第5話

 その日の放課後。


「……あれ?」


 俺は日直当番だったので、職員室に行って今日の日誌を担任に手渡した所だった。 そして職員室から教室に戻ってくると……同じクラスの友達が何やら窓の外をじっと眺めていた。 ちなみに教室の窓の外から見えるのは校庭のグラウンドだ。


(何してんだ? アイツ?)


 俺はそんな友達の様子が気になったので、俺もバレないようにコッソリと後ろから窓の外を覗いてみた。 すると……


『ファイ、オー! ファイ、オー!』


 するとグラウンドでは運動服を着ている女子生徒達が掛け声を出しながら走っていた。 どうやら運動系の女子部員達のようだ。


(あぁ、なんだ……ただの覗きか)


 何やら一生懸命グラウンドの方をじっと眺めていると思ったら……ただ走ってる女子生徒を覗き見してるだけのようだった。


「ジロジロ見てると女子に嫌われるぞ?」

「えへへ……って、えっ!?」


 という事で俺は後ろからその友達に声をかけてみた。 するとソイツはビックリとしたような声を出して後ろを振り返ってきた。


「あ、あぁ……何だ和樹か。 ビックリさせんなよ」

「ビックリするようなやましい事してたのか? 夏江は」

「ち、ちげぇーよ!」


 俺がそう言うと目の前の友達は焦ったような表情をしながらそんな弁明をしてきた。


 という事でコイツの名前は夏江祐介。 俺と同じクラスの男子生徒で、一年の頃から仲の良い友達だ。 身長は175センチくらいでそこそこガタイが良く、見た目も割とイケメンなので羨ましい限りだ。


「え、違うのか? どうみてもグラウンドを走ってる女の子を覗き見してたようにしか見えなかったんだけど??」

「いや違う違う! そんな俺を変質者みたいな感じにするの止めてくれよ! 俺はただ……えぇっと、その……純粋に部活を頑張ってる生徒達を応援してただけなんだよ!」

「ふぅん? ……って、あぁ、そういう事か」


 夏江は焦った様子になりながらも、グラウンドを走っている先頭集団の女子生徒を指さしてきた。 なので俺もそちらの方を見てみると……その先頭には桜井さんが走っていた。


「なんだ、祐介は桜井さんの応援をしてただけか」

「そうそう……って、えっ!? さ、桜井さんって……な、何の話だよ……?」

「え? だってあれなんだろ? 夏江と桜井さんって付き合ってるんだろ?」

「え゛っ!? な、何で知ってんだよ!?」


 俺がニヤニヤと笑いながらそういうと、夏江は顔を赤くしながらそう言ってきた。


「あはは、まぁ俺が知ってるのは別にいいじゃん」

「い、いや……何で和樹がその事を知ってるのかめっちゃ気になるんだけど……」

「まぁまぁそんなに気にすんなよ。 それで? 桜井さんが走ってるって事は……今グラウンドを走ってるのって女子バスケ部なの?」


 俺は夏江にそう尋ねた。 確か桜井さんは女子バスケ部だったはずだ。 体育祭の時に部活対抗リレーで桜井さんがバスケ部のユニフォームを着てたのを何となく覚えている。


「あぁ、そうだよ。 今グラウンドを走ってるのは女子バスケ部と女子バレー部だな」

「え? バレー部も一緒に走ってんの?」


 女子バスケ部がグラウンドを走っているのかと思ったら、まさかの女子バレー部も一緒に走っているようだ。


「あぁ、女子バレー部と女子バスケ部って普段は体育館を使ってるんだけどさ、でも今日は体育館が工事で使う事が出来ないんだってさ」

「あー、そういえば職員室に行く時に少し煩いなって思ったけど、あれって体育館の工事音だったのか。 なるほどなー」

「そうそう。 だから今日は女子バレー部と女子バスケ部は合同で外を走り込む日になったって桜井さんが言ってた」

「へぇ、そうなんだ……って、あ」


 夏江の話を聞きながら俺もボーっとグラウンドを走っている女の子達の様子を眺めていたら……ふとポニーテールを揺らしながら走っている佐々木さんの姿を見つけた。


(そっか、そういえば佐々木さんは女子バレー部だもんな)


 という事で桜井さんを応援している夏江の隣で、俺は佐々木さんの応援をする事にした。


 それにしても、いつもの可愛らしい感じの佐々木さんと違って、部活中の一生懸命走り込んでいる佐々木さんの姿はとてもカッコ良く見えるよな。 それと……


(……やっぱり佐々木さんってスタイルめっちゃ良いよなぁ)


 いや、やっぱりどうしても佐々木さんの身体付きについ視線がいっちゃうんだけどさ……でもしょうがないじゃん。 いつもの制服姿と違って運動服だと体のラインがかなりわかりやすくなっちゃうんだからさ。

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