----第四話----
次に意識が戻った時、私はほとんど“剥かれて”いる最中だった。
両手を頭上で地面に押さえつけられ、ナイフでスーツを切り裂かれている。
「お、けっこういい体してるじゃん、ラッキーだわ」
「今日の風俗代浮いたな、へへへ」
男たちの会話が聞こえる。
やめて。
触らないで。
下着をとらないで。
そこは触らないで。
声に出したくても、唇がしびれていて、口が動かない。
恐怖心のせいだろうか。
鼻血が次から次へと流れ出ていくのが感じる。
ああ、終わりだ。
はかない恋心が衝動的に私をこんなバカな行動に移させた。
そして終わりがやってきたんだ。
『次からは、もう助けませんから』
またミスティシャーベットの声が脳内で蘇った。
ああ、恋も、私ももう終わり。
そして男たちが私の身体に直接触れようとした瞬間。
「……やめなさい」
女の子の声が聞こえた。
「ああ? なんだてめえ?」
「こらガキ、なに邪魔してんだ?」
男たちが私から手を放して声の方へと向かう。
暗闇の向こうからこちらへと歩いてくる小さな人影。
街灯の下へと出てきた彼女の姿は。
まさに天使だった。
街灯の安い光が、神々しい後光に見えた。
長くてピンク色のツインテール、同じくピンク色の戦闘用ドレス、かわいらしいブーツにオペラグローブ。
とても整った端正な顔立ち。強い光を放つ瞳で男たちをにらみつけ、そして彼女は両手を広げてポーズをとった。
「きらめく氷の結晶で! あなたの邪心を冷やしちゃう! 魔法少女、ミスティシャーベット‼」
男たちはあきらかにひるんだ声で、
「ま、魔法少女か……や、やべえぞ……」
「やべーって! に、逃げるぞ!」
そして背を向けて走り出す。
ミスティシャーベットはぼろぼろになった私の姿を一瞥すると、手に持っていたカラフルなマジカルロッドを振り上げた。
「……なにもする前だったら逃がしてあげたけど! もう許しません! ラブリーハートスパーク! 私の心の輝きでぇ~~~っ! あなたを救っちゃう! シャーベットピュアシャワーーーー‼」
しゅわりーん、と冗談みたいな効果音とともに、まばゆい光が男たちを包む。
「ピュアピュアジャスティース!」
ミスティシャーベットの声とともに光が消え、男たちはその場に倒れこんだ。
「心配ないよ、身体は傷つけてません。……でも今後、他人によこしまな気持ちを抱けないように心と身体を改造したげたからね! これからは正しく生きてください! ……こっちはこれでよし、と」
そしてミスティシャーベットは倒れている私を見下ろす。
「で、こっちは……。はぁ。もうこういうのはやめてっていいましたよね」
呆れたようにため息をついてそういうミスティシャーベット。
「私、怒ってますから! 優しくはしたげません」
と、私を昨日と同じく抱き上げると、ぴょーんと跳躍して夜の街の空を飛び跳ねていった。
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