第15話:佐々木さんに勉強会を提案していく
「うーん、本当の事を言っただけなんだけどなぁ……って、あれ? でもそういえば放課後なのに今日は部活に行かなくて良いの? ここ最近は毎日部活があったんだよね?」
お昼休みに最近は毎日部活があって大変だという話を聞いてたので、俺はそんな事を尋ねていった。
「あぁ、うん。実は今日からしばらく部活は無いのよ。ほら、再来週から中間テストでしょ? だからテストが終わるまで今日から部活は休み期間に入るのよ」
「え? あ、そっか。そういえば……」
そういえばそんな話をちょっと前に夏江から聞いたっけ。という事は今頃あの二人は仲良く勉強会を開いているのかな? もしそうだったら羨ましい限りだな。
「なるほどね、そういう事か。それじゃあお互いに赤点とか取らないようにテスト勉強を頑張っていこうね!」
「えっ? あ、あぁ、うん。そ、それはそうよね……」
「? どうしたの? 何だか暗い表情になってるけど?」
何故か急に佐々木さんは少し暗い表情になっていったので、俺は気になってそう尋ねていった。
「いや実はいつも春香と一緒にテスト勉強をしてたんだけどさ、でも今回からは夏江君と一緒に勉強をしたいって言われちゃってね。だから今回は一人で勉強を頑張らないといけないから若干不安だわ……」
「あぁ、なるほどね。俺も夏江から桜井さんと一緒に勉強会をするって話はちょっと前に聞いたよ。それにしても夏江も桜井さんも凄く仲良さそうなで本当に素敵なカップルだよね」
「うんうん、確かにそうね。いつも春香は楽しそうに夏江君の話をしてくるし、きっと素敵で良い男子なんでしょうね」
「はは、そりゃもちろん、アイツはすっごく良いヤツだよ。それは夏江の一番の親友である俺がちゃんと保証するよ」
「へぇ、そうなんだ? ふふ、それは心強いお墨付きね。ま、それじゃあこれからもあの二人には末永く仲良くしていって貰いたいわね」
「はは、うん、そうだね」
という感じで俺達はお互いの仲の良い友達カップルについての話で盛り上がっていった。やっぱり友達に幸せになって貰いたいって思うのは当たり前の事だしな。
「ま、でもこれからは一人で勉強をしなきゃいけないってのはやっぱりちょっと億劫なんだけどね。いやまぁそればっかりは頑張るしかないんだけどさ……」
「うん、そうだよね。それに部活やってる人は赤点を取って補習が入っちゃうと色々と面倒だろうしより一層頑張んないとだよね。あ、そういえば佐々木さんってテストの成績はいつもどれくらいなの?」
「私? まぁいつも平均くらいだけど……あ、でも」
「ん? でもって?」
何となく俺はそんなテスト話を振ってみると、佐々木さんはまたちょっとだけ暗い表情を浮かべてきた。
「いや、まぁその、私って英語とか文系科目はそれなりに良い点数は取れるんだけど……でも数学だけは全然駄目なのよ。だからいつも数学だけには恐怖を持ってテストを受けてるわ……」
「へぇ、そうなんだ? なるほど、佐々木さんは数学だけが苦手なんだ……って、あ、そうだ!」
「う、うん? そうだって……一体どうしたのよ?」
佐々木さんの悩みを聞いて俺はとある事をすぐに思いついたので、早速それを佐々木さんに伝えていく事にした。
「うん、それじゃあさ、良かったら俺が数学を教えてあげようか?」
「数学を教えるって……えっ? もしかして山田が?」
「うん、そうそう。俺って数学とか理系科目は結構得意なんだよね。だから俺で良ければ佐々木さんに数学の勉強を教えるよ」
という事で俺は思い切って佐々木さんにそんな提案をしてみた。今までそれなりに勉強を頑張って来ていて本当に良かったよ。
(いやこんなにも良い恩の返し方があったなんてな!)
俺は前々から考佐々木さんへの恩の返し方をずっと考えていたんだ。そして滅茶苦茶良いタイミングで恩を返せそうな場面がやってきたので、俺は内心ちょっとだけ喜んでいった。しかし……。
「え、えっと、いや、まぁそう言ってくれるのは有難いんだけど……でも山田も自分の勉強をしなきゃいけないでしょ? それなのに私の面倒まで見るなんて絶対に大変よ……」
しかし佐々木さんは非常に申し訳なさそうな顔をしながら俺に向かってそんな事を言ってきた。そして何だか俺の提案を断ってきそうな雰囲気も感じ取っていった。
(あぁ、でもそっか。そういえば佐々木さんって……)
そういえばそうだった。俺は今まで佐々木さんの事は凄くサバサバとしていて、カッコ良い所もあって悪ノリや冗談にも乗っかってくれる男友達っぽい感じの女の子だと思っていたんだ。
でもここ数日間、佐々木さんと毎日しっかりと交流を深めてきた事でわかったんだけど、佐々木さんって結構相手に対して気を使ったりとか、迷惑をかけたくないとかを優先的に考える心優しい女の子なんだよな。
だからこそ付き合いたての桜井さん達を邪魔しないように自ら離れるような行動を何度もしてきているわけだしさ。
(よし、それじゃあ……この作戦でいこう!)
という事で俺は笑いながら佐々木さんに向かってこう言っていった。
「ううん、そんなの気にしないで全然大丈夫だよ。っていうかさ、実は俺もちょっと困ってたんだよね」
「え? 困ってたって?」
俺が笑いながらそんな事を言っていくと佐々木さんはキョトン顔をしながら俺にそう尋ねてきた。
「いや、実は俺もさ、一年の頃から今まで夏江とずっと一緒に勉強してたんだよね」
「え? そうだったの?」
「うん、そうなんだ。でも夏江はこれからは桜井さんと勉強会をする事になったからさ、それでちょっと困ってたんだよね。だって正直俺は一人で勉強をやっていてもあんまり頑張る気持ちが起きないっていうかさ……誰かが近くにいてくれないとついついサボっちゃうんだよね……」
「あぁ、なるほど。うん、確かに一人だと勉強ってやる気が全然起き無くなったりするわよね。それにしても話せば話す程さ……ふふ、何だか私達って似たような状況にいるのね?」
という事で俺も一緒に勉強をする友達がいなくて困っているんだと言ってみた。こうする事で佐々木さんの申し訳ないと思う気持ちを軽減させていくというのが俺の考えた作戦だ。
そしてこうやってお互いにメリットがあるって事がしっかりと伝われば佐々木さんも俺の提案に乗っかってくれるとは思う。まぁ俺が佐々木さんに嫌われてなければだけど……。
「はは、そうだね。だから似た者同士さ、良かったら一緒に勉強会をしたいなって思ったんだ。まぁ佐々木さんが俺と二人きりが嫌じゃなければだけどさ」
「あはは、いつもお昼休みに山田と二人きりで一緒にいるっていうのに、何で今更アンタと二人きりを嫌がらなきゃなんないのよ? 山田となら全然良いに決まってるわよ。まぁそれじゃあお互いに困っている状況のようだし……うん、それなら是非とも一緒に勉強会をお願いしたいわ」
「あぁ、それなら良かったよ。それじゃあ早速いつから始めようか?」
「えぇっと、そうね……それじゃあ明日からお願いできるかしら?」
「うん、わかった。それじゃあ改めてよろしくね!」
「うん、こちらこそ」
という事で俺と佐々木さんの勉強会が決定したのであった。明日からは放課後も佐々木さんと交流が出来るのでこれは凄く楽しみだな!
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