エピローグ 裏 とある男の独白


俺はおれの為に生まれた。

身の回りの自分に害が及ぼすであろう物事の全てから自分自身を守る為に。

自己防衛の為に形成された人格。

解離性同一性障害かいりせいどういつせいしょうがい

かつては多重人格障害と呼ばれていた精神障害だ。

それによって現れたのが俺。


だが、これは偽りの理由だった。

実際は違う……いや、違ったのだ。


俺は一人っ子だった。

だが、本当はそうではなかった。

俺とおれは一卵性双生児として一緒に生まれる予定だったからだ。

だが、俺とおれは一卵性双生児として一緒に生まれる事はなかった。


双胎一児死亡バニシングツイン

妊娠初期に双子の内の片方が流産した後、その亡骸なきがらが排出されずに子宮の中から消えてしまう現象のこと。

厳密には、「消えてしまうのではなく、母親の子宮に吸収されてしまう」というのが正しい。


そしてその亡骸なきがらは俺だった。

その為、俺とおれは一卵性双生児として一緒に生まれる事はなく、生き残ったおれだけが生まれる…そうなる筈だった。

だが、俺はおれの身体で生まれた。

つまり、その時のおれは一つの身体に二つの意識がある状態だったのだ。

だが、そんなこと誰が推定できるだろうか?

もし推定したとしても、周りの人達全員から正気を疑われるに違いない。




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