第3話 JKつよい

 その後も更に、彼女はこちらの心の柔らかいところをエグい角度からこそぎ取りに来る。

「青砥さんって、なんで彼女作らないんですか?」

 くっ!?

 まだその話題を引っ張るか!?

 俺はなるべく動揺を顔に出さぬよう答えた。

「なんでって……。ま、まあ大学生は暇じゃないって言うか?」

 そんな簡単に作れるものなら、とっくに作ってるってーの!

 実は高校大学と俺は彼女というものを作れずに、寂しいキャンパスライフを送っていたのだ。

 だがこれでいい。

 この思春期からの孤立のお陰で、アニメやゲームといったかけがいの無い存在とも出会えたのだから……。

……いや、認めよう。

 正直今の俺は、ダメダメ人間だ。

 だが、アニメやゲームに出会わなければ良かったなどとは思わない。

 だって、何物にも変えがたい充実感を手に入れたのだから……。

 もうこれはリア充と言ってしまっても差し支えないだろう。

 そんなこんな、オタク趣味に没頭しているため本当に忙しいのだ。

 さっき言った大学生は忙しいという言葉も、あながち嘘ではないのだーっ!

 しかし、藤野は俺の答えに納得していないのか、追及の手を弛めない。

「でも大学って出会いとか多いって聞きますよ? 知り合いの大学生は毎週合コンしてますし」

「そ、それは学部によるかなー? あとは理系か文系かでも違ってくるし? 理系は遊ぶ時間も無いらしいし?」

「でも青砥さんて確か文系ですよね?」

 下手こいたーっ!?

 これが語るに落ちるというやつか?

 完全に自爆だ!?

 ええいこうなったら逆ギレだ!

 「ぶ、文系にも色々あるんだよ……もごもご」

「あっ……」

「そのあからさまに察したような顔止めて!?」

「じゃあこういう顔ならいいんですか?」

 言いながら藤野は、なんとも腹立たしい見下すような笑みを浮かべた。

 コイツわざとだな!?

 わざとやってるんだな!?

 クソッ!

 このコンビニにはクズしか集まらないのかっ!?

 こうなったら話の矛先をそっちに変えてやる!

「そ、そういうお前はどうなんだよ。彼氏とか……その……ドュフッ!」

 つい照れてどもってしまった!?

  だってしょうがないじゃん。

 女の子と話す機会なんて、ほとんど無かったんだし。

 案の定怪訝な表情を浮かべる藤野。

「え、何JKのプライベート探ろうとしてるんですか? セクハラですよ? ヤラしー、サイテー」

 チックショォォォッ!?

 元はお前が始めた話なのに、自分のことは棚に上げやがってぇぇぇっ!?

 そこまで言うことないだろー!?

……傷ついちゃう。

 俺のハートも先輩としての威厳も、もうボロボロ。

 たかがJKに、糞味噌にやられてしまうだなんて……。

……情けない。

 これからずっとコイツとバイトに入る度、こんな思いをしないといけないのか……。

 月水金と、週に三日は夕方勤務で藤野とは顔を合わさねばならない。

 憂鬱だ……。

 だがこのメスガキ、仕事はそこそこ出来るため、そういう意味で手が掛かるようなことはなかった。

……でもなぜ、当初のいい子路線から、こんなに変わってしまったんだ?

 何かきっかけがあったはず。

 そういえば……。

 俺には微かにだが、その心当たりがあった。

……あれ以降だったよな。

 明らかに藤野が変わったのは――。

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