第46話:佐々木さんに告白する
それから程なくして。
「ごちそうさまでした」
「うん、お粗末様でした」
俺達はお弁当を食べ終えていき、そしてそのまま佐々木さんは笑みを浮かべたまま俺に向かってこう言ってきた。
「今日はありがとう。本当に美味しかったわよ。ふふ、それにしてもたまには誰かにお弁当を作ってもらうのも中々に良いものね」
「うん、そう言って貰えると頑張って作ってきた甲斐があったよ。それに俺の方こそお弁当を全部食べ切ってくれて本当に嬉しいよ。だからありがとね、佐々木さん」
「うん、こちらこそ。でもこんなにも美味しいお弁当を食べさせて貰ったんだから、これは何か恩を返さなきゃだよね。あ、それじゃあアンタのお願いを何でも一個聞いてあげよっか?」
「え? お願い?」
「うん。今度アンタが食べたい物があれば作ってあげるとか、また勉強会がしたいとか遊びに行きたいとか……何かお願いしたい事があったら今なら何でも聞いてあげるわよ?」
佐々木さんは笑いながらそんな事を言ってきた。という事で俺は……。
「なるほどね。うん、それじゃあさ……実は俺、佐々木さんにお願いしたい事があるんだ。それをちょっと聞いてもらっても良いかな?」
「うん、もちろん。一体どんなお願い事よ?」
「うん。実は俺さ……前々から佐々木さんの部活の応援に行きたいと思ってたんだ。だから練習試合でも大会でもいつでも良いからさ……佐々木さんの応援をしに行ってもいいかな? もちろんその時はまた佐々木さんにお弁当を作っていくからさ」
「え……って、えっ!?」
俺はバレー部の応援をしに行きたいというお願いをしていくと、笑みを浮かべていた佐々木さんは途端にビックリとしたような反応をしてきた。
「あれ? もしかして駄目だった?」
「え……えっ!? い、いや、別にそういうわけじゃないんだけどさ……で、でも個人的にはその、いやなんというかさ……部活中ってめっちゃ汗かいちゃってるし髪もボサボサになってるから……だから正直な話……あ、あんまりそんな姿を男子には……というか山田には見られたくないというかその――」
「俺は佐々木さんが大好きなんだ。だから俺は大好きな佐々木さんの応援がしたいんだよ」
「見られたくないというかその……って、は、はぁっ!?」
気が付いたら俺は唐突に佐々木さんに告白してしまった。すると佐々木さんは俺の告白を聞いて顔を思いっきり真っ赤にしながらこちらに全力で振り返ってきた。
「だ、大丈夫? 何だか佐々木さんの顔が真っ赤になってるけど」
「い、いや! だ、だだだ大丈夫なわけないでしょ! と、というか唐突すぎでしょ!! そ、その……こ、こ、ここ告白するんだったらもっとムードを考えたりしないのっ!?」
「あはは、いやごめんごめん。俺もちゃんと頃合いを見たりムードとか考えて告白しようとは思ったんだけどさ、でも……」
「で、でも?」
「うん。でも今日改めて佐々木さんの事が好きだなーって再認識しちゃったから……そしたら何だかもう我慢できなくて告白しちゃったんだ。あはは、ごめんね」
「そ、そんな可愛く謝られても全然可愛くないからね!?」
俺は片目を閉じながら手を前に出してごめんっと可愛らしい感じでポーズを取っていった。でもそんな俺の態度を見て佐々木さんは顔を赤くしたまま俺にそうツッコミを入れてきた。
「は、はぁ、全くもう……。そ、それで、え、えっと……いやそもそもさ、何で私の事を好きになってくれたのよ? 自分でいうのもあれだけどさ……私って別にそんな女子らしい性格してないし、男受けもそんな良くないでしょ? そ、それなのに……何で私なの?」
「はは、佐々木さんに惚れる要素なんて沢山あるに決まってるじゃん。だって佐々木さんは凄く可愛いし、気さくで話しやすいし、それに凄く優しくて、困った時はいつでも助けてくれるし……うん、やっぱり佐々木さんには惚れる要素しかないよ」
「えっ!? か、可愛いっ!? い、いや、そ、その……そ、そんな真顔で恥ずかしい事言わないでよね……」
「あはは、だって本当の事なんだから仕方ないでしょ。まぁそんなわけで俺が佐々木さんの事を大好きになった理由は本当に沢山あるんだけど……その中でも特に佐々木さんの事を好きになった一番の要因は……うん、やっぱりお弁当だよね」
「う、うぅ……って、え? お、お弁当?」
俺がそう言うと佐々木さんはちょっとだけキョトンとした表情になりながら首を傾げていった。
「うん。あのさ、俺が今日作った弁当、どうだった?」
「えっ? どうって、普通に美味しかったけど?」
佐々木さんはキョトンとした顔を続けながらも美味しかったと言ってくれた。もちろんそれはそれで素直に嬉しい。けど……。
「あはは。うん、そう言ってくれてありがとう。でもさ……流石にちょっと茶色すぎたよね?」
「えっ? あ、あぁ、それは、まぁ……私もちょっとだけそう思ったけど」
「あはは、やっぱりそうだよね」
俺が作ったお弁当は見事なまでに100%茶色いオカズで構成されていた。その事に佐々木さんもちゃんと気が付いてたようだ。
なので俺はそのまま笑みを浮かべたまま今日のお弁当について佐々木さんにこう言っていった。
「俺さ、今日生まれて初めて自分一人の力でお弁当を作ってみたんだけどさ」
「え? う、うん?」
「それで佐々木さんはお肉が大好きだって言ってたし、怪我をした時は肉を食べるのが良いって言うのは聞いた事があったから……だから肉を沢山入れたお弁当を作ったら良さそうだなって思ってさ、それで片っ端から肉を弁当箱に詰めていったんだ。そしたらほぼ茶色になっちゃったんだよね。あはは」
「ふふ、そうなんだ」
「うん。でもさ……」
俺は自分が作ったお弁当をしっかりと思い出した後、今度は佐々木さんが作ってくれた数々のお弁当を頭に浮かべていった。
「でもさ……その時、俺は佐々木さんのお弁当を次々に思い出していったんだ」
「え? 私の?」
「そう。佐々木さんのお弁当っていつも凄く美味しかったんだけどさ、でも佐々木さんのお弁当って美味しいだけじゃなかったんだよね。佐々木さんのお弁当っていつも彩りが鮮やかで凄く綺麗なお弁当だったんだよね。こう……お弁当箱の蓋を開けた瞬間にいつもワクワクとさせるような素敵なお弁当ばかりだったんだ」
俺は今まで佐々木さんに貰ってきた数々のお弁当をしっかりと思い出していきながら、そんな事を佐々木さんに伝えていった。
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