第45話:佐々木さんにお弁当を作っていく
月曜日の早朝。
「よし、それじゃあ頑張っていくぞ!」
今日はいよいよ佐々木さんにお弁当を作る日だ。
この土日にも母親の作る料理の手伝いを何度もしてきたし、料理の本もしっかりと読み漁ってきた。今の俺に出来る事はちゃんと全部やってきたつもりだ。
だからいつも佐々木さんに美味しいお弁当を作ってもらっているお礼として、今日は頑張って俺が佐々木さんのためにお弁当を作るんだ!
という事で俺は早速エプロンを身に着けて台所に立った。
「えぇっと、それじゃあ今日のお弁当についてだけど……まぁやっぱり佐々木さんはお肉が好きだって言ってたしお肉が多い方がきっと良いよな!」
結局佐々木さんの食べたい物は聞けなかったけど、でも佐々木さんはお肉全般が大好きなのは知っている。
それに怪我を治すのにはお肉を沢山食べるのが良いって何かで見た気がするしな。まぁ佐々木さんの怪我は一応治ったらしいけど、でもやっぱり怪我が治って一番最初のお弁当はガッツリとお肉が沢山入ったお弁当が良いだろうな!
「よし、それじゃあ今日のお弁当のメニューはお肉中心で行こう!」
そう決めた俺は、早速フライパンを取り出し様々なお肉料理を作り上げていった。
そしてお弁当箱の中に今作っていったお肉料理……ミートボールと豚の生姜焼き、それと昨日母親と一緒に作った鶏のから揚げをお弁当箱にぎゅうぎゅうに詰め込んでいった。
あとはお弁当箱の中にご飯をしっかりと詰め込んでいってっと……!
「よし、これで完成した! したけど……なんだろう、これ……?」
時間はだいぶかかってしまったけど、俺は何とかお弁当を完成させる事が出来た。試しにオカズも全部味見したけどどれも普通に美味しかった。美味しかったんだけど……。
「う、うーん、なんというか……全体的にちょっと茶色いよなぁ……」
俺は自分が作り上げたお弁当箱を見てそんな事を呟いていった。
それはお弁当に入っているオカズが全部茶色なせいで……正直に言ってしまうとお弁当の見栄えがあまりにも良くなかった……。
俺が一人で食べる分にはこれでも全然良いんだけど、でもこれを料理上手な佐々木さんに食べてもらうのは流石にちょっと勇気がいるというか何というか……。
「うーん、佐々木さんのお弁当はいつも美味しそうなのになぁ。それなのになんで俺のお弁当はこうなっちゃったんだろう……?」
佐々木さんのお弁当を思い出してから自分のお弁当を見てみると、なんというか不細工なお弁当だなと思って恥ずかしくなった。
でも他に入れるオカズなんてもう何も用意してないし、今日はこの茶色いお弁当で行くしかない。
「はは、でもこれじゃあ何だか佐々木さんに笑われちゃいそうだなぁ……」
俺はちょっと自嘲気味にそう言いながらお弁当箱を鞄の中に入れていった。そして俺はもう一度考えて言ってみた。
「でも、何で佐々木さんのお弁当っていつもあんなに美味しそうなんだろう?」
俺はそう呟きながら、ふと昨日桜井さんと話した事を思い出していった。
―― 昔早紀に美味しいご飯を作るコツってのを聞いた事があるんだけどね……その時に教えてくれたのは“料理は気持ちだよ”って言ってきてくれたんだ。
「うーん、でも俺も一応気持ちを全力で込めて作ってみたつもりだったんだけどなぁ……」
俺はそう言っていきながらもこの数ヶ月間、佐々木さんに作って貰ったお弁当を次々に頭に思い浮かべていってみた。
佐々木さんのお弁当は……うん、そうだったよな。そういえばいつも佐々木さんのお弁当って味がとても良いってだけじゃなくて、見た目もカラフルに彩られていてとても素敵なお弁当だった。
だから俺はいつも佐々木さんのお弁当を開けるその瞬間を凄くワクワクと楽しみにしてたんだよなぁ。
(……ん? いつもワクワクと楽しみに……?)
俺はそんな事を思った時にとある違和感を覚えていった。でもそれからすぐに……。
―― 美味しい物を作ってあげたいとか、喜ばしてあげたいっていう気持ちが料理を何倍にも美味しくさせるんだってさ。
「……あっ!」
でもそれからすぐに、俺は生まれて初めて自分でお弁当を作ってみた事で……俺は佐々木さんのお弁当のある事にようやく気が付いたんだ。そしてそれに気が付いたその瞬間、俺の顔はどんどんと赤くなっていった。
「あぁ、そっか。それじゃあいつも佐々木さんのお弁当が彩り良くて綺麗だった理由って……そういう事だったんだな、あはは」
そしてそれに気が付いた俺は……何だか今すぐ佐々木さんに会いたくなった。
◇◇◇◇
それから数時間後の昼休み。
今日は久々に俺は佐々木さんと一緒に屋上にやって来ていた。
「はい、それじゃあ……どうぞ」
「う、うん、ありがとう」
そして俺は早速佐々木さんにお弁当を渡していった。
「ちゃんと味見はしたから味に関しては問題ないと思うけど……ま、そんな期待せずに食べてくれたら嬉しいよ」
「うん、わかったわ。それじゃあ……わぁ」
佐々木さんはお弁当の蓋を開けていくと早速感嘆の声を漏らしていった。
お弁当の中身はもちろん朝にも言った通りミートボールや生姜焼きに唐揚げなどなど……大量の肉が入った豪快なお弁当になっていた。
「ふふ、何だか山田らしいワンパクなお弁当ね?」
「あ、あはは、まぁ佐々木さんって運動部に所属してるし、それにお肉が大好きだって言ってたからさ。だからそんな佐々木さんの言葉を思い出してお肉を沢山いれちゃったら……こうなっちゃったんだ」
「そっか。まぁ私の事をちゃんと考えてくれたって事ね。ふふ、それは嬉しいわ。うん、それじゃあ早速……頂きます」
「うん、どうぞどうぞ」
佐々木さんはそう言って早速俺の作ったお弁当を食べ進めていった。
「ん、美味しいわよ」
「え、本当に? それなら良かったよ」
「うん、本当本当。初めてのお弁当でここまで作れたら凄いと思うわよ。だから本当にありがとね、山田」
「はは、そんなに褒めてくれるなんて嬉しいよ。それじゃあ俺も早速……頂きます」
という事で俺も佐々木さんと一緒にお弁当を食べ進めていく事にした。
そしてそれからも佐々木さんは俺の作ったお弁当を食べながら何度も“美味しい”と俺に向かって優しく微笑みながらそう言ってきてくれた。
俺はそんな佐々木さんの言葉を聞いてどんどんと嬉しい気持ちになった。そして今度はもっと良いお弁当を作ってあげて、次はもっと喜んでもらいたいな……という気持ちにもなっていった。
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