第7話

 その日の夕方。時刻は既に7時になった所だ。


「ただいまー」

「あ、お兄ちゃん、おかえりー」


 家に帰るとリビングの方から妹の真唯の声が聞こえてきた。 なので俺は自分の部屋に戻る前にリビングの方に向かった。


 リビングに入ると真唯はソファにちょこんと座りながらテレビを眺めていた。 どうやら録画していたアニメ番組を見ている所のようだ。


「帰るの遅くなってごめんな」

「ううん、大丈夫だよー」


 という事で改めて、このソファに座っている女の子の名前は山田真唯。 小学二年生の妹だ。 性格はどちらかと言うと内気で大人しい子なんだけど、でも時々甘えてきてくれたりもするので兄の俺としては非常に可愛い妹だ。 決してシスコンなわけではないよ?


「でもお兄ちゃん、私お腹空いちゃったよー」

「あぁ、わかったよ。 それじゃあ今日はもう晩御飯食べちゃおうか」

「うんー!」


 俺がそう言うと真唯は嬉しそうな顔をしだした。 とりあえず俺は手洗いとうがいを済ましてからキッチンに置いてある冷蔵庫を開けた。 すると……


「……おっ! 今日は真唯の好きなオムライスだぞ!」

「え! 本当に!? やったー!」


 冷蔵庫の中にはお皿に乗ったオムライスが二個入っていた。 これは母さんが仕事前に作っていってくれた物だ。


 俺は母さんに感謝しながらそのお皿に乗ったオムライスを取り出した。 すると、そのお皿には付箋が付いていた。 どうやら母親からのメモ書きが貼ってあるようだ。


“サランラップをしたまま2分くらいレンジでチンしてね”


「ふむふむ、2分くらいの加熱でオッケーか。 真唯ー、今からレンチンするからあと少しだけ待っててなー」

「うん、わかったー!」


 という事で俺は母親からの指示に従ってサランラップをしたまま電子レンジに入れて2分加熱する事にした。


「ふぅ……それにしても母さんも父さんも夜遅くまで大変だなぁ」


 俺は電子レンジの加熱工程をぼーっと眺めながら、両親の事を頭に思い浮かべていった。


 俺達の両親は共働きだ。 父さんはシステムエンジニアの仕事をしていて毎日終電ギリギリまで働いている。 母さんは看護師をしていて、最近はずっと夜勤に入っているので顔を合わす事も最近はかなり少ない状況だった。


 という感じで、俺達の両親はどちらもかなり忙しい人達だった。 だから俺と真唯の晩御飯はいつも母さんが作り置きしてくれたご飯をチンして食べるか、コンビニで買ってきたご飯を食べるかの二択だった。


 まぁやっぱりそんな状況なのは少し寂しい気持ちもあるけど、でも両親の仕事が大変なのも理解してるから、しょうがない事だと思っている。


―― ちんっ!


「お、出来た出来た」


 俺はそんな忙しい両親の事を考えていると……ちょうど2分が経過し電子レンジから音が鳴った。 という事で俺は電子レンジから温められたオムライスを取り出してリビングに持って行った。


「おーい、真唯出来たぞー!」

「はーい!」


 テレビを見ている真唯を呼んで俺達は一緒に晩御飯のオムライスを食べ始めた。


「「いただきまーす!」」


 真唯は大好きなオムライスを嬉しそうな表情をしながら口の中に頬張っていっていた。


「うーん、美味しいねー!」

「あはは、それなら良かった。 母さんの料理はいつも美味しいからなー。 あ、そういえば、真唯はいつの間にか苦手だったピーマンも食べられるようになったんだな」

「えっ!? こ、このオムライスの中にピーマン入ってるの!?」

「あぁ、細かく刻まれて入ってるぞ?」

「う、うそ……全然気が付かなかったよ……」

「あ、なんだ、気づいてなかっただけか。 でもピーマン入りのオムライスなのに、真唯は美味しいって言ってたぞ?」

「う、うん、すっごく美味しいよ……や、やるね、お母さん!」

「あはは、真唯はいつから料理評論家になったんだよ。 でも真唯がピーマン食べられるようになったって知ったら母さんも喜ぶだろうなー」

「えっ!? い、言っちゃ駄目だよ!! も、もしお母さんにバレたらこれから毎日ピーマン料理にされちゃうから……!」

「あはは、わかったよ。 それじゃあ母さんには秘密にしておくよ」

「う、うん! 約束だからね!」

「うん、約束だよ」


 という事でこの後も俺は真唯と一緒に他愛無い話をしながら晩御飯を食べていった。

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