第6話:グラウンドを走る佐々木さんの応援をする
「あれ? あそこにいるの佐々木さんじゃん」
「え? あ、あぁ、そうだな」
という事で俺も無言のままグラウンドを眺めていると、夏江もちょうど佐々木さんを見つけたようでそんな事を呟いてきた。
そしてそのまま夏江は楽しそうに笑みを浮かべながら佐々木さんについての話を俺に振ってきた。
「あはは、いや改めて思うけどさー、やっぱり佐々木さんっておっぱい凄いよな! 何だかグラビアアイドルとかにいそうなスタイルしてるよなー!」
「……どうする? 桜井さんに今の言葉をそっくりそのまま伝えようか??」
「え……って、えぇっ!? い、いやそれだけは絶対に止めてくれよ!!」
俺がそう言っていくと夏江は首を全力でぶんぶんと左右に振り回しながら止めてくれと懇願してきた。
「はは、冗談だよ。別に桜井さんにチクったりしないから安心しろよ」
「ま、全くもう……ひやひやさせないでくれよ……」
俺は笑いながら夏江の背中をぽんぽんと叩いていった。すると夏江はホッと安堵のため息をついていった。
まぁでも健全な男子なら皆おっぱいとかに興味を持つ年頃なんだからしょうがないよな。俺もさっきまで夏江と同じような事を思ってたわけだし。
という事で俺の言葉を聞いて安堵していった夏江はそれからもグラウンドの様子をじっと眺め続けていった。
「うーん、それにしてもさぁ……俺らの代の女子って可愛い子多くないか? 佐々木さんもそうだけど、隣のクラスだと七種さんとか北上さんとかもめっちゃ可愛いよな!」
「へぇ、彼女いるクセにもう浮気するつもりなのか? あーあ、これはやっぱり桜井さんにチクった方が良さそうだなぁ……」
「え……えっ!? い、いやだから違うって! あくまでも一般的な話だよ! それに俺にとって一番可愛い女子は桜井さんなのは揺るがないし!! 俺は桜井さん一筋なんだからな!」
「はは、わかったよ。だからそんな惚気話なんかしなくていいって」
夏江は大きな声を出しながら全力で弁明をしてきた。
その全力な様子からして夏江が桜井さんの事を本当に大好きな事はちゃんと伝わってきたので、俺は素直に祝福していく事にした。
「まぁ今更かもしれないけど彼女おめでとうな。というか彼女出来たんなら教えてくれても良かったのにさ」
「はは、ありがとな! いや俺だって和樹に報告しようとは思ってたんだけど、でもお昼休みになると最近和樹は何処か行ってるだろ? だから中々報告するタイミングが見つからなくてさー」
「えっ? あ、あぁ、そっか。そ、そう言われてみればそうだったな……い、いやでも夏江に彼女がいるなんて羨ましすぎるなー!」
「はは、それじゃあ和樹も頑張って彼女作れよー! 彼女がいるってめっちゃ楽しいぞー?」
「いや頑張れてって言われてもなぁ……あれ、でもそういえば夏江って桜井さんとはどうやってお付き合いを始めたんだ?」
俺はそんな事が気になってきたので夏江に尋ねていってみた。そういえば二人はどうやってお付き合いを始めたんだろうな?
「あぁ、まぁ元々俺は桜井さんとは一年の頃からちょくちょく話していたし、仲もそれなりに良かったからさ。だから今月の初めに意を決して桜井さんに告白してみたんだよ。そうしたらオッケーを貰えたから、そこから無事にお付き合いを始めたって感じだな」
「へぇ、そうなんだ! なるほど、夏江から告白かぁ……はは、それはやるなー!」
確かに言われてみれば一年の頃から夏江と桜井さんが話してる所はちょこちょこ見かけてた気もするな。
「それで今月の初めにお付き合いしたって言う事は……お付き合いを始めて一週間くらいって所か?」
「あぁ、うん、そんくらいだな。まだ桜井さんとお付き合いを始めたばかりだけど毎日が最高に楽しいぜ! ほら、こんな感じでさー!」
―― ひらひら
夏江はそう言いながら、突然とグラウンドの方に向けて手をひらひらと振り出していった。
「え? ……って、あぁ」
俺は怪訝な表情をしながら夏江が手を振っている方向を見てみると……グラウンドでは桜井さんが夏江に向かって手をひらひらと振り返していた。
どうやらグラウンドの走り込みが終わったようで、女子部員たちは休憩を始めている所のようだ。
―― ひらひら
という事で休憩に入った桜井さんが可愛らしく笑みを浮かべながら夏江に向かって手をひらひらと振り返してくれていたようだ。
そしてそんな二人の微笑ましいやり取りを見ていると……うん、やっぱりこの二人はお似合いなカップルな気がしてきたな。
「あはは、凄く仲良さそうで羨ましい限りだなー。それじゃあこれからも桜井さんを大切にしてあげろよ?」
「あぁ、もちろん。これからもずっと幸せにしてみせるさ」
そういう夏江の顔はとても幸せそうな顔だった。うん、これからも末永く爆発してくれよ。
という事で今日の放課後はアツアツなカップルの様子を近くで眺める一日となっていった。しかし、その時……。
(……あっ)
その時、俺もグラウンドを眺めていると偶然にも外にいる佐々木さんと目があった。
どうやら佐々木さんもグラウンドの走り込みが終わって休憩に入った所のようだった。という事で俺もせっかくなので……。
―― ひらひら
という事でせっかく佐々木さんと目があったのだから、俺も夏江を見習って佐々木さんに向けて手を振ってみた。すると……。
―― しっし……
佐々木さんはジト目で“何見てんのよ”というような表情をしながら俺に向かって、しっしっと手で払うような仕草をしてきた。
(はは、やっぱり佐々木さんらしいなー)
俺はその仕草が何となく佐々木さんらしいなと思って、内心ちょっとだけ笑ってしまった。
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