第3話 善いあい

 雨が降ったあとの、鼻の奥から肺に広がる湿ったにおい、大好きです。


 私の住んでいる北海道には雨季がありません。だのに、連日みまわれた雨、雨、雨。半地下の場所は水没し、そこで働く人たちが水をかきだすために汗を流しているというのに、何をのんきなことを言っているのだろう、と思わなくもないのですが……それでも、曇り空で乾ききらない土から広がるにおいだとか、濡れた草花の青い香りだとか、すいすい、つくつく、ほんほん、形容しがたいオノマトペが全身をまとうような感覚が心地よくて涼やかな気持ちにさせてくれるのです。


 ――なにをいきなり詩的な表現でかっこつけてるんだ、と指摘する方がいらっしゃたら、ごめんなさい。ぐ、とまた飲み込んで頂けたら幸いです。飴玉を間違えて飲み込むよりは、喉も痛くない、はず。


 間違えて飲み込む勢いのまま、このエッセイの題名タイトルと言葉たちも、土が雨水をしみこませるような感覚で、「読む」というよりも「飲む」に近い感覚で、目で追って頂けたらな、と。


 さてさて、くどい表現はここまでにしまして。気まぐれなまま続けて第三話。


 話題はいつも、このワークスペースを開いてから考えるのですが……そうですね、ちょうど昨日は兄貴と長電話をしてしまったので、そこから着想して得たことを話していこうかと。


 私と兄は歳が七つも離れているのですが、お互いに共有する好きなジャンルの話が多く、また、被らずとも気にせず聞き合うので、友人のような関係です。

 昨日も、最初はちょっとした連絡を取り合っていただけなのに、いつの間にかどんどん関係ない話で盛り上がり、やがて兄は通話しながらソーシャルゲームのガシャを引き出し、撤退するまでの実況をし始め、私は眠りまなこの中、それを聞かされる始末。――まあ、それはいいとして。


 最近カクヨムにエッセイを投稿して、試しに母と父に読んでもらって「まんまあんたらしいね」という感想をもらった話をしました。すると、


「友達いないねー」


 ――もし私がバラエティ番組などで字幕を表示させる仕事をしていたら、この言葉の前に(本当)という言葉を入れるでしょう。

「(本当)友達いないねー」

 うん。悪くない。いや、これで彼の言わんとしてることが伝わりやすくなった、じゃないんだよ自分。


 一応弁明すると、友達に読ませる勇気がないというよりは、友達の貴重な時間を自分のために費やしてもらうためには、よっぽど暇だったり話題が無いときか、互いに真剣な話をしてるときじゃないと申し訳なくて無理。え、友達がいないことに対しての弁明? そんなものはありませんよ、なんせ『本当』なんですから。(少しはいます)


 友達は本当に頭がよくていい人ばかりです。(私が心の声をすべて顔に出してしまう能力者のお陰で、苦手だったり関わりたくない人は時間の経過とともに向こうから去ってくから、いい人しか残らない――というのもありますが)なので、私の作品に対しても、基本的に肯定的なことしか言いません。私が傷つかないように、配慮して話してくれてる感じがあります。褒めてくれるので、ある程度モチベーションが高まるのですが――どこか不安な気持ちになります。


 けして、友人を疑うわけではないのです。ただ、自分のせいで相手に気を使わせてしまっているのではないか、という一抹の不安。


 家族には考えすぎ、と言われますが、そういう考えることを楽しむのも私の性分で、きっとおそらく、この不安でさえ――創作の糧となる、楽しみの一つ――なのでしょう。


 話を戻しますが、友人に自分の作ったものを見てもらえることは、だからこそ、本当に貴重なことです。

 張るほどの胸が無くとも、いずれ機会があれば読んでもらおうと思います。

 だって、みんな頭がよくて本当にいい人ばかりなんです。


 配慮があろうがなかろうが、信頼している人からの言葉なら、どんなものでも胸に沁みて、涼やかな、私の好きな香りがすると思うので。

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