいいなあ、とか思っていると。
ミスティシャーベットは思いっきり右手を振り上げた。
「宮原さんの馬鹿っ!」
そして振り上げた右手を私の頬に叩きつけようとして。
ビンタされちゃう、そう思ったけど。
わずか数センチ手前でミスティシャーベットの手が止まった。
「叩かないの? 馬鹿なことしたの、私だよ? あなたは怒ってもいいと思う」
そう私が言うと、ミスティシャーベットは私に再度抱き着いてきた。
そして涙声で言う。
「ほんとに馬鹿、馬鹿宮原さん……。魔法少女の力で叩いたら、宮原さんの頭なんて吹っ飛んじゃうんだから……」
なんだか怖いことを言うなあ。
背中が震えちゃうよ。
っていうか寒くて震えてるなあ。
「あのー、蒼井さん」
「はい?」
「忘れてるかもしれないけど、私、今、素っ裸なんで、寒いです……あと、残業させてごめんね、頭ふっとばさないでね」
「着るものは貸します。残業くらいで頭は吹っ飛ばさないですよ。……腕の一本くらいで勘弁したげます」
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