----第二話----
次の日、オフィス。
私は外回りから帰ってきて、顧客から預ってきた書類を整理する。
私の職業は生命保険のセールスパーソンだ。
といっても、まだまだ二十代前半の下っ端。
リテールならともかく、私が所属しているのは法人営業部。
外回りといってもおいしい仕事はそうそう回ってこないし、上司の担当の会社に出向いては必要な書類に判子をもらって本人確認書類のコピーをもらってくるとか、そんな仕事ばかりだ。
今日も山のような請求書類を預かってきた。それを持って事務の女の子のところにいく。
「
私より二年遅れで入社してきた後輩の蒼井かすみさんは、黒くて丸いフレームの眼鏡の奥から上目遣いでジトーーーッと私を見る。
しばらく、何かを言いたげな表情だったが、
「……はい」
といって書類を受け取る。
うーん、相変わらず芋いなあ。
髪の毛はもたっと重そうなシンプルなショート。
ボブというより、まあなんというか、おかっぱといったほうがしっくりくる。
整えたこともないんだろうなあ、って感じの濃くて太い眉毛、唇は薄くて肌はとてもきれい。
顔立ちも多分、元はすごくいいんだろうけど、なんかこう、ええと、芋っぽい。
「宮原さんの今日の分、こんなにあるんですか?」
蒼井さんは眉をひそめて、ちょっと不愉快そうな顔で、
「宮原さん、今日の書類、多くないですか? 締切は?」
「えっと明日で……」
「これ予定外に頼まれた手続きです?」
「いやあ……、実は先週から頼まれていてねー……」
「もう! こんなにいっぱいの仕事持ってくるなら、もっと早く言っておいてください! 私にも仕事の段取りってもんがあるんですからね!!」
怒る様子も芋っぽい。
昨晩のミスティシャーベットとは大違いだ。
魔法少女はみんな、見た目から立ち居振る舞いまで、すごく洗練されているからなあ。
「まーまー、ごめんね、お願いよ、やっといて!」
「……これが私の仕事だからやりますけど。ほんとに、今度から多いときは前もって言っていただくと助かります」
私は大量の書類を蒼井さんのデスクにおいて、逃げるように自分の席に戻っていく。
いつも助かってます、ありがと蒼井さん。
心の中でだけそう思って、さて私もまだ書類仕事がある。
とっとと終わらせよう。
今日も、彼女に逢いに行くのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます