第2話 藤野、早くも本性オープン
「ありがとうございましたー! またお越し下さいませー!」
そう元気良くお客様を見送る藤野に、俺は驚異的なものを感じていた。
……まったく、言ったことをカラッカラのスポンジみたいに吸収しやがる。
最近のJKはスペック高いなぁ。
それにいい子だし。
そして何より、後ろでアップにしたバイト仕様の髪型と、それにより露になったうなじが最高だ……。
コンビニバイトを続けててよかったーっ!!
……少なくとも、一緒にバイトに入って数回目までは俺もそう思っていた。
――しかしだ。
「青砥さん」
「はい?」
「お客さん居なくなりましたね」
「そ、そうだね」
「青砥さん……」
目と目が合う。 な、なんだこの感じ!?
まさかこの子、俺に惚れ――!?
「……サボッてもいいですよね?」
全然違った。
ってかいきなり何を言い出すんだコイツ!?
もちろん俺の出した答えは……。
「ダメだよ!」
「えーお客さん居ないのにー? いいじゃないですかぁ少しくらいサボってもぉ」
「ダーメ。お客さんが触れて、商品名なんかの顔とも言える部分が見えなくなったもののフェイスアップやら、他にも足りない商品をバックヤードから補充したり品出したり、それも済んだらレジで入ってくるお客様をお待ちするんだよ!他にも店内や駐車場の掃除やゴミ捨て、それにトイレ清掃とかやぶらこうじのぶらこうじ、ぱいぽぱいぽぱいぽのしゅーりんがんのしゅーりんだい等々やることは沢山あるんだ!わかったか!?」
「……はあ、意味わからない。コンビニって意外とメンドクサイですねー」
……前言撤回。
全然いい子じゃねぇ!?
一度火がついてしまった藤野の愚痴は、この後も止まらない。
「あーあ、コンビニって暇で楽だって聞いてからこのバイトに応募したのになぁ。レジに立ってればいいだけの仕事だと思ってたのに……。ちょっと覚えること多過ぎません?」
「あのなぁ……。お前が言ってるのは、レジ前コーヒーもお歳暮もおせちも、端末によるチケット予約も恵方巻きも、ネット通販なんかのレジ受け取りも始まる前の話だからな?」
「うわーマジですか最悪。騙された。……っていうかそれ、いつの時代の話ですか?」
「十年か二十年以上前じゃないか? 未だにその頃の認識のまま、楽なバイトだと思われがちなんだよな……」
「がっかりですよ……。あーあ、その頃の楽なコンビニでバイトしたかったなー」
「……」
正直なところ、俺も非常に激しく同感です。
……とまあ、こんな感じで藤野はかなりフリーダムでリバティーなタイプの人間だった。
だが、この程度まだまだ序の口。
心を許せば許す程、当初彼女に感じた魅力はボロボロと剥がれ落ちるように失われていく。
またある日のことだ。
「えっ!? 青砥さんてその歳でまだ一度も彼女出来たこと無いんですか? うわぁガチで引きます。無いわぁ……」
やはり藤野の性格は、見た目のプラスを打ち消して余りある程に悪かった。
返せッ!
一瞬でもお前に感じてしまったトキメキを返せぇッ!!
……店長、今なら心の底からはっきりとこう断言できますよ。
俺がこのメスガキに手を出すことは絶対にあり得ないってね!?
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